挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

複合型レイドイベント

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

147/328

臨時同盟の集結

 しばらくすると、チーム分けをしてビーチバレー大会が始まった。
 ゲームらしく魔法あり、スキルありの無差別級マッチであるがこれが意外な盛り上がりを見せた。
 まずはエリア内を『訓練モード』に設定、集団演習を選択しアイテム消費無し、装備耐久値変動無し等の設定を行う。
 こうすることでアイテム扱いのビーチボールは、破壊されたとしても即座に修復される。
 ネットは無いので、棒を立てて紐で結んだ簡易なもので代用。
 使用できるMPは一試合につきステータス満タン一回分、回復は不可だ。

「ヘビースラァァァッシュ!」
「へぶぅぅぅ!?」

 全力でブロックに飛んだトビの顔面に、ユーミルのヘビースラッシュ(スパイク)が激しく突き刺さる。
 美しい放物線を描いて飛んでくるボールを、俺は低いレシーブで相手コートの隅を狙って打ち返した。
 タッチ数は残っているが、トビは仰向けで伸びたまま動かない。
 “凜”の魔導士の少女が走って飛びついたが、ボールはそのまま落下。

「あー! すみません!」
「一点くらい気にするな! 勝利は目の前だ!」

 得点はしたが、ユーミルの言う通り俺達の敗北は目前である。
 素手で攻撃スキルを発動可能な魔導士と前衛が有利で、神官・弓術士が非常に不利だ。
 トビが分身してダブルブロックしたりしているが、普通にパワー負けしている。
 そのまま勝負は続き、ついにマッチポイント。

「行きますよー? そーれ!」

 オーバーハンドサーブで打ち出されたサーブは、それほど威力がない。
 これなら俺でも打ち返せそうだ――ボールが火魔法で燃えていなければな!

「あっぢ! 無理無理!」
「あー! オワタ……」

 炎の勢いに腰が引けたせいか、ボールは真横方向へすっ飛んで行った。
 演習エリアの透明な壁にぶつかり、跳ね返って止まる。

「はーい、終了ー。勇者ちゃん・ゆかっぺペアの勝ちぃー!」
「よぉし! ナイスサーブだったぞ!」
「ユーミルさんも、ナイススパイクでした! やりましたね!」

 審判のキツネさんが勝者を宣言する。
 ユーミルはペアの女の子とハイタッチして喜んでいる。
 そして海に入ったりしつつ観戦していたギャラリーからは大歓声だ。

「負けたでござるー。まぁ、しかしここからは女子の艶姿を横からじっくりと――」
「盛り上がってるとこに水を差すようだがな。次の対戦、残念ながらどっちも男ペアだぞ」
「へ?」
「男四人。ふんどしとふんどしのぶつかり合い」
「……」

 魂の抜けたような姿になったトビの背を押してエリアの外に出ると、次の選手達が砂のコートに上に立つ。
 男女問わず、ふんどし軍団が向かい合う姿にゲラゲラと笑い声が聞こえてくる。
 そして砂を踏み散らしながら、汗臭い戦いが始まるのだった……。



 ゲーム内の時間も夕刻に差し掛かり、海が日中とは違った趣を滲ませ始めた頃。
 すっかり共用休憩所と化したパラソルの下に、キツネさんが伸びをしながら戻ってくる。

「あー、遊んだ遊んだ! これでイベントも連携はバッチリね!」
「だといいですね。連携と言えば、もう一組のギルドがまだ来てませんけど」
「んー? ギルマスの話だと、今日には到着するって連絡を受けてるって聞いたけど?」
「マジですか? ――あ、メール来てたの気付かなかった……」
「本体君ったらうっかりさん」
「あいつ怒るかな……? 今からでも返信しておくか」

 しかしメールの時間と出した時点での位置を考えると、もう到着していてもおかしくはない。
 まさか、俺達の様にPKに捕まっている? 彼女等の人数を考えたら、余裕で突破可能に思えるのだが……。

「ハインドさん、大きさはこの位で?」

 と、そこで思考はリィズが見せてきた玉葱によって遮られた。
 輪切りか……半月でもいいけど、こちらの方が崩れにくいからこれはこれで。

「ああ、大丈夫。そしたらどんどん具材を串に刺していってくれ」
「ところで、二人はさっきから何をしてんの? お腹空いたの?」

 キツネさんの問いに、俺は牛肉・ピーマン・玉葱のついた串を掲げてみせる。
 満腹度が減っているというのも、あながち間違いではないが。

「皆で食べるバーベキューの準備です。ほら、今そっちでセレーネさんが炭火を起こして――」
「バーベキュー!? BBQ!?」
「あ、はい。B――バーベキューですけど……」

 念押しの確認を終えたキツネさんは、満面の笑みを浮かべて踵を返すと砂浜に向かって駆けだしていった。
 遠くから「みんなー! バーベキュー!」と叫んでいるのが聞こえてくる。
 呼びに行く手間が省けたが、その後で簡易テーブルを囲んで行われた「B・B・Q!」のコールが最高に鬱陶しかった。

 その後で行われたバーベキューは、俺に料理部での活動を思い起こさせる惨状だった。
 現実での空腹とは違うので、気分の問題だろうが……運動後ということで食が進む進む。

「もごももも、ももっも!」
「拙者の肉がっ!? ユーミル殿ぉ!」
「意地汚いですよ。まだ食材はあるんですから、がっつかない」
「美味しそうに食べる健康的な女子……イイ!」
「「「うんうん」」」

 ユーミルが肉を食い散らかし、それが良いのだと主張する盲目的な男性陣。
 焼くための網は全部で三つ用意したので、その中の一つの管理はリィズに任せた。
 こちらには高校生から上のメンバーを固めてある。

「アハハハハハ! 本体君、飲んでるぅ?」
「飲んでないです。未成年なので――うわっ、酒くさっ! ユキモリさぁん! ヘルプっ!」
「すまん、ハインド! おら、キツネ! こっち来て水を飲め!」
「えー。ユッキーも飲もうよぉ。ってか飲め? な?」
「飲まん! この酔っ払いが!」

 キツネさんはいつの間にか持ち込んでいた酒で疑似的な酔っ払いに。
 口元だけ面をずらして、器用に飲み食いしている。
 どうやら成人組の半数は酒を飲んでいる模様。
 セレーネさんも後から合流した大人たちから酒を飲まないかとしつこく勧められている。
 彼女自ら「こっちは任せて」と言ってくれたので、飲酒組の網はセレーネさんの担当。
 セレーネさんなりに状況に適応しようと頑張っているのが感じられて、俺としては非常に嬉しい申し出だった。

「先輩、もっと肉を下せえ。んぐんぐ」
「はいはい。リコリスちゃんは?」
「私も欲しいです! にくぅー!」
「サイネリアちゃんも遠慮すんな。ほいほい、これ焼けてる」
「あ、ありがとうございます!」
「みんなも、あっちの様子は気にせずどんどん食べてくれ」
「「「はーい!」」」

 そういった経緯でヒナ鳥ら中学生組と“凜”の若年層は飲酒組から早目に隔離した。
 こちらは俺の担当で、みんな総じて良い子なので実に平和である。
 パチパチと炭が鳴り、肉や野菜が焼ける香ばしい匂いと共に煙がモクモクと夜空に昇っていく。

「夜に大量に食べても太らないのって、やっぱり最高じゃありませんか?」
「リコリスちゃん、プリンの時にも似たようなことを言ってたよね? ま、確かに必要のない夜食を食べそうになったら、インして食べれば気は紛れるかな」
「でも、沢山食べてログアウトした時に感じる空腹感……ギャップが辛いよね」

 “凜”の女の子からこんな意見が飛んでくる。
 気分だけで、本当に空腹感が収まるわけではないからな。
 過度なダイエットや拒食症の引き金にならないよう、細心の注意を払った調整がされているそうだから。
 それに対して仲間の少年から「だから太るんだよ」などという心無い発言も出たり。
 少年よ、この子はきっと美人になるぞ……少しぽっちゃりしてるけど、目はパッチリで鼻梁が整っている。
 成長期に急に化ける子って居るよね? 今から優しくしとかないと勿体ないぞ。

「そういう時は温かい汁物がおすすめかな。どうしてもご飯が食べたいときはお茶漬けにするといいよ」
「おー! 今度やってみます!」
「先輩、甘い物が食べたくなったら?」
「んー……ヨーグルトとか、豆乳クッキーとかが妥協できる範囲じゃない?」
「豆乳クッキー?」
「大豆は低脂肪高タンパクだから特におすすめ。基本的にはお腹を温める、低カロリー、そして取るなら野菜かタンパク質ってのを抑えておけば大丈夫なはず。避けるのは糖分・油分・冷たい物かな。もちろん、夜遅くに食べずに済むならそれに越したことはないけど」

 小さな子達が多いので、この程度の知識でも素直にへーと感心してくれる。
 負担が低いので、セレーネさん担当の飲酒ゾーンが大変そうなら俺がフォローに入らなければ。

 そしてその食事の途上、町の方から謎の一団の影がこの場に迫ってきた。
 何だ? 釣り人の集団――のわけがないな。

「人数が多いな。ここは安全エリアだし、まさかPKってことはないよな?」
「なんだか、やけに黒っぽい服の人達ですけど……」
「でもサイちゃん、先頭の人だけ真っ赤じゃない?」

 黒服……先頭に立つ赤い服装……。
 まさかとは思ったが、その思いは集団が近付くにつれて確信へと変わった。
 鮮やかな赤いドレスを身に纏った金髪の少女が、執事とメイドの集団を引き連れて砂浜に登場。

「ギルド・シリウス、只今参上! ……ですわ! オーッホッホッホッホ!」
「おっす、ヘルシャ」
「「「おーっす」」」
「どえらい普通の反応ですわ!? お、おっす……」

 ミツヨシさんの所に行った後、ここに大多数のメンバーが居ると聞いて挨拶に来たようだ。
 派手な見た目に似合わず、マメで律儀なやつである。
 その後はリアルでの用事が済んだというミツヨシさんも合流し、シリウスのメンバーも含めて交流会のような形となった。
 こうして今回のイベントで臨時同盟を組むギルドが、全て現地に揃ったということになる。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ