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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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首都グラキエースと再会

 マール共和国の時もそうだったが、PKを倒すとシステム側から懸賞金が支払われる。
 俺たちの場合も例外ではなく、結果としてかなりの額の金が手に入った。
 しかし当然、その得た金額には役割によって差がある訳で。

「はい、ハインド君」
「ハインドさん、お願いします」
「当然のように俺に預けるのやめ――はぁ。サーラに帰った後で返すから、せめて金額を申告してくれ……」

 それによると、それぞれの金額の内訳はこうだ。
 近接組の総額が百万G、トップがトビの五十万G。
 そして後衛組の総額が四百万G、トップがサイネリアちゃんの百五十万G。
 俺たちは雪原入口から動かず、それらの金銭整理を行った。
 洋紙のメモを覗き込んだユーミルが、ショックを受けたように後ずさる。

「酷い差だ!?」
「ああ、酷い差だ……俺なんか五万Gだぞ? シャイニングで倒した一人だけ」
「酷い差だ!?」
「二度も言うなよ……ブービーはリコリスちゃんの二十万だな」
「酷い差です!?」
「リコはしょうがないっしょー。近接の、しかも防御型ガードタイプだもん」
「え、えっと、うん。今回は仕方ないよ、リコ」
「半端に慰めないで!? 余計に惨めだよぉ!」

 それでも、俺なんかよりは遥かにマシなのだが。
 討伐隊が来る前の混戦状態に突入した場合なら、そのまま前衛と後衛で逆の結果になった可能性が高いが……。
 あの『ラプソディ』というギルドが、決してそんな状況に戻すことを良しとしなかった。
 雪原を縦横無尽に駆け抜け、ブループレイヤーとPKをどんどん切り分けて行った。
 鳥瞰とでも言えばいいのか、戦場全体を見渡せていたかのような見事な動き。
 指示を出していた、あのギルドマスターが優秀なのだろう。

「――ハインド」
「うん?」
「誰か近付いて来るぞ」

 PKが一掃された雪原内には、レベルが低めのプレイヤーたちが一斉に雪崩れ込んできている。
 このスピードから見て、誰かが雪原内の安全を知らせて回っているようだ。
 PKのデスペナルティの重さは、それまでに行った行為に比例するが……大体今から24時間は安全と思っていいはず。
 戦闘能力に自信がないプレイヤーたちが通るのは、今の内ということだ。

 そんな中で、ユーミルの言う通り一騎のプレイヤーが俺たちに向かって駆け寄ってきた。
 やや険しい表情をした青年……『ラプソディ』のギルドマスター、『レーヴ』だ。
 その表情から何か悪いことでもしたかと勘繰ったが、彼の放った言葉はそうではなかった。

「協力に感謝します。適切に奴らの逃げ場塞いでくれて、助かった。素晴らしい働きだったよ」
「あ、ああ、どうも……」

 馬を降りて握手を求めてくるので、俺はそれに応じた。
 真っ直ぐに俺を見て歩いてくるのだから、これは仕方ない。
 ただ、そのままこちらを見定めるようにじっと見てくるのは……何だろうか?
 ギルドマスターとして無視された形のユーミルが、少しだけムッとした表情になる。
 レーヴは一切そちらには視線を向けず、用は済んだとばかりに身を翻した。
 馬に乗り直した彼が去っていくと、むくれ顔のユーミルが不満を述べる。

「何なのだ、あいつは! 確かに作戦を立てたのはハインドだが!」
「固ーい感じの人でしたね」
「ユーミルさんだけじゃなくって、彼、ハインド君しか見ていなかったよね?」
「ハインド殿のことが好きなのでは?」
「おい、やめろよ。そういう冗談を別にしても、余り好意的な感情を含んでいない気がしたんだがな……」

 あの目からは、僅かな敵意が見え隠れしていた。
 感謝の言葉を口にしながらもどこか、それがついでに過ぎないような……。

「まぁ、初対面の相手が何を考えてるかなんて、悩んでも分からないか。とりあえず、俺たちもこのまま首都に進もう」
「あ、そういえば今の戦場でアルベルトさんたちを見かけたよ」
「本当ですか?」
「PKたちを薙ぎ払っていたよ。相変わらずパワフルだね、二人とも」

 相変わらずセレーネさんは良い目をしている。
 それならば、もう首都で先に待っている可能性があるな。
 俺たちは入口ギリギリに寄せておいた馬に乗り込むと、雪原の縦断を始めた。
 ここ『ルジェ雪原』は大型フィールドなので、フィールドボスは出現しない。
 途中に点在するのは、ダンジョンである洞窟と塔がいくつか。
 サーラとの違いなどを雑談しつつ、モンスターを無視して『首都グラキエース』へ。



『首都グラキエース』は、大きな議事堂が目を惹く厳しい寒風が吹き荒ぶ雪の都だ。
 立ち並ぶ家々は耐寒性を考慮してか、かっちりとした煉瓦造りのものが多い。
 街中を歩く人々は、縮こまるようにして建物から建物へと行き交っている。

「街中でもコートを脱げない悲しみ!」

 ユーミルが白い息を吐きながら、その場でバタバタと足踏みをした。
 プレイヤーの数は非常に多いのだが、みんな他人に構っている暇はないとばかりに休憩場所を求めて通り過ぎていく。
 この分なら、ネーム隠しなどは必要ないだろう。
 いつものように馬を預け、広い町の中を固まって移動中だ。

「サーラと違って、町中では日陰に逃げ込めばいいって訳にはいかないからな。見た目のいい装備にしても、余り人目に触れないのがベリ連邦のプレイヤーの悩みだそうだ」
「最近はそれを解決するために、防寒性能を組み込んだ防具を作ったりしているみたいだよ」
「どうやるんですか? 裏を起毛にしたり、中に着込んだり――」
「それもあるんだけど、TBにはゲームならではのあれがあるじゃない」
「……? ……ああ、属性石!」
「うん、正解」

 セレーネさんが微笑んだ直後、コートを着ていない薄着の女性プレイヤーが通り過ぎていく。
 何という余裕の表情……彼女はベリ連邦のプレイヤーだな、きっと。
 装備のそこかしこに、青色――つまり水の属性石が輝いていた。

「気にしたことがなかったですけど、サーラでも火属性の石を使えば快適になりますか?」
「なるはずだよ。私たちはずっとサーラにいた訳じゃないし、イベントの度に頻繁に移動していたからね。でも、今後必要だと思うなら火属性の石を集めてみてもいいんじゃないかな?」
「仰る通りですが、何だかんだで属性値の高い石は貴重品ですから。ルブルムストーンの件もありますし、やはり数を揃えるにはダンジョンに潜る必要がありますかね?」
「属性石を得るにはそれが一番って言われているね。ただ、装備用の穴をダブルスロットにすると鍛冶の製作難度が跳ね上がるんだよねぇ」
「フィリアちゃんの斧は大変でしたね……途中で砕けるわ、折れるわで」
「苦労したよね……もっと練習して、ダブルスロットの装備製作も安定させないと」
「おおう……鍛冶談義が始まってしまった」
「お二人とも、こんな場所では寒いでござろう。続きは後に――」

 ユーミルに続いてトビが呆れた声を出した直後、俺の腹に衝撃が走る。

「ぐへぇ!?」
「……」

 どうにか倒れずに済んだが、一歩下がって思わず呻く。
 その人物は、身長に不釣り合いな大斧を背負っていた。
 ――お? この頭の高さ、そして見覚えのある髪型は……。

「フィリア……ちゃん?」
「ハインド、久しぶり……会いたかった……」

 言葉の割には愛想のない表情をした少女が、密着したまま顔を上げた。
 唐突な登場に驚く俺たちに元に、フィリアちゃんの後ろから人影がもう一つ。
 肩で風を切りながら、大剣を背負った男性が目の前に立って小さく笑う。
 トビがそれを、諸手を挙げて出迎えた。

「兄貴ーっ!」
「トビ……久しぶりだな。渡り鳥、それからヒナ鳥たちも」

 本当に久しぶりだ。
 アイテムコンテスト時に二人の武器を作製して以来の、アルベルト親子との再会だった。
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