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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
最善の一振りと最高の一枚を求めて
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ご褒美と新イベントの予告

「――それで、その後はどうなったのですか?」

「合金の配合比率に苦戦しているみたいだったから、セレーネさんがアドバイスして解決した。で、代わりに属性武器に関して色々とな」


 二人分の紅茶を淹れて、理世と自分の前のテーブルに置く。

 話題は昨日のTBにおける活動に関してだ。


「属性武器ですか……具体的には?」

「属性を帯びた素材――例えば火属性なら魔物の火を作り出す器官だったりを混ぜこむと、属性の乗りが良くなるんだそうだ。その具体的なやり方とか、コツとか……普通にやってたんじゃ気付かないような、難しい方法をわんさかと。それ自体は有難いんだが、また鍛冶の工程が複雑になるな」

「セッちゃんは何と?」

「やりがいが増えたって喜んでた。早くサーラのギルドホームに戻りたいってさ」

「目に浮かぶようです。セッちゃんらしい」


 時刻は午後四時、バイトは休みで早帰り。

 理世も今日はゆったりモード……というのも、俺たちより一足先に学校の期末試験が終わったからだ。

 ここのところ理世がゲームにログインしていなかったのは、試験勉強のためである。

 そして俺は試験終わり恒例の、理世へのご褒美を昨夜の内から用意しておいた。


「TBの話はそれくらいにして……試験勉強お疲れ様、理世。今回も、ちゃんとご褒美に甘い物を用意しておいたぞ」

「いつもありがとうございます。今日のメニューは何ですか?」

「ちょっと待ってろ」


 俺は一度キッチンに入ると、完成させたばかりのそれを持ってリビングに戻った。

 テーブルに置くと、少し大きめに作ったそれがぷるんと揺れる。

 周りには生クリーム、果物、それからバニラアイスまで添えた豪華仕様だ。


「わあ……!」

「プリンアラモードにしたぞ。夕飯は遅めにするから、安心して食べるといい。カラメルソースをかけて……はい、完成。召し上がれ」


 透明な器の中央に鎮座するプリン、それを盛り立てるようにフルーツが飾られ……。

 カラフルな甘味に理世は目を輝かせた。

 早速スプーンを手に取り、弾力のあるプリンをつつく。


「いただきます……はぁ、疲れた頭に沁みますね。美味しいです」


 自家製プリンを口にした理世の表情が緩む。

 この幸せそうな顔を見る度に、また作ってやろうという気にさせられる。

 こんなことばかりしているから、未祐に甘やかし過ぎだと言われてしまうのだろうが……。

 俺がじっと見ていても理世は怒ったりしないが、テレビをつけて視線をそちらにやる。

 ドラマの再放送に、ニュースか……しかし、夕飯はどうしようか。

 これから来る未祐も含め、俺たちは前言通りに遅めでいいとして。

 確か母さんが今日は――


「兄さん、あーん」

「へあ? ――もごっ!?」


 疑問の声と共に開けた口に、スプーンを捻じ込まれる。

 プリンの食感に生クリームの甘さ、やや苦めにしておいたカラメルソースが程よく混ざり合う。

 口を動かしてそれを飲み込むと、スプーン手にした理世がにっこりと笑む。


「沢山ありますし、一緒に食べましょう」

「あ、ああ。一人分としては量が多かったかな……今、スプーンをもう一本――」

「はい、あーん」

「……」


 立ち上がりかけたところで、有無を言わせず理世が再びスプーンを差し出してくる。

 仕方なく、座り直して口を開けると――


「……むふ」

「………………母さん。起きてたんなら、声をかけてよ」


 ドアの隙間から、母が顔を覗かせてこちらを見ていた。

 俺と目が合うと、リビングに隙間から体を滑り込ませてくる。


「だってぇ、お邪魔かなって思ってえ」


 そのまま椅子を引いて俺の隣に座り、飲み物を要求してくる。

 寝起きということを考慮し、とりあえず俺はコップに水を用意して母さんの前に置いた。


「おはようございます、明乃さん」

「おはよ、理世ちゃん。美味しそうなのを食べてるわねえ……あ、テスト明けだっけ?」

「はい。今回も良い結果をお知らせできるかと」

「聞いた亘? 今回も、だって。頼もしいわねぇー」

「そりゃあもう。自慢の妹ですから」


 理世が照れて、表情を変えないまま赤くなる。

 母さんは昨日夜勤で、今日も引き続き同じシフトなのでこんな時間に起きたという訳だ。

 俺は今度こそ立ち上がって、キッチンに向かいながら問いかける。


「母さん、何を食べたい? 今日は俺も時間に余裕があるんで、何かしっかりしたものを作るよ。それが終わったら弁当もやっとく」

「うーん……麺の気分かしら、今は」

「麺……スープ系の? それともパスタとかそういうの?」

「こってり系、スープなし!」

「じゃあ、あんかけ焼きそばとか」

「いいわね、あんかけ焼きそば。麺はパリパリにしてちょうだい」

「揚げ焼きそばにもできるけど……」

「魅力的だけど、カロリーが……お腹のお肉が……二の腕が……」

「はいはい、了解」


 ちなみに、カロリーを気にするなら最初からもっとヘルシーなメニューにしたら? と言うと怒られる。

 食べたい物を食べるけど、その中でできるだけヘルシーにするのが大事なんだとか。

 材料を取り出し、全て揃っていること確認してから早速調理を開始する。

 まずは野菜の下処理からだ。


「明乃さん、今夜は何時からですか?」

「七時だから、ちょっとゆっくりしてから出るわね。お留守番お願いね」

「はい、お任せを」


 あんかけ焼きそばなら、餡を多目に作っておいて後で俺たちの麺を焼けばいいな。

 しばらくしてプリンアラモードを食べ終わった理世が手伝いに立ってくれる。

 途中でやってきた未祐が家を訪れ、三人で仕事へ出かける母さんを見送った後で夕食に。


 いつも通りに食休みをしたら未祐を家まで送り、風呂から上がったところでスマートフォンに秀平から連絡が入った。

 それによるとTBの次のイベント告知がされたらしく、俺にも公式サイトを見てからログインしてほしい、という内容だった。

 戦闘系ではないけれど、今回は全力! という秀平の発言だが……戦闘以外で、秀平が熱心になるような要素とは一体何だろうか?

 疑問に思いつつ、公式サイトにアクセスすると……そこにあったのは、秀平の発言に得心のいく内容だった。

 なるほど、あいつがどの部門に応募したいのか丸分かりだ。

 イベントに関しては二つあり、以下のように書かれていた。


【スクリーンショットコンテスト、開催決定!】


 風景・人物(NPC限定)・動物・モンスターと、四つの部門であなたの自慢の一枚を!

 参加作品数は一人一枚限定、渾身の一作を期待しております!

 イベント詳細は後日発表となりますが、是非奮ってご参加ください。


【同時開催、ゴールドラッシュイベント!】


 高レートで換金可能な金塊が、一定期間採掘ポイントから出現!

 戦闘・生産を介さずに、手軽にゴールドを稼ぐチャンスです!

 合わせて期間中は、初心者用装備・アイテムセットにツルハシ30個・金塊10個をプレゼント!

 (※ツルハシ及び金塊は、レベル10に到達しても消滅しません)

 初心者応援キャンペーンと合わせて、一気に差を詰めましょう!

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