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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

大型アップデートと新コンテスト

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町の観察とPTの解散

 ルスト王国の最も西に位置する『ウェストウッズの町』。
 そこにようやく到着した俺達は、町の片隅のカフェテラスで腰を落ち着けていた。
 この町は綺麗に整備された並木が印象的で、どこか機能的で武骨だった帝国の町や村とは違った趣を感じさせる。

「そういや、女性プレイヤーの比率が薄っすら多いな……」
「どことなくお洒落で洗練された空気がありますからね、この町は。そのせいでしょうか?」

 ハーブティーを飲みながら、俺に言葉を返すリィズ。
 人の数がそこそこなので、ヒースロー以外は鬱陶しいローブは無しだ。
 他の町も回ってみないと分からないが、ルスト全体がこの雰囲気だとするとこの女性比率も頷ける結果となる。

「なんか、アレも多くねえか? ほら、あのー……長い耳の……」
「……お兄ちゃん、エルフ耳のこと?」
「そう、それだ!」

 確かに、獣耳がグッと減ってエルフ耳の装着者が多い印象だ。
 そしてポル君は、やはりそういった知識に疎い模様。
 逆にフォルさんは話していると普通にゲーム用語なども通じるので、こうして頻繁にお兄ちゃんに補足説明するという行動が見られる。

「それはルストが森の国だからじゃないか? エルフって言うと、やっぱり森の奥で暮らしているイメージだから」
「なるほど、分かります」
「フォルには分かんのか。オレにはよく分かんねえ」
「――確かにエルフ耳が多いです。しかし、ハインドさんのかねてからの懸念通り耳と肌の色が……」
「あー、やっぱり違っちゃってるか。製作者の一人としてはちっと責任を感じるな……」

 そもそもが人体とかけ離れた異物である獣耳と違って、エルフ耳は肌の延長にあるものだ。
 本当はユーミルにしたように、それぞれの肌色に合わせた一点物を作らないとどうしても違和感が付き纏う。
 エルフ耳の製作者は今や俺だけじゃないし、気にするようなことではないのかもしれないが。
 うーむ……。

「あ、そういや勇者ちゃんも長耳だよな。フォルは同じようにしねえのか?」
「わ、私がエルフ耳? 似合わないよ、お兄ちゃん……」
「そうかな?」
「そうでしょうか?」

 俺とリィズが同時に否定の言葉を口にする。
 フォルさんの現在の髪色は黒だが、髪色だけはアバターの中で唯一ゲーム開始後も変更可能な項目だ。
 顔立ちも美人のソレだし……ポル君に似た目元の鋭さはあるが、それも柔和な性格とのギャップがあって非常によろしい。
 金髪にしてエルフ耳を装着すれば、映えると思う。

「フォルさんが嫌じゃなければ、俺がエルフ耳を用意するけど」
「え、で、でも……ここまでして頂いた上に、これ以上の我儘は……」

 フォルさんが慌てたように両手を横に振る。
 エルフ耳が嫌だとは一言も言っていないのが分かりやすい。
 それをつい笑ってしまう俺の脇腹を突いて、リィズが思案顔で一言。

「ですがハインドさん、ゴムの木は……」
「いや、都合の良いことにそれが在るんだよな……しかもこのウェストウッズの町中に。さすが森の国。採取も誰でも可能っぽかったから、ゴムに関しては問題ない」
「と、いうことは――」
「顔料はNPCのショップでも取引掲示板でも簡単に揃うから、型さえ用意すればこの場で作れるな。全部で所要時間二十分くらいか? どうする?」
「あ、えーと、その……お、お願いします!」

 俺は二つ返事で引き受けた。
 このままPTを解散させて別れてしまうのも寂しいと思っていたところだ。
 餞別の品として丁度いいので、早速取り掛かることにしようか。



 鍛冶場で作った金属型を割り、中から耳を取り出す。
 場所は先程と同じカフェテラスだが、飲み物を注文し直して席も先程とは違う位置に移動している。
 事前に色の調整をしっかりと行ったので、問題ないはず。
 やはり本人が目の前に居ると顔料の混ぜ合わせも楽だった。
 フォルさんは俺から耳を受け取ると、怖々としながら装着する。
 既に彼女の髪色も金髪に変更済みだ。

「どう? べたついたりしてない?」
「だ、大丈夫です! ええと……」
「似合うぞ、フォル! そこらを歩いている奴らよりも断ぜ――」
「ポル君、少し黙ろうか? 怖いお姉さん方がこっちを見てる」

 迂闊にも程がある。
 妹が大事なのは分かるけど、褒めるにしても同時に周囲をおとしめるような発言はアウトだ。
 通りを歩くプレイヤー達からの視線が逸れるのを待って、フォルさんに向き直る。

「……フォルさん、メニューを開いて装備登録を。そこで自分の姿も見られるから」
「はい! ……わぁ……ありがとうございます! 本当に耳が動くんだ……!」

 メニューで角度を変えながら、エルフ耳を付けた自分の姿を嬉しそうに眺めるフォルさん。
 どうやら気に入ってくれたようだ。

「予想以上に似合いますね……」
「これがエルフとしては正統派だよな。一番イラストなんかでも見かける配色」

 フォルさんは偶然にも瞳の色だけを変更して緑にしていたので、そういった意味では完璧に近い。
 病弱故か、透けるように白い肌もそれにマッチしている。
 それを見てニヤニヤしていたポル君が、ふと何かに気が付いたように俺の方を向いた。

「そうすっと、勇者ちゃんのはフォルのとは違うのか?」
「あれはダークエルフ。媒体によるけど、近似の種族であるエルフとは敵対していたりする事が割と多いかな。闇の力を持っていたり凶暴だったりってのも定番だね」
「へー……んあ? オレはそういうのにあんま詳しくねえんだけどよ」
「それは知ってる」
「お、おお。でよ、だったら闇なのに勇者ってのはなんかおかしくねえか?」
「勇者を光の戦士として定義するなら、おかしいね。力が反発し合って対消滅しそう。まぁでも、元々このゲームの設定にエルフやダークエルフが居るわけじゃないし、別にいいんじゃない? 呼び名の由来もそういうアクセサリーを持っているからであって、誰もそんな細かいことまで気にしてないよ」
「ま、確かにそうか」

 中にはユーミルの無謀な突撃を見て「勇者」と揶揄している人も居そうだが……恐らく少数派だろう。
 大抵は勇者のオーラを所持しているから、という悪意の無い単純な理由だと思う。
 しばらくその場で雑談をし、俺達はいよいよPTを解散することに。



 今後の予定を聞くとポルフォル兄妹はしばらくの間、帝国に戻ってレベル上げをするとのこと。
 馬の期限が残る今夜の内に、通ってきたフィールドを逆走するのだそうな。
 町の外、『ウェントゥス草原』でお別れだ。
 二人とも今夜はこちらに対してお礼ばかり言い過ぎなので、俺達は機先を制して口を開いた。

「じゃあ、また。ポル君、フォルさん」
「またお会いしましょう」

 そして軽く手を上げる。
 二人は何か言いたそうにしていたが……

「……ああ。またな!」
「はい! また!」

 その言葉だけを口にすると、馬に乗り込み、草原を西に向かって駆けて行った。
 こうして後ろから遠ざかる背中を見ていると、ポル君の乗馬が随分とまともになっているのが分かる。
 ぼんやりとそれを眺めていると、風で浮きそうになる帽子を抑えながらリィズが俺を見上げてくる。

「……町に戻りましょうか?」
「……だな」

 俺は大きく伸びをした後、リィズを伴って草原に背を向けた。
 サーラを出発してからの約4時間、随分と濃密なプレイ内容になったな。

「少しインベントリを整理しつつ、明日のことを相談してからログアウトしようぜ」
「はい。移動の際はまた野良PTを組みますか?」
「それしかないよなぁ。帝国内では最悪、ヘルシャ達シリウスに頼る手もあったけども。ルストには本当に知り合いが皆無だからな」
「では人を集めやすそうな募集内容も含めて、今夜の内にもう少し煮詰めておきましょうか」
「そうしよう」

 今夜のようにゆっくり進むPTも悪くないが、明日は誰かにPTリーダーをやってもらって楽をしたい気分だ。
 リィズとあれこれ話し合いながら、そのままウェストウッズの町へと戻った。
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