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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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ギルド戦翌日

「はぁー、お前らがMMOで上位争いねぇ」
「何さ、健治。もしかして疑ってんの?」
「いや、お前はともかく亘も一緒にやってるんだろう? 別に疑っちゃいないって」
「何その俺単体なら疑ってた、みたいな言い方は。納得いかねえ……」
「二人は昔、同じゲームをやっていたんだっけか? FPSの」

 イベント翌日、俺は健治、秀平と一緒に街へと出ていた。
 目的はマリーに誘われた小旅行の準備である。
 健治も祖父母の家に行くとのことで、時間を合わせて適当に服を買い出しにきた次第だ。
 男三人での買い物なので、それほど時間はかからないだろう。
 多分だが、シャツや下着などを適当に買って終わりである。
 歩きながら話している内容は、それぞれがやっているゲームに関するものだ。

「ああ、やってたやってた。今俺がやってるのもそうだが、海外勢が強くてなぁ……」
「本当に人間? って速度でヘッドショットしてくる奴なんてざらだしね……」
「何つーかスポーツ的な側面が強いよな、FPSは。俺の反射神経じゃとても無理だ」

 スナイパーならひょっとしたら……いや、無理か。
 スナイパーにだって反射神経は必要だろうし、接近戦をする機会もあるだろう。
 なるべく日陰に入れるようにしながら、日差しで焼ける石畳の上を歩いて行く。
 健治は考え込むように腕を組んでいるが……どうやら俺の適正ポジションをシミュレートしているらしい。
 ややあって腕組みを解くと、微妙な表情でこんなことを言い出した。

「いや、まあ、分隊支援火器みたいなのもあるしな。それなら大事なのは、即応性よりも位置取りとか射撃タイミングになるぞ」
「……それ、機関銃みたいなやつだろ? 半端じゃなく重いやつ。それこそ俺には合わんだろう」
「あひゃひゃひゃひゃ!」

 とりあえず馬鹿笑いしている秀平に睨みを利かせて黙らせると、俺は健治へと視線を返した。
 ある程度の筋力がないと難しいポジションじゃないか。
 中の上が精々な俺の筋量では、そんな重い武器を持って他のプレイヤーに付いていくことは不可能だろう。
 それを告げると、健治は薄々分かっていたとばかりに苦笑した。

「だな、悪い悪い。しかし、俺も亘の指揮は受けてみたいもんだな。ちょい後方で小隊長やら分隊長でも良いんだが……大人数対戦のFPSだと、戦闘に参加しない指揮専門のポジションがあったりもするぞ。司令官的な」
「あー、あるね。確かにわっちはそっち向きっしょ。全体マップを見るの上手そう」
「へえ、そんなのもあるのか。ただ、それだとVRでやる意味があまりないような気がするが」
「言えてる。パソコン画面でいいわな」

 少し興味があるが、今の俺はTBに夢中だ。
 あれこれとFPSに勧誘してくる健治に、むしろ一緒にTBをプレイしないかと訊いたら微妙な反応だった。
 どうやら健治と一緒にゲームをする機会は遠そうだ。

「で、話は戻るんだが。そのTBで知り合った相手からの誘いだって? 今回のお前らの旅行」
「凄いインパクトあるよ、その。なー、わっち」
「ああ。何せ金髪碧眼だからな……健治は、確か文化祭の時に一度見ているはずだぞ。あの目立つ縦ロールの、執事連れのお嬢様」
「あー、あの娘かぁ! にしても、外国人かよ。俺もゲームの知り合いに何人か外国人はいるけど、実際に会ったりとかはしたことがないな……」
「普通そうでしょ。わっちがおかしいだけだよ」
「他人事みたいに言うなって。お前の知り合いでもあるんだからな?」

 そんなこんなで、俺たちは安さが売りの服屋へと到着。
 張り切ってお洒落に精を出す同級生たちと、俺のようなのは基本的に話が合わない。
 アクセサリーくらいは身に着けるが、最も服に求めているのは機能性と清潔感である。
 ダサくない程度の見た目でその二つが備わっていれば、基本それで問題ない。
 しかし、俺はともかくこの二人はそれで良いのだろうか?

「そういや、三人で来るときはいつもここじゃないか? 俺は全然構わないんだが」
「いや、だって、なあ? 秀平」
「ああ、そうだよね……俺らの懐がって理由も当然あるけど、一番はこの店だとわっちがあの台詞を口にしないからだよ」
「あの台詞?」

 二人は俺の疑問の声に顔を見合わせると、同時にこんなことを口にした。

「「これなら自分で作った方が絶対に安い」」
「あー……」

 確かに、そんな言葉を口走っていた記憶があるようなないような……。
 使っている生地や仕立ての割に高い服を見ると、ついついそんなことを思ってしまう。
 もちろん比較しているのは自分がかける手間を除いた材料費のみの金額なので、店のものより大概安いのは当たり前なのだが。

「確かにその点、この店は良いぜ。生地は値段の割に頑張っているし、何より仕立てが良いから丈夫で長持ちだ。デザインもそこそこで、安さを感じさせないように工夫されているからな。ここの商品なら、買って損とは全く思わねえよ」
「わっちのその言葉、ウチのかあちゃんが言ってた内容とほぼ一緒なんだけど」
「ああ、俺の母親も似たようなことを言っていた」
「え……何だそれ、二人とも。暗に俺が高校生らしくないって言いたいのか?」

 安くて良い物を買おうという発想がそんなにおかしいか?
 半額のシャツを手に固まっていると、二人は俺の肩を順番に叩いてくる。

「わっち……服を自分で作るような人間は、一般的な男子高校生とは言えないのではないかい? ん?」
「亘、悪いんだが……今回ばかりは、俺も秀平の意見に同意せざるを得ない。俺たちは大分染まっているから別だが、一般的な高校生はもうちょっと見栄っ張りだ。安売りのシャツを手に、そんなに嬉しそうな顔は普通しない」
「そ、そうか? それなら――」

 それなら他の店も見に行くか? という問いには、二人とも首を横に振った。
 何でも、趣味に割く小遣いが無駄に高い服のせいで減るのが嫌なのだそうだ。
 ……三人全員に彼女がいない理由が、何となく分かってしまうような一幕だった。
 余計なお世話だとは思うが、もうちょっとお洒落に気を遣った方が良いのではないだろうか?
 特に秀平、お前は何かもったいない。



「またな、二人とも」
「ああ、また今度」
「じゃーなー、健治ー」

 そんなこんなで、適当に必要分の服を買った俺たちは退店することに。
 特に目的もなく本屋やゲームセンターなどをぶらぶらした後で、そのまま解散。
 健治と別れ、帰って家事でも片付けるかと考えていると……。

「わっちわっち、この後って時間ある?」
「……特に予定はないが。どうかしたか?」
「ちょいとTBの話をしながら、その辺でアイスでもどうだい? 俺の奢りで!」
「お前が奢り……? この前のドーナツはまだ分かるが、どうした? 大丈夫か? 熱でもあるのか?」
「わっち、微妙に失礼じゃない……? いやあ、実は――」

 秀平曰く、数日前の夕食中に夏休みの課題の進捗を両親から訊かれたそうだ。
 その際に、もう終わっていると笑顔で答えたところ……。

「思いっ切り疑われた後で、実際に終わった宿題の数々を見せたら泣き……はしなかったけど、そのくらい喜ばれちゃって。おかげでめでたく小遣いが増量! 今回の旅費も快く出してもらったって訳だよ。期末テストの結果もあったしね」
「それは何とも……なるほど、分かった。そういうことならご馳走になろう」

 嬉しかったんだろうなあ、おじさんとおばさん。
 少し前までの秀平の姿を思えば、そうなるのも無理はない。
 俺たちはコンビニに寄ると、アイスを手に涼しい場所を求めて移動を再開した。
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