戦闘結果
‐BATTLE RESULT‐
参加人数 103/250(同盟のみ・途中参加不可)
撃破タイム 20:32
総合スコアMVP 152,311Pt ミツヨシ
攻撃スコアMVP 129,359Pt ミツヨシ
防御スコアMVP 70,105Pt ワルター
貢献スコアMVP 110,450Pt トビ
妨害スコアMVP 63,666Pt リィズ
支援スコアMVP 102,222Pt ハインド
「あれ? 砲撃は別扱いか。そうだよな……あのダメージだもんな」
「そうみたいですね。先輩、支援スコア1位おめでとーございます。ばんじゃーい」
「あ、ああ、ありがとう。戦闘後にはこんな風に結果が表示されるんだな」
視界内に表示された戦闘結果を見ながら、シエスタちゃんが俺に向けてぺちぺちと拍手をしてくれる。
正直、大半はこの『支援者の杖』の性能のおかげだと思っているのだが。
魔力上昇値が非常に高いので、他の神官の人達よりも目に見えて回復量が多かった。
「お疲れ様、本体君。うーん、こうして見ると渡り鳥無双だねえ。本気で100人分働く気?」
「いえいえ。キツネさんやユキモリさん、ミツヨシさんが他への指示を出してくれたからこそですよ。俺達がそれぞれ、自分の動きに集中できたのは大きかったです」
「そーお? 照れるぜ、このこのぉ。褒め上手さんめー」
キツネさんが背中をバシバシと叩いてくる。
他への指示を出しながら動くのは大変だからなぁ……素直にありがたい。
戦闘が終わり、他の同盟メンバーも緊張からの解放感を得ながら部隊ごとに雑談に興じている。
「そんな中でも、指揮をこなしながら二つもMVPを持って行ったミツヨシさんは凄いと思いますが。表示されてはいませんけど、俺が見ていた限りではヘルシャが攻撃スコアでは2位っぽいような?」
「最後の攻撃が入っていればMVPでしたよねぇ? 多分」
「あ、本体君もねむ子ちゃんもそう思う? お嬢様には悪いけど、あれはちょっと笑ったわ」
話題に上ったヘルシャの姿を捜すと、ワルターとカームさんに慰められていた。
残念ながら、慰められる度に益々機嫌が悪くなっていっているようだけど。
そしてキツネさんが自分が見えているであろう表示スコアをなぞりながら、俺に軽い調子で質問を投げかけてくる。
「この防御スコアっていうのは、詠唱したり攻撃したりしている味方への攻撃を防げばいいんだっけ?」
「イベント説明ではそうなってましたね。ワルターは武闘家なんで自己回復があるのと、ヘルシャがヘイトを引きまくっていたからMVPなんでしょう」
クラーケンの触手攻撃は、大きく分けて二つ。
全体攻撃の薙ぎ払いと単体攻撃の突きである。
ワルターはヘルシャへの攻撃に対して『硬気功』というスキルを使ってひたすら壁となっていた。
続けてシエスタちゃんが疑問を口にする。
「一番謎なのが、あの貢献スコアですけど」
「ヘイトを稼いだかどうか……が関係しているとは思うんだけど。確かに一番判断に困るスコアではある」
回避型軽戦士が持つ『分身』は現状、ゲーム内でも屈指のヘイト上昇値を誇るスキルだ。
現に先程の戦いでもトビが分身を出して走らせると、吸い寄せられるように触手の攻撃がそちらに向かっていった。
つまりデコイとして非常に有用なスキルなのである。
無論、相応にHP消費も高くWTも長いわけだが。
「後はアイテム使用かもな。あんにゃろう、後先考えずに苦無も焙烙玉も投げまくっていたし……大体、誰がその投げたアイテムを補充すると思ってんだ? あいつはちゃんと計画的に考えて使っているのか? サーラに居るわけじゃないんだから、手に入らない素材だって結構――」
「先輩、ストップストップ。愚痴っぽくなってますよー? やめないとハグしますよー?」
「あ、ごめ――んん? えっと……今のは聞かなかったことにするよ」
「えー」
えーじゃないよ。
面の下でキツネさんがニヤニヤと笑っている気配がするし、弄られるのは御免だ。
「つまり消費アイテム使用は攻撃スコアや支援スコアではなく、貢献スコアに入る可能性が高いと思う」
「なるほど。凶悪な投擲アイテムで攻撃MVP! ……ってのは無理ってことだね」
「そうなるでしょうね。本人が強くない限りは認めんということかと」
大体の分類外の活躍はこのスコアに加算されるということになる。
遊撃を行っているトビとしては、このスコアを多く取っているのは正しいことだろう。
ミツヨシさんの総合スコアの数値も、攻撃スコア+貢献スコアの合計と見て良い気がする。
「妨害は……デバフと状態異常だよね?」
「恐らく合っているかと。それと、闇魔法は攻撃系にも移動阻害や速度低下がおまけで付いてますんで。他の職でこれを取るのは相当難しいんじゃないですかね」
キツネさんの視線の先では、リィズが周囲の魔導士のプレイヤーと何やら話し込んでいた。
最低限の愛想しか振りまかないのがあいつらしいが……あ、魔導書が褒められている。
やっぱり格好いいよな、あれ。
リィズも満更では無さそうにしており、『ガーヤト・アル=ハキーム』を周囲に使って見せているようだ。
「先輩、何をニヤついているんです? しかし、そう聞くと妨害スコアはとんだ闇魔導士接待の項目ですねえ」
「でも、敵が高HPのレイドボスにはデバフが必須だしな……有ると無いとでは討伐時間が全然違うだろうし、こればっかりはな。逆に支援スコアはほぼ神官しか取れないだろうからさ」
「中途半端が弱いのは、どのゲームでも一緒だしねえ。ソロだとそうせざるを得ない場合もあるけど」
キツネさんの言う通り、どのスコアも特化している職の方が取り易い項目だろう。
なのでシエスタちゃんのようなバランス型の場合は……総合スコア以外を狙うのは、現実的に難しいと思われる。
「まぁ、私はスコアとか気にしないんで平気ですけど。スコアと言えば先輩、何にも引っ掛からなかったユーミル先輩が凄い勢いでこっちに来てますけど?」
「へ?」
ドタドタという足音と、何かを叫んでいるような声が段々と近付いてくる。
俺がそちらを向いた直後、シエスタちゃんとキツネさんは示し合わせたかのように俺からサッと距離を取った。
「――ぉぉぉぉおおお! ハインドぉぉぉおおお! どうすればいいのだ!? 私はどうすればいいのだ!? 同盟内でも負けているようでは絶対に勇者のオーラが取れないではないか! どうすればいいのか教えてくれぇぇぇ!!」
「ま、待て、落ち着――肩を揺らすな押すな止まれ! だああああ!?」
後衛支援隊が居た位置は、戦闘時と変わらずクラーケンから最も遠かった甲板の端である。
……そう、端っこなのだ。そこで押されたら一体どうなるか。
「あ、しまっ――は、ハインドォォォ!?」
俺は後ろ向きのままユーミルに海に落とされ、見事に溺れた。
別に金槌ではないのだが高所から、それも頭から海に落ちたのは初めてだからな……。
鼻や口に大量に海水が入ったが、俺は死にそうになりながらもどうにか甲板上にリポップした。
場所は変わって、現在は船の内部を移動中。
一休みしたら再びクラーケンを呼び出すとのことで、俺はユーミルと共にセレーネさんを呼びに砲撃管制室へと向かっていた。
「なにしてくれるんだよ、全く」
「すまん……返す言葉もない……」
キツネさんとシエスタちゃんに大笑いされたぞ。
管制室の扉を開くと、コンソールの前に座るセレーネさんが音に気が付いてこちらを見る。
「あ、二人とも。レイドはどうだった? 死に戻っちゃった人とか出なかった?」
「危ない場面もありましたけど、大丈夫でしたよ。セレーネさんの大砲、いいタイミングでクラーケンに当たってました」
「本当?」
「ああ。五連射で気持ちの良いダメージが出ていたぞ! ミッチーもセッちゃんを褒めていた!」
「そ、そうなの? ありがとう」
照れるセレーネさんに、一度甲板で休むことを提案して三人で来た道を引き返していく。
その途上、俺は気になっていたことを彼女に訊ねた。
「そういや、大砲が連射できたのはどうしてなんです? 最初の発射から、止めの五発までそれほど間がなかったように思えたんですけど」
「私も気になっていた! 大砲のWTはどこに行ったのだ?」
「ああ、あれね。実はこの船の大砲、左右の砲を移動できるようになってるんだよね。だから、左の砲を撃った後で右の砲を移動させて……」
「なるほど、得心しました。あの音は大砲が移動している音でしたか」
「気付いてたんだ? 戦闘中だったのに、相変わらずよく周囲に気を配っているね」
「そうなのか? 私は全く気付かなかったぞ!」
セレーネさんがユーミルの言葉にクスリと笑いながら小さく頷いた。
そこまで話したところで、ユーミルが思い出したようにあっと声を上げる。
「そうだハインド! 私の攻撃スコア対策は!?」
「あー、そういえばそんな話をしていたな。誰かさんに海に落とされたせいで、すっかり忘れてたぜ」
「ぐっ、リィズのような嫌味を……! と、とにかくだな! 何か手はないのか!?」
ユーミルに請われ、俺は考える。
どうもあのクラーケン、近接でダメージを稼ぐのは難しいよな……。
弱点は頭部、そして近接が攻撃し易いのは船に取り付いた触手とかなりの悪条件が揃っている。
正直、遠距離攻撃職の方が総ダメージランキング1位を獲るのは遥かに容易だろう。
「まあ、何かしらの策は考えるよ。だから少し待ってろ。今は我慢して出来ることをやるしかないな」
「絶対だぞ!? 絶対だからな!」
「はいはい、分かった分かった」
「ちゃんと真面目に考えているのか!?」
「二人のそういう気安い会話、時々羨ましく感じるかも……」
どの道、何かするにしても同盟の討伐ペースがある程度安定してからになると思う。
それまでは作戦を練るに留めておく必要があるだろうな。