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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アイテムコンテストとギルドの発展

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結果発表前日

「うあー……だるい……」
「わっちが燃え尽きてる……珍しい」

 学校の休み時間、俺は机に突っ伏して動けなくなっていた。
 授業が始まったら起きなければならないので、今の内に気力を充填しておかなければ。
 故に、休み時間になるなり寄ってきた秀平の相手はあまり出来そうもない。
 だから脇腹をつつくんじゃねえよ。報復する元気は無いぞ。

「おーっす、亘。辞書ありが――どしたん? 机に突っ伏して。珍しい」

 その声は健治か? 顔を上げる気になれないが、どうやら貸していた辞書を返しに来たようだ。
 手だけ出して応えると、辞書の重みがのしかかってくる。
 適当に引き出しに突っ込んだ後、また手を元の位置に戻した。

「……悪い健治。情けないことに、ゲームのやり過ぎでこのザマだよ……」
「は? お前が? ゲームで? こっちの馬鹿じゃあるまいし、今日は矢でも降ってくんのか!?」
「健治てめえ!」

 俺の机の周辺でバタバタと取っ組み合う振動が伝わってくる。
 やめろ……やめてくれ……なんか酔いそうだから……うぷ……。



「ほう、イベントの締め切りに間に合わせるためにねぇ……」
「他のギルメンのフォローに奔走してたわっちは、無事許容量オーバー。自分の分がカツカツで、昨夜は遅くまで残ってたみたい」
「VRとはいえ、細かい作業を長時間やると結構来るもんだな……明日が休みで良かった。一日だけなら、どうにかこの状態でも乗り切れそうだ……」

 体というよりも神経が疲れているような感じがするのだ。
 どうにか起き上がったが、気怠くて動き回る気力が湧いてこない。
 ゲームという娯楽でこんな状態になるのは論外だと思うんだけど……今日は駄目そうだ。
 何だかんだで俺もしっかりハマってるなあ、TBに。

「しかし、授業中は起きていようとするだけ秀平とは全然違うな」
「何で一々俺を引き合いに出すわけ? 健治は」
「だって去年同じクラスだった時お前さ、授業中に寝て休み時間は元気だったじゃん。同じ理由でも、対処の差がひでえと思って」
「……うん、まあ」

 秀平が気まずそうに視線を逸らす。
 昨夜の内に出品物はどうにか形になり、どうにか期限内に間に合わせることに成功した。
 他のメンバーの物も同様である。
 これで明日が女王様による審査の結果発表となり、翌日から出品物のオークションが開かれる予定らしい。

「ところで健治はやらないの? トレイルブレイザー」
「俺はFPSしかやんねえって。TBが人気あるのは知ってるし、VRX3500も持ってるけどな」
「ですよねー。そういや健治ってばミリオタなのに、何でわっちと同じ料理部なの?」
「……健治、本当はサバイバル料理みたいなの作りたいんだもんな。山岳部とかがあったら、そっちに入ってたんじゃないのか?」
「違いない。あーでも、味付けや調理法なんかは応用が利かないこともないし料理部も悪くないぞ?」

 多数を占める女子部員が原因で、甘い物の方が割合的に多いけどな。
 そんな中でサバイバル料理なんて提案したら……非難轟々だろう。
 ただ男子運動部からの要望もあるので、しっかりした物もそれなりに作ってはいる。
 この前のピロシキなんかがその一例だ。揚げ物系は男子に評判がいい。
 そんな話をしているとチャイムが鳴った。

「っと、やばいやばい。じゃあな、亘。残りの授業は三つだ、頑張れ」
「俺も席に戻るよ、わっち」
「おう……」

 俺はシエスタちゃんのようなのっそりとした動きで教科書を取り出した。



 そして昼休み。
 どうにか授業を乗り切った俺は、いつも通りに未祐・秀平の三人と一緒に中庭で弁当を広げた。
 温かな正午過ぎの日差しに、怠さが更に増していく。

「わ、亘、大丈夫か? 目が閉じかけているぞ!?」
「眠い」
「わっち、今日はコーヒーにしたら? カフェインでどうにか乗り切ろうぜ、次数学だし。買ってこようか?」
「すまん、頼む。ブラックな」
「うぃ」

 秀平が俺から小銭を受け取り、自販機に向かって歩いていく。
 ヒナ鳥の三人のように、誰かと共作で出せば良かったと絶賛後悔中である。
 みんな得意分野がバラバラで、折角だから一人一品と思って突っ走ったがちと無理があったな……。
 今日は帰って家事を済ませたら、とっとと寝ることにしよう。

「亘、そういえば私もTBの掲示板を覗いてみたのだが」
「んあ? 珍しいな。何か面白い書き込みはあったか?」
「コンテストの分野によっては、その手のプロらしき職人が出品しているそうだぞ。あ、この場合の職人というのは現実の方での話だからな?」
「……あー」

 未祐の話によると医者・薬剤師から始まりリアル刀鍛冶、未祐のライバルとなそうな花屋や農家、俺の場合に障害となる衣料品関係者や果てはファッションデザイナー等々。
 もちろん自分の職業を隠している人も多いだろうし、ゲームなら現実と全く関係ない分野を楽しんでいる人も居るだろうけれど……。
 SNSなどと連動させ、堂々と身元を明かしている人間も少なからず居る。
 そういったプロが多数参戦していることから、掲示板では対極的な反応が見られたのだそうな。

「片方はゲームなんだから現実通りにはいくまい、という楽天的な反応だな。システム上で省略されている部分もあるし、素材も現実通りじゃないんだからプロとか関係ないだろ――といった具合に」
「うん、そうだな。もう片方は?」
「VRなんだから技術がある方が有利に決まっている。上位もそいつらが独占するだろう、と悲観とひがみが混ざったマイナス意見だな」
「……なるほどね。そういうプロっぽい連中を、アマチュアがどこまで崩せるかに注目が集まってるのか。でもさ、結局闘技大会も剣道経験者とか格闘技経験者は程々だったよな? 似たような話をしてたけど」

「出品物カタログなんかも、公式で徐々にアップされ始めてるよー。それを見ながらあーだこーだ言うのが今の掲示板の流れみたいだね」

 飲み物を持って秀平が戻ってきた。
 缶コーヒーを俺に手渡すと、スマホを操作して画面を表示して見せてくる。
 表示の早さからして、ページをブックマーク済みらしい。

「かなりしっかりした作りだけど、これをそのままスライドさせんのかね? オークションカタログに」
「じゃない? 出品を希望しない奴を除いてさ」
「この孫の手というのは何に使うのだ?」
「背中を掻く――んじゃなさそうだな。カテゴリは武器だし」

 分類は杖のようだ。
 こういったユニークな見た目の装備も数多く、見ているだけで楽しい気分になってくる。
 俺が秀平のスマホを持ち、二人が両側から覗き込む体勢。

「しかし、この孫の手は強いのか?」
「まあ、こういう武器の方がRPGでは強かったりするし。ねえ? わっち」
「槍の代わりにデッキブラシとか? あー、あとフライパンが武器だったり」
「そうそう!」
「あるようだな、カタログにどちらも。武器扱いで」
「「マジで!?」」

 普通に進めると手に入らない隠し武器の場合は、そういうのが本当に強かったりする。
 カタログに載っているこれらの装備の能力がどうなのかは、記載が無いので分からないが。
 装備の数値はオークションに出品する際に記載されると下部に但し書きがある。

「防具も中々のカオスっぷりだな。キグルミが多い……」
「アルベルトなりきりセット……欲しい!」
「それはお前だけだろう。私はいらん」
「よく見るとこれもキグルミじゃないか? 筋肉が絵で描き込んであるぞ」

 ジョークグッズの類だな、こりゃ。
 俺が出したのも、服ではあるが防具のカテゴリだ。
 一通り見た後で分類をアイテムに切り替えると、これまたキワモノ揃いだというのが一目で分かる。

「笑いキノコ……って、食べたら笑いが止まらなくなるんじゃなくて――」
「キノコ自身が笑っているようだな。キノコに口が付いていてキモいぞ」
「未祐っちとわっちが合成した植物のいくつかも、人のことは言えない出来だったけどね……」

 まあ、植物合成に関しては結局法則がさっぱり分からなかったからな……。
 こうやって何が出てきても不思議じゃないというか。
 ホームに飾る用のぬいぐるみなどもあり、キモいのから可愛いもの、キモカワイイものまで実に多種多様である。

 そのまま俺達はカタログにツッコミを入れつつ、三人でゆっくりと昼食を取った。
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