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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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レベル差と戦士団の現実

「ソイヤッ!」
「ぐはっ!?」
「ソイヤッ! ソイヤッ!」
「ぬあああああっ! 馬鹿なぁ!」
「み、ミレス団長ーっ!」

 雑な掛け声と共に兵士をなぎ倒しているユーミルが見える。
 ここまでノーダメージか……やっぱりここの戦士団はレベル差に関係なく少しだらしないな。
 正直、ユーミルの相手になっていない。
 神官部隊と一緒に模擬戦をやっている一画に移動した俺は、早速ダメージを受けた兵士の近くに駆け寄った。

「ティオ殿下、習得している回復魔法は?」
「ヒーリング、ヒーリングプラス、エリアヒール、リヴァイブの四つです」
「なるほど、ご立派です」

 レベル30のNPCとしてはかなりの習得量だろう。
 他の神官メンバーはレベル25で、『ヒーリング』と『ヒーリングプラス』で精一杯だそうだから。
 女王の妹にして聖女なのだから、設定的にも特殊NPCとして優遇されているのだろうけど。
 俺の言葉に彼女は胸を張り――否、ふんぞり返った。

「当然です。それで、私に何を教えてくれるのです?」
「特に何も」

 俺の発言に、ティオ殿下は面食らったように固まった。
 これからやるのは、回復の効率的な方法論などではない。

「ただ、俺と並んで一緒に負傷者を治療していただきます。やることはそれだけです」
「それだけ……?」
「ええ、それだけ」
「あの、我らは何を?」
「俺たちの治療を見ていてください。その先に関しては……まぁ、後で考えましょうか」
「はぁ……」

 他の神官部隊のメンバーも、殿下に続いて釈然としない顔で頷いた。
 負傷者を二つに分け、俺とティオ殿下が治療を開始する。
 最初にティオ殿下が動き、『ヒーリングプラス』で瀕死の兵士をほぼフル回復させた。
 ……いや、そんな勝ち誇った顔をされてもな。
 宝石が沢山付いた豪華な金の杖を鳴らして悦に浸っている。
 そんな殿下は放っておき、俺は最初に自分に対し『マジックアップ』を使用。

「え!?」

 続けて『エリアヒール』を発動し、順番に陣の上を通らせて次々と並ぶ負傷者のHPをフルに持っていく。
 そしてWTを考えて回復し切らなかった戦士に向けて先に『ヒーリング』を使用。
 あ、これ相手のレベルが低いから、単体なら『ヒーリング』だけでもほぼフルまで回復するわ……。
 仕上げにユーミルが新たに生み出した負傷者に『ヒーリングプラス』を使用して全快。

「えっ、えっ!?」

 ここまでで負傷者約二十名の中で俺が治療したのは十名、ティオ殿下は二名となった。
 最後に三人ほど追加された負傷者もろとも、殿下の受け持ちの戦士まで『ヒールオール』で治療して負傷者がいなくなる。

「あっ……!?」

 そしてティオ殿下の前に『支援者の杖』を持って堂々と立つ。
 見せつけたのは単なるレベル差、魔力差の暴力。
 しかし、これが今の戦士団にとって一番必要なものだった。



 NPCにはレベルが見えない、というのは先に触れた通りであるが。
 その結果、サーラの兵士たちにどういう意識があるかというと……。

「大陸最弱の兵? ははっ、まさか。そんなことはあるまいよ。最近戦争がないから知らないけれど」
「サーラはその昔、かの強大な帝国を退けたこともあるんだぞ! ――え? それはいつだって? 百年前の戦争だよ!」
「二百年前の魔族の大進行では、サーラの英雄フランマが――」

 こういった現状がある。
 つまり何が言いたいかというと、彼らは自分たちの弱さに自覚がないのだ。
 実力差を見せつけられたティオ殿下は、急にしおらしくなってこちらの話を聞くようになった。
 本当はもっと穏当な手段で教練に入りたかったのだが、部隊のトップがああも増長していては話が進まない。
 好みの手段ではない上にやや強引だったものの、効果は抜群である。
 俺は自分たちが各国を訪れた経験があると説明し、サーラの現状を他国との比較から話して聞かせることにした。

「ベリ連邦以外の三国を見て回った感じでは、最も兵が鍛えられているのは帝国。僅かに劣るマールとルストが横並び、といった感じでしょうか」

 あちらは既に他のプレイヤーたちが教練のクエストをしているだろうから、俺たちが見た時よりも更にレベルが上がっている可能性もある。
 正直、今からやって追いつけるものなのか疑問ではあるが……それは決して口には出さない。
 神妙な顔を、あるいは悲壮な顔をして神官部隊の面々が話を飲み込んでいく。

「……では、私たちサーラは」
「最弱です。間違いなく大陸五国の中で最弱です。失礼ながら殿下も例外ではありません」
「意趣返しですか!? 意地悪ですわね、あなた!」

 ははは、俺があんな安っぽい挑発で頭に来ている訳がないじゃないか。
 嫌だなぁ。
 さて、ここからは本格的にサーラの神官たちをどう鍛えるかを決めていかなければならない。

「まず殿下はヒールオールの習得を。他のメンバーは……リヴァ――エリアヒールの習得を目指しましょう。光の攻撃魔法が得意な人は、リィズの教練にも参加を。近接戦闘が得意な人は模擬戦にも参加してください」
「「「はいっ!」」」
「分かりました……」

 いかん、またいつもの癖で『リヴァイブ』と言いそうになった。
 プレイヤーにとっての『リヴァイブ』は『エリアヒール』よりも先に習得できるスキルだが、NPCにとってはそうではない。
『リヴァイブ』というスキルは神官にとって特別で、このティオ殿下のような選ばれた人間にしか扱えない高度なスキルに分類されるとか。
 まぁ、そういうメンバーでも『聖水』を携帯すればいいだけの話なのだが。
 要はそれだけ習得が難しいスキルであるということだ。
 ともあれ現状の自覚を促した結果、ようやくここから本格的な教練を始めることができそうだった。



 神官部隊はそのまま模擬戦の傍で負傷者の治療を。
 細かいスキルの回し方や最適なスキル選択などは、適宜教えていくことに。
 それが落ち着いたところで、俺は他のメンバーがどんな教え方をしているのか気になって少し観察して回った。
 まずはリィズ。

「……と、他系統の魔法に関しては分かりませんが、この攻撃魔法の範囲設定は応用が可能です。味方の位置、魔法発動までの間、魔法が持つ範囲、そして敵の動きをしっかり把握して放てば効果的に――」
「「「……」」」

 小さな先生を前に、大の大人たちが座って頷きながら話を聞いている。
 不思議な絵面だ……そしてこの教練方法は魔導士ならではだろう。
 実地よりも知識から入っていくのが、実にらしいというか何というか。
 次、トビ。

「ここで構えて――せーのっ!」
「「「忍ッ!!」」」
「何だあれ……」

 前転からの苦無投げを集団で決めたトビとその教え子たちは、何故か知らないがとても満足気だった。
 ちなみに投げた苦無はてんでバラバラの方向に飛んでいき、まともな攻撃になっているのかどうかは謎である。
 その前転いるか? いらないだろう? と突っ込みを入れたいのを俺は我慢した。
 果たしてこの工兵隊はまともな仕上がりになるのだろうか……?
 そんな不安を抱きつつ、次はセレーネさんの下へ。

「い、行きますっ!」

 弓兵隊は的当てをしているらしく、緊張した様子でクロスボウを構えるセレーネさんに注目が集まっている。
 視線がやや辛そうだが……おっ、見事に命中。

「「「おおーっ」」」

 部隊のメンバーから拍手を送られている。
 その後は武器を変えながらどんどん的に当てていき……って、改めて純粋に凄いな。
 自分が普段使っている武器だけでなく、大型・小型のクロスボウも弓も器用に使いこなしている。
 ミレスの話によると、弓兵隊は物静かな人たちが多いらしいからな……セレーネさんにとっては幸いだった。
 どうやら、みんな上手くやっているようだな。
 そろそろ自分の受け持ちに戻るか……。
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