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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼女が「勇者」と呼ばれるまで

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PK(プレイヤーキラー)

 木の枝で鞭のように敵をはたく。
 すると生々しい感触が手に返り、体液を散らしながら蜂の胴体が二つに別れた。
 キモイ! 無駄にリアル!

「おお、ハインド! レベルが上がったぞ!」
「ん、本当だ。レベル3になったな」

 はしゃいだようなユーミルの声に下を見ると、足元から光の輪が上に昇り、レベルアップした事が告げられる。
 例の木の枝と棒を装備した後は順調だ。
 初心者用ポーションの使用回数に制限が無い事もあって、俺達は村に戻らずにひたすらモンスターと戦っていた。
 フィールドには沢山のプレイヤーが居るので場所を移動する必要も多いが、特にトラブルも無くレベルを上げる事が出来ている。
 初日で判断するのもどうかと思うけど、みんな結構マナーが良いんじゃないだろうか。
 敵を倒して一区切りがついた所で、木の棒を弄びながらユーミルが話し掛けてくる。

「そろそろ次のエリアに行くか? 私はそろそろ蜂の相手に飽きてきたぞ」
「いや、もう少しここで戦おうぜ。表示される敵のレベル、ここは5まであるみたいだし」
「そこまでが適正レベル、という奴か?」
「だと思う……って、ゲーマーのお前がどうして俺に聞くんだよ。他のオンラインゲームではどうなんだ?」
「知らん! 私は常に勢いで進んでいるからな!」
「その言葉の何処どこに、胸を張れる要素があったよ……?」

 それと、目のやり場に困るから実際に胸を張るのはやめろ。
 ……敵の情報に関しては、プレイやーと同じ様に上部にレベルと名前が表示される。
 先程の蜂のモンスターはキラービーという名前らしい。
 レベルは幅があって、この森で見た限りは1~5の間だったと思う。
 レベルが高い個体ほどサイズも大きいという芸の細かさで、耐久力も僅かだがレベルに応じて上がっている様子だった。
 そんなこんなで、相談の結果レベル5までここ『ドンデリーの森』で粘ることにしたのだが……。

「ひぃーやっはぁ! 死ねやぁ!」
「おわっ、何だ!?」
「ハインドッ!」

 突如、目出し帽を身に着けたプレイヤーが俺に向かって棍棒で殴りかかってきた。
 かわしきれずにまともに当たり、体力が三割ほど持っていかれる。
 体格と声からして男だが……どうしてプレイヤーが攻撃してくるんだ!?
 ユーミルが俺をかばう様に間に割って入る。

「どういうつもりだ、貴様!」
「問答無用! リア充に死を!」
「リア――え?」

 男の続けての攻撃を、ユーミルが木の棒ではじいてかわす。
 俺は少しでも状況を把握しようと、その男の頭上を注視した。
 ――プレイヤーネーム、ポーカーフェイス。
 何処どこがだよ! いや、マスクで表情は見えないけども! 見えないけどもさ!
 レベルが5、そしてネームが……黄色!?
 ユーミルもそれに気付いたのか、俺に向けて警告を発してくる。

「ハインド、こいつPKだ! オレンジまでは行っていないが、悪質プレイヤーだ!」
「何だそれ――あぶねっ!」
「避けるんじゃねぇぇぇっ!」
「プレイヤーキラーの略! ゲームによってはアイテム狙いだったり、ただの愉快犯だったり――ええい、今はそんな事はどうでもいい! どうする!?」

 どうするったってな……話を聞いてくれそうもないし。
 このゲームはプレイヤー同士の攻撃がありなのか。
 回復しながらひたすら男の攻撃に対して防御を続け、ユーミルと早口で言葉を交わす。

「あいつを俺達が倒した場合はどうなるんだ!?」
「ネームの色が青以外のプレイヤーを倒しても、ペナルティは無い! やるか!?」
「よっしゃ、ぶん殴れユーミル!」
「応!」
「ぶへっ!?」 

 ユーミルの攻撃が横っ面を捉え、男が景気よく吹っ飛ぶ。
 しかし初期装備には見えない皮の鎧を装備している為か、見た目の割にダメージが入らない。
 すぐさま立ち上がって再びこちらに対峙してくる。

「効かぬっ! 世界中のカップルを撲殺するまで、私はたおれんっ!」
「意味が分からない……」
「同意だが、まずいぜユーミル。装備もレベルも差が大きい!」

 再度ユーミルと仮面の男が打ち合う。
 運動能力ではユーミルが勝っているようだが、キャラの能力に差がある所為せいで劣勢になっている。
 細かなダメージを受ける度にポーションに加えて俺が回復魔法を掛けるが、ダメージに対して回復量が追いついていない!
 対して、こちらが小さいダメージを重ねても相手は回復アイテム一つで全快だから勝機が見えない!

「は、ハインド! 何とかしてくれ!」
「と、取り敢えず逃げるぞ! 目潰しを喰らえ!」
「うおっ! 目が! 目がぁ! に、逃がさんぞリア充どもめ!」

 咄嗟に引っ掴んだ砂を投げつけると、俺達は方向も考えずにとにかく走った。
 結果、ドンデリーの森を抜け、ホーマ平原というエリアにまで来てしまった。
 しつこいな、あの男! 何を勘違いしているのか知らないが、俺達はカップルじゃねえ!

「しぃぃぃねぇぇぇぇっ!」
「ああもう! 私達の時間を邪魔するんじゃない!」
「は!? はぁぁぁぁ!? 二人だけの時間が何だって!? あ゛あ゛!? 益々(ますます)許せぇぇぇん!」
「どういう耳をしてるんだ!? ええい、ハインド!」
「今、考えてる!」

 追い詰められて助けてくれそうな他のプレイヤーを探すが、運悪く周囲には見当たらない。
 PKを嫌う健全なプレイヤーが居れば撃退を手伝ってくれるかと思ったのだが……。
 何か他の手は――おっ!

「ユーミル、一分間耐えてくれ!」
「む! 分かった!」
阿吽あうんの呼吸ですね分かりません! 仲良く死んでその後で喧嘩しろおおお!」

 俺が見つけたのは、プレイやー以外でアイツを倒してくれそうな存在。
 回復魔法とアイテムをユーミルに使用し、その場から俺は離脱する。
 そして走り回って杖で適当に「それ」にダメージを与えていき、離れすぎないように慎重に「数を増やして」いく。
 油断するとそいつらの攻撃が当たりそうにな――痛っ!
 怖っ、このレベルだと数発で体力が蒸発する!
 体力の三分の一が軽い一発で消し飛んだのを見て、背筋が緊張で寒くなってくる。
 それと臭い! だから、どうしてここの開発はこんな無駄に細かい所ばっかりこだわるんだ!
 いつしか多数の足音に追われ、俺は全力疾走することを強いられていた。
 しんどい!

「どけええええ、ユーミル! 左、左だ!」
「!? は、ハインド、お前!」
「隙あり!! もらっ――!?」

 俺は平原を回って集めてきたレベル6のモンスター……ゴブリンを多数引き連れ、マスクの男にぶつかるように集団を誘導した。
 ユーミルと戦うのに夢中だった男は、俺の突き飛ばす腕を躱しきれずに転倒。
 俺はその上をまたぐようにジャンプして移動した。

「ぎゃああああ! ぐへっ! ごはっ!?」

 思い切りモンスターの集団の足にかれた後で、男はターゲットを変更したゴブリンの群れに為す術も無くタコ殴りにされた。
 あれほど苦労して削っていた男の体力ゲージが、見る見る内にゴブリン達の攻撃によって減少していく。
 それを呆気に取られた様子で見ながら、ユーミルが俺に傍に近付いてきた。

「うわぁ……むごい。ハインド、どこでMPKの事なんて知ったんだ?」
「あ、これって元から存在する手段なのか。PKがプレイヤーキラーだから……」
「MPKはその上にモンスターが付くだけだぞ。別名トレイン、とも言われるな」
「ああ、確かにあの引き連れて走る感じはそうかもな」
「本当にそうと知らずにやったのか!? 恐ろしい奴……」

 確かに、ここまでする必要があったかは疑問だ。
 俺達が死んでもまた村に戻されるだけだろうしな……。
 どちらかというと、単に気持ちの問題だ。

「そう言うなよ。ゲームとはいえ、俺はあんなのにやられるのは絶対に嫌だからな。なんか納得がいかん」
「私だってそうだ! そ、その……ありが――」
「ラブコメの波動を感じるぅぅぅ! 許さ――ぎゃあああ!」

 最後の抵抗も虚しく、マスク男の体力が0になる。
 それを見届けた俺達は、次の標的にされないようゴブリン達から大きく距離を取った。
 男が灰色の表示になり、その場で動かなくなる。
 暫くして範囲内に敵が居なくなったゴブリン達が去り、男の死体も光の粒子になって消えていった。
 最初の街に戻ったんだな。
 俺達は緊張を解くと、平原の上に二人でどっかりと腰を降ろした。

「ふぅー、疲れた……」
「私もだ……無駄に走らされた」
「初日から攻略そっちのけでPKとは……筋金入りだな」

 PKにもレベル10の制限を掛けておけよと思わなくもないが……。
 それとも、考えようによってはゲーム内の資産を持つ前に「そういう奴」も居ると知れて良かったと思うべきだろうか?
 デスペナルティの内容によっては、PKによって何か失う物も出てくるだろうからな……。
 背中越しのユーミルが回復アイテムを使いながら、ふと何かを思い出したように動きを止めた。
 どうした?

「ハインド、しかもあいつギルドのメンバーだったぞ」
「え、そうなのか?」
「うむ。プレイヤーネームの下に、リア充撲滅委員会と表示されていた」
「何だよその名前……あんなのが他にも居るって事かい。どっちにしてもサービス開始初日にやるこっちゃねーだろ……」
「違いない。……し、しかしそれにしてもあれだな! こ、困るよなっ! 私とお前は、そ、その……こ、こ、恋人などでは――」
「なー。迷惑な話だよなー」
「……」

 俺の言葉に急に振り返ったユーミルは、むくれた顔で俺の頬をむにっと引っ張ってきた。
 何で!? PKを迷惑って言っただけなのに!
 ……ともあれ、PKを撃退した俺達はそのままレベル上げを続ける事にしたのだった。
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