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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

最善の一振りと最高の一枚を求めて

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異文明の遺産

 パチパチと音を立てる炭火の上で、串に刺さったすり身が焼かれていく。
 特にする事のない四人は、何をするでもなくそれをじっと見つめていた。
 良い香りを放ちながら、表面に美味しそうな焦げ目が付き始める。

「……じゅるり」
「おい、ユーミル」
「はっ!?」

 僅かに垂らした涎を拭って、ユーミルが取り繕うように背を向けた。

「気持ちは分かるけど、これは後だからな? 後」
「わ、分かっている!」

 他のメンバーも涎こそ垂らしていないが、似たような表情のまま焼き上がるちくわから目を逸らす。
 味見と称して全員にできたてを配ってやりたい誘惑に駆られるが……今はちょっとな。

「まだ満腹度は七割も残っているし、紅茶のバフもあるからな」
「むぅ、これでは生殺しだ!」
「ええ。満腹度を無視して食べてしまいたいですわ……」
「美味しそうですねぇ……」
「一応言っておくけど俺たち、小一時間前にコース料理を食べたばかりだからな?」
「満腹度はあっても、満腹感のない弊害でござるな……」

 食べようと思えば入ってしまうからな。
 それにしてもこの場は、ご飯の炊き上がる香りやら油の温まっていく匂いやらで中々に食欲が刺激される。
 こいつらがこうなってしまうのも当然というか。
 ちくわを一通り焼き上げたら、次は天ぷらを揚げていく。
 海老、野菜のかき揚げ、そして今回一番手をかけたちくわ……。
 それらを炊き上がった白米の上に乗せ、甘じょっぱいタレをかけて丼の蓋を閉じる。
 食欲を刺激していた香りが、一つの丼の中に全て閉じ込められた。

「はい、完成。全員冷めない内にインベントリにしまえぃ。しまってしまえば状態はキープされる」
「ぬあぁぁぁぁぁっ! ドリル、行くぞ! 早く満腹度を減らしてこの天丼を美味しく頂くのだ!」
「言われるまでもありませんわ!」
「あっ、お二人とも! 少数で動いては……」
「――待て!」

 素早くも慎重な手つきで丼をしまって駆け出そうとする二人を、俺は回り込んで引き止めた。
 トビが言いかけたように高レベルフィールドなので、二人で動くのが危ないという理由もあるが……一番の理由はそれではない。

「ユーミル、いつも俺が言っているだろう。料理は?」
「あっ……か、片付けるまでだな!? 分かっている!」
「そうそう。片付けを手伝えとは言わないけど、せめてそれが終わるまではおとなしく待ってろ」
「いや、手伝う! 手伝うぞ! ほ、ほら、ドリルも手伝え!」
「何でわたくしまで!?」
「貴様は調理するのを見ていただけだろうが! 後片付けくらいは一緒にやるのだ! 使った調理器具を一緒に洗え!」

 料理において後片付けは大事なことだ。
 次の料理を美味しく調理するためにも、衛生環境には気を使う必要がある。
 洗浄ボタンで一発の装備と違って、食器や調理器具はちゃんと洗わない限りそういう汚れが残ったままになる。
 だから、調理しっぱなしという行為は厳禁だ。
 ただしこういう部分も現実よりは簡略化されているから、そこまで面倒ではないはず。

「お、お嬢様が食器洗いを!? これは夢ですか、幻ですか!?」
「ワルター、後で憶えていらっしゃい!」
「も、申し訳ございません! ……あ、し、師匠。ありがとうございます。ボクもこの天丼、とても楽しみです」
「ワルターも、炭火の片付けありがとうな」
「ハインド殿、使用済み油の処理も終わったでござるよ」
「サンキュー。こっちもそろそろ終わる」

 男三人は対称的に、暗黙の了解でスムーズに後片付けを終わらせる。
 およそ一分ほどの短時間で片付けを終わらせた俺たちは、安全エリアを後にした。



 整備された道を歩いて、下って、滝の傍ギリギリを通ったりしながらフィールドを進んで行く。
 当然ながら道中にはモンスターも出現する訳だが、場所によっては難易度が極端に上がる。
 目の前には羽が刃のようになった大型の鳥の魔物『ブレイドラプター』、時折範囲攻撃のかまいたちを飛ばしてくるので要注意だ。

「ロープの一本もないのかよ、ここは……ユーミル、位置が悪いぞ! 範囲攻撃に気を付けろ!」
「あだっ! ――あっ、あっ!?」
「あ、おい! 言った傍からぁぁぁぁっ!」
「痛い痛い!」

 バランスを崩したユーミルの元へ急行し、杖で引っかけて道へと戻す。
 自分も倒れながらだが、どうにか救出に成功した。

「痛いぞ、ハインド! でもありがとう!」
「はぁ、はぁ……落ちたらもっと痛いんだからな!? 注意しろ!」
「何をやっていますの、全く……ここはわたくしが!」

 ヘルシャが鞭を横に振り払って詠唱を開始する。
 魔法陣が現れ、急速に膨れ上がる火球に合わせて空気が爆ぜた。
 トビが攻撃を引き付けて躱し、ワルターが拳で一撃入れた後にヘルシャに道を譲る。
『レイジングフレイム』が『ブレイドラプター』を飲み込み、七割超のHPを減らして一瞬で消し炭に変えた。

「おおおっ! やるな、ドリル!」
「当然の結果ですわっ!」
「相手が風属性なのを考慮しても、かなりの威力だな。それに引き換え俺たちときたら」
「私がスラッシュを一撃入れて、ハインドがドリルにマジックアップを使っただけだったな!」
「誰のせいだ、誰の!」

 ユーミルが崖ギリギリに立たなければ、切り返して『バーストエッジ』でも倒せたんだぞ。
『エントラスト』で自分のMPをヘルシャに渡すと、俺は先頭に立って呼びかける。

「早くこの道を抜けてしまおう。ワルター、目的地までの距離は?」
「この道を真っ直ぐ、突き当たりの曲がり角を抜ければ見えて来るはずです」
「おっ、もうすぐでござるな! では、エンカウントしない内に……そろーり……」

 トビの忍び足に意味があるのかは分からないが、この細道での戦闘は圧倒的に不利だ。
 正規ルートらしき上にある大きな道はしっかりとロープが張ってあったりするのだが、こちらはそうではない。
 ロープの残骸と朽ちた木が立っていたりもするが、完全に管理を放棄されている。
 故に崖下に落ちやすくなっていたりと、中々に意地の悪い造りだ。
 どうにか敵が現れない内に曲がり角に駆け込むことに成功。
 一息ついた俺たちの前に――不思議な見た目の建物が現れた。

「白い!」
「お前の感想は端的に過ぎるな。確かに真っ白な建物で、周囲の景色から浮いて……いや、待てよ」
「ハインド殿?」

 既知のヘルシャとワルターは、俺たちの反応を見守るように沈黙を保っている。
 俺はその建物の真っ白な柱に近付いて目を凝らす。
 ……やっぱり、気のせいじゃない。

「薄っすらと、中を魔力の光のようなものが走っているみたいだ」
「どれ、拙者も――おお、機械的なものとはまた違った雰囲気! 血液のような光の動きが……」
「むぅ……つまり、この建物は何なのだ?」

 次々と柱に触れる俺たちに、待っていましたとばかりにヘルシャが口を開く。

「この遺跡は、異文明の遺産……TB世界の現行技術では解き明かせない謎が詰まった、ロマン溢れるダンジョンですわ!」

 ヘルシャが大見得を切って実に嬉しそうにダンジョンについて説明した。
 光属性と聞いて想像していたものと随分違ったな……中にどんなモンスターがいるのか想像もつかない。

「誠でござるか!? って、そんなに大事な遺跡へと通じる道が、どうしてあんなに廃れているのでござる?」
「それには理由がありまして。かつては帝国でも遺跡に関する研究が盛んだったそうなのですけれど、そのう……」
「70年かけて解析できた技術がたったの一つとくれば、諦めるのも致し方ありませんわね!」

 遺跡の調査・技術解析は先帝の代でストップしてしまったらしい。
 その一つの技術が金になったり大きな技術革新・発展を促すものだったら別なのだろうが……聞いた感じ、そうではないようだ。

「70年で一つか、それはまた。ちなみにその解析できたものってのは?」
「非公開とされていますけれど……その前後に帝国に大きな変化が起きなかったことから考えて、単なる見栄だった可能性もありますわね。国家プロジェクトが大コケでは、体面が保てませんもの」
「世知辛い話でござるな……」

 言い換えれば、それだけの技術で造られた建物ということになるが。
 とはいえ俺たちがやることはここをダンジョンとして攻略することなので、意を決して中へ。
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