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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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ギルドホームの変事

 秀平の応援ばかりではなく、家に帰ったら自分の課題を進めなければならない。
 夕食と家事が終わった後は、自室でゲームにてていた時間を削って課題の消化に取り組む。
 TBの時間は減ってしまうが、しばらくの辛抱だ。
 一区切りついたところで、俺は後ろを振り返った。

「なあ、そろそろ帰らなくていいのか?」
「まだだ! 今夜の内にこいつを終わらせなければ、イベント開始までに課題を片付ける私の計画が……!」

 俺の背後では、座卓を出して未祐が同じように課題に取り組んでいた。
 一番苦手な数学の課題から始めている辺り、性格が出ていると思う。

「未祐さん、そこ間違ってます。解法は合っていますから、途中の計算ミスが原因かと」
「ぐぬ……年下に教わるこの屈辱っ!」
「今更だな」
「今更ですね」
「ええい、兄妹でシンクロするな! どこだ、間違っているのは!」
「大設3の2です」

 そんな未祐に勉強を教えてくれているのは理世だ。
 自分が今日やる予定だった課題は既に終了しているらしい。
 大抵理世はいつも一週間以内に課題を終わらせて、残りは自習と予習に時間を使っている感じだったはず。
 そして理世の場合、一年分くらいの学習範囲の差は全く問題にならない学力をしている。
 だから、俺が自分のことで手一杯の時は自然とこの構図になるという次第だ。

「兄さん、休憩ですか? こちらは私に任せてくださって大丈夫ですよ」
「ああ、ありがとうな。俺は今日の分はこれで終わり」
「そうですか。お疲れ様でした」

 理世が頷きつつこちらを労ってくれる。
 俺は散らかった机の上を片付け、明日やる分の課題を揃えておく。
 それから再度椅子を回転させて後ろを向いた。
 一息ついて、二人の様子を何とはなしに眺める。

「ほら、しっかりやってください。貴女がしっかりしないと、いつも教えてくださっている兄さんの負担が増えるんですよ。迷惑かけたら許しませんから」
「わ、分かっている!」

 言い方こそきついが、理世の教え方はとても丁寧だ。
 基礎から分かり易く、必要なところは本人に考えさせるといった場当たり的ではないしっかりとした教え方になっている。
 集中している二人の邪魔をしないように、静かに部屋を退出。
 喉が渇いたので、俺はキッチンで三人分の麦茶を用意して部屋へと戻った。

「おお! これはありがたい!」
「いただきます」

 未祐がぐびぐびと豪快に、理世がちびちびと麦茶を飲む。
 見た感じ、未祐の課題もあと少しで終わりそうな感じだが。

「相変わらず至れり尽くせりだな! もう私はこの部屋に住む!」
「ふざけないでください。今すぐ部屋から追い出しますよ?」
「なら妥協して、泊まる!」
「別に泊まってもいいけど、泊まるならいつも通り隣の空き部屋を使えよな」
「兄さん?」

 理世が俺に冷たい視線を送ってくる。
 そんな顔をされても……こういうことは初めてじゃないだろう?

「いや、だってもう遅いし。帰るなら送っていくけど」
「遅くたってこの辺りは危なくないじゃありませんか。交番もすぐ傍、町内会の見回り有り、夜間にランニングしている元気なご近所さん、等間隔で設置された明るい街灯とそれこそ至れり尽くせりです」
「改めて聞くと鉄壁の守りだよな、この町内……」
「要塞だな、要塞! 父さんも素晴らしい、安心できると褒めていた!」

 両親が過去に、引っ越す際にそういう場所だからここに決めたのだと言っていた記憶がある。
 安心して子育てできる家に住みたかった、とのこと。

「大体、今日はこいつ最初っから泊まる気満々だぞ。着替えらしき荷物を持ってきているし、多分VRギアも入っているだろ? そのバッグ」
「バレたか! その通り!」
「……」

 ギアを取り出して見せる未祐。
 バッグの口から一瞬、ちらりと薄手の布が……いや、やめよう。
 未祐のその姿を見て、理世が頭痛を堪えるように額に手を当てた。

「……隣の部屋ですからね。くれぐれも余計なことはしないように」
「私が泊まろうとすると、いつもお前は反対するな!」
「ところで未祐、章文おじさんの許可は?」
「取ってある!」
「家の戸締りは? 警報装置は?」
「やってきたし点けてきた! 問題ない!」
「それならいいか。じゃあ、とりあえず課題を終わらせちまえよ。俺は風呂を沸かして、隣に布団を敷いてくるから」
「うむ! ありがとう!」
「はぁ……」

 元気の良い返事と溜め息が同時に耳に届いた。
 対照的な様子の二人を部屋に残し、俺は風呂の用意をするため一度階下に向かった。



 その後は三人で順番に風呂に入ってから、同時にTBにログイン。
 ホームの個室から出て顔を合わせると、ぞろぞろと談話室へ向かう。

「ハインド、今夜はどこに行くのだ?」
「経験値稼ぎの話か? そうだなぁ……スピーナさんが教えてくれた場所に行ってみる予定だが。リィズ、回復アイテムのストックってどうなっていたっけ?」
「余裕がありますよ。多少強い敵が相手なら、どんどんアイテムを使っていった方が効率が上がるかもしれません。特にMPポーションは」
「そっか。エントラストをフルに使っても、足りないもんは足りないもんなぁ」
「通常攻撃でちまちまやっていると、危ない攻撃をしてくる敵もいるものな」

 戦闘中、特にMPが不足しがちなのはユーミル・セレーネさん・サイネリアちゃんのアタッカー三人。
 盾職二人はスキルの消費MPが控えめ。
 魔法組は消費こそ激しいが、MPチャージがあるのでそこまで足りないということはない。

「とりあえず、セッちゃんに多めに渡しておけば間違いないかと。的確に危険を刈り取ってくれますし。このところ急に動きの良くなってきたサイネリアさんも悪くないですが」
「おい、私は?」
「……ユーミルさんは視野が狭いです。それとムラがあります。ハインドさんの指示がない時の動きが今一つです」
「ぐはっ!?」
「あー、まぁ、ちゃんとユーミルにも持たせるよ。今更言うまでもないが、エントラストに被らないように状況を見ながら使ってくれよな。俺の方でも気を付けるけど」
「わ、分かった!」

 効果が優秀なポーションほど、回復が被った時の悲しみが大きくなる。
 そんな話をしながら慣れた経路を辿って進む。
 俺が異変に気が付いたのは、談話室の扉を開けた直後のものだった。
 何故か椅子にも座らず立ったまま緊張した様子のいつものメンバーに混じって、見慣れない人影がある。

「あ、先輩方……こんばんは」
「は、ハインド君……この状況を何とかしてくれると、その……」
「え……」
「来たわね、ハインド!」

 女王によく似た、しかし彼女よりも幼く活発で鋭い目をした少女。
 そこには誰あろう、俺たちのチームの応援NPCに決定したティオ殿下の姿があった。
 俺に気が付くと、椅子から立ち上がって真っ直ぐに近付いて来る。
 ……NPCがどうしてギルドホームに?
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