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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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記録への道と中ボスの登場

 杖を構え、山の斜面の上方……敵が出現してくる林の奥を睨みつける。
 現在の敵レベルは30、もう少しで掲示板の情報にあった中ボスが出現するはずだ。

「ハインド君、次! スノーベア!」
「っし、一発当てたら各個撃破! でかいスキルは温存!」
「承知!」

 スノーベアは動きが遅くHPが多め。
 だから、とりあえず全ての敵に触ってトビに向かわせながらの確実な撃破を狙う。
 前衛のユーミルとトビは投石からの突進。
 俺とリィズはより命中させやすい『シャイニング』と『ファイアーボール』からの投石。
 セレーネさんは通常と同じく射撃。
 大型クロスボウという少ない手数ながら、俺たちが触れなかったモンスターを的確に射抜いていく。

「ハインドさん! 壁への進軍、全て停止しました!」
「OK、殲滅に移るぞ!」
「ひゃっはぁー! 気分が乗ってきたぁ!」

 ユーミルが剣を手にして跳ね回る。
 昨夜に比べて初戦から非常に順調なので、言葉通りたかぶっているのだろう。

「ユーミル、くれぐれも大型スキルは使うなよ!? 頼むから!」
「了解だ! ――弾けろぉぉぉ!!」
「ああああああ!? バーストエッジ使いやがった、この馬鹿!」
「何やってんでござるかぁぁぁ!」
「あ」

 トビが俺に続いてユーミルに文句を叫び、リィズは白い目を向け、セレーネさんは苦笑した。
『スノーベア』は一撃で爆散、更に余波で三体ほど消滅したがスキルのWTが……。
 次のウェーブは一定間隔で訪れるので、時間をかけて残りを倒しても意味がない。
 俺は『クイック』と『バーストエッジ』のWTの差を考えつつ、詠唱を開始した。
『クイック』の光がユーミルを包み、『バーストエッジ』のWTが省略される。

「すまない、つい……」
「ついじゃねえよ! 次はないからな! 絶対だからな!」
「わ、分かっている! 大丈夫だ!」

 レベル30を越えてからの敵のレベル上昇は緩やかだ。
 1ウェーブに1上昇程度だから、中ボスまで残り4ウェーブ……。
 どうにか『クイック』のWTは明けることだろう。
 それ以前に、上の記録を狙うのにこんなところでもたついてはいられない。
 俺たちはそのまま30体からなる『スノーベア』の群れの殲滅を終え、僅かなインターバルの後に再度敵が湧き出す。
 眼鏡でありながらメンバー中、最も目の良いセレーネさんが一早く敵の種類を――

「は、ハインド君! 次、鹿が来たよ! シャープディア!」
「うわっ、出た! リィズ!」
「もうやっています。お任せを」

 慌てて指示を出すと、リィズは既に詠唱状態に入っていた。
 今回のイベントでは、トビのヘイト稼ぎとリィズの範囲魔法が頼りだ。
 鹿こと『シャープディア』に対しては、メンバーの持つスキルの中で最も範囲の広い『グラビトンウェーブ』を命中させていく必要がある。
 これに失敗すると、あの鉄のような材質の角で防壁をボロボロにされてしまう。

「――撃ちます」

 どのモンスターも、湧いた直後はある程度まとまった集団を形成して登場する。
 リィズがそこを狙って、広範囲に散る前に――捉えた!
 軽やかに斜面を下り出した『シャープディア』の速度が、重力の檻によって一気に落ちる。

「セレーネさん、範囲外の敵は?」
「いないみたい。でも、この持続ダメージのペースだと……」
「撃破には至りませんね。一斉にトビさんに向かうでしょうから、魔法の効果が残っている内に数を減らしてください」

『グラビトンウェーブ』の欠点はこの威力の低さだ。
 レベル10代、20代など低レベルの鹿は倒し切ることができたが、もうこの辺りから駄目なのか。
 無論、それを補う手段は用意してある。

「トビ!」
「合点! せいっ!」

 トビが焙烙玉を投げ、その捲れ上がる雪と共にほとんどの鹿が光の粒子へと変わった。
 俺たちのパーティは範囲攻撃が不足気味なので、事前に全員が焙烙玉を多数所持している。

「ユーミルさん、右に跳んで!」
「むむっ!? 了解だ、セッちゃん!」

 素早く移動したユーミルの真横を、セレーネさんの『ストロングアロー』が唸りを上げて通り過ぎていく。
 その矢は三体の鹿を貫通し、山肌に勢い良く突き刺さった。
 単発型シングルタイプのスキルに付随している貫通性能を使い、凡庸な連射型を遥かに凌ぐだろう成果を叩きだしている。

 残った敵はユーミルが重力波の中に入って数体を、最後に俺が魔法が解けた後に投げ苦無で一体を倒して終了。
 こうして昨夜の失敗の原因となった鹿を、上手く撃退することに成功した。
 そこから先は『スノーベア』、『スノーウルフ』、『スノーウルフ』の順で無難な敵が連続。
 この中では『スノーベア』がHP大・速度低・少数、『シャープディア』がHP小・速度高・多数、『スノーウルフ』はそれらの中間となっている模様だ。
 そしてまたインターバルが訪れる。

「投擲アイテムの消費が激しいな……最後まで持つかな?」
「しかし、累計討伐数は競わないのだろう? だったら問題ないのではないか?」
「そもそも累計は、俺たち学生では勝負にならんよ。時間が圧倒的に足りねえもん」
「一日中張り付いている方々には敵わないでござるからなぁ。釣り関連で工夫が必要だったレイドイベントと違い、今回は時間をかけた分だけシンプルに有利でござる」

 減ったMPを回復しながら、俺たちは短い休憩を使って会話を交わす。

「そうなりますと……ある程度流れに慣れたら、ありったけのアイテムを注ぎ込んでの記録狙いになりますかね?」
「それが正しいと思うよ。中途半端は失敗の元だし。何回チャレンジできるかは、アイテムの残り数と相談だけど……」

 今回のイベントはアイテム管理が非常にシビアだ。
 TBは毎回現地のプレイヤーに有利な要素があるが、その中でもこの防衛イベントは飛び抜けている。
 すぐにホームに戻れる距離ならば、アイテムのやりくりも楽だろうからな……。
 っと、話を戻そう。

「狙っているのは一戦の最高討伐数ですからね。それも個人の。うーん……そう考えると、さっきユーミルが使ったようにバーストエッジを鹿の集団に撃ち込むのもアリか? このままだとパーティ記録が伸びても、ユーミル自身の記録が伸びない」
「つまり、私の暴は――やり方は正しかったということか!?」
「いやいや、何を言おうと先程のは単なるミスでござろう? 暴発って言いかけているでござるし。それならハインド殿、焙烙玉の初手もユーミル殿にするでござるか? グラビトンウェーブがいい按排あんばいにHPを減らしてくれて、撃破数が伸びそうでござるよ」
「そうだな。初手で倒せるときはそうすっか」
「初手で……ということは?」

 トビの疑問には、リィズを示すことで答えになると思う。
 そういうダメージ計算などは、リィズのほうが俺よりもずっと得意だからだ。
 リィズの計算を元に、レベルが上がって二発目の焙烙玉で倒せるときなどは、その通りにユーミルの順番をずらす。
 討伐数が伸びそうな案を一通り聞いたユーミルは、笑顔で力強く頷いた。

「おお、なんだか行けそうな気がしてきたぞ!」
「後は慣れだ、慣れ。今夜の内にイベントに慣れて、一回くらいは記録を狙って――」

 その時、モンスターが湧く林の様子が変化した。
 揺れる茂みや木々が複数ではなく、足音も聞き覚えのないものに変わっている。
 じっと観察していると何か大きな影が一つ、林の中から顔を出した。
 白くて丸い頭、デフォルメされた表情、丸い体を持ち、手は棒、そして頭の上にはバケツ……。

「「「雪だるまだ!?」」」
「ゴーレムの一種……かなあ? あ、スノーゴーレムって表示されてるよ」
「では、お約束のコアがありますね。どこでしょうか?」
「冷静だなあ、二人は……」

 雪だるまにしか見えない『スノーゴーレム』が動き出す。
 レベルは35、掲示板の情報通りの中ボスだ。足はない。
 飛び跳ねるようにして、ゴーレムが迫る。
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