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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アイテムコンテストとギルドの発展

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二度目の相槌(向槌)と二振りの武器

 鉄塊に向けて交互にハンマーを振り下ろす。
 鍛冶場には熱気が立ち込め、対面には集中した表情のセレーネさん。
 ハンマーが鳴らす音が周囲に響く。

 鉄の状態を良く見て、適切な場所を叩く。
 もちろん、それも大事だ。
 だが一番は目の前の彼女が何を望んでいるのか、手が足りない部分は何処なのかを見逃さないこと。
 鉄と対話しているのはあくまで彼女であって、自分はその手助けをしているに過ぎない。

 眼鏡の奥の視線が動く。
 そこに向けて槌を振り下ろす。火花が散る。
 互いに言葉は無く、ただ槌を一心に振るうのみである。

「――っ、えほっ、げほっ!」

 何故か呼吸まで止めてこちらに見入っていたトビがむせる。
 が、ここで集中を乱すわけにはいかない。
 意識して視界の外へ追い出し、徐々に形を成していく鉄に集中する。
 そんな作業を繰り返し、そして――。

「出来た……!」
「ふーっ……」

 セレーネさんの宣言に、俺は大きく息を吐いた。
 緊張が解け、達成感と疲労感が同時に押し寄せてくる。
 その表情を見れば、会心の出来であることが一目で分かった。
 鉄塊から作り上げた、どっしりとした存在感を放つ大剣が俺達の前に鎮座している。

「ふへぇー……」
「いやいや、トビ。一緒になって力み過ぎだから」
「場の空気に当てられたのでござるよ……」

 トビが力を抜いて椅子の上でダレる。
 道具を置いたセレーネさんが俺に手を差し出してきたので、それをしっかりと握り返す。
 互いに表情は晴れやかだった。笑顔を交わし合う。

「お疲れ様、ハインド君! トビ君も、お手伝いありがとう!」
「セレーネさんも、お疲れ様でした」
「お疲れ様でござる! うーん、良いものを見た感……実に楽しかった」

 セレーネさんは既に大剣の仕上げに掛かっている。
 後は細かい部分と磨き上げの作業で、彼女が最も好きだと公言している工程だ。
 俺とトビは先に使い終えた道具の片付けへ向かう。

 しかし、緊張で体が固まったような気がする……ゲームなのになあ。
 適当に肩を回しながら動いていると、ふと先に完成していた大斧が目に入る。
 フィリアちゃんと一緒に作った湿布を貼ろうかな、と一瞬考えてしまう。
 勿体ないからやらないけれど。

 片付けが終わった後は、トビと共にセレーネさんの仕上げの補助だ。
 というのもこのグレートソード、やはり重さが尋常でなく裏面に引っ繰り返すだけでも一苦労である。
 トビと俺で剣を支え、手の感覚が怪しくなってきた頃にようやく全作業が終了した。

「火の調整に手間取った分、今夜は少し遅くなっちゃったね。二人は時間、大丈夫?」
「拙者は大丈夫でござるよ。夜更かしは日常茶飯事なので!」
「そんなんで胸張ってんじゃねえ! ちゃんと寝ろよ! 全く……。俺の方は理――リィズがちょっと怒るくらいですかね。もう先に寝てるかな?」

 そういった具合で、依頼されたアルベルト親子の武器が完成を迎えた。
 これで残るは、本人達への引き渡しを残すのみということになる。
 受け取った際の二人の反応が気になるところだ。



 翌日、アルベルトとフィリアちゃんがギルドホームに武器を受領しに来た。
 受領後に二人はサーラを去るということで、こちらも全員揃っての出迎となる。
 場所は鍛冶場で、テーブルの上には重量感ある鈍い輝きを放つ大型武器が二つ。

「私とハインド君がメインで、助手にトビ君を迎えて作製しました。どうぞお受け取り下さい」
「感謝する! 今日という日を楽しみに待っていたぞ」
「ありがとう……」

 まずはフィリアちゃんが、属性石を二つ付けた大斧をセレーネさんから受け取って構える。
 角度を変え、握りを変えて感触を確かめた後……。

「試しても、良い?」
「そう言うと思った。地下に訓練場があるからそっちで頼むよ。アルベルトさんも、行きましょう」

 予想通りの言葉に、二人を地下へと促す。
 そこならどれだけ暴れても問題ない。
 なのでトビと一緒に持ち上げた大剣をアルベルトにも渡そうとしたのだが――手を上げて止めてくる。
 どうした?

「すまないが、地下までお前達が持って行ってくれるか? 手の震えが止まらん」
「え?」
「兄貴……?」

 よく見ると、俺達を押しとどめるために上げた右手が震えている。
 左手で覆った下から僅かに見える口元は緩んでいて、俺達が見たことのない表情をしているのが容易に察せられた。
 まるで待ち望んだプレゼントを前にした子供のような反応だ……。
 俺とトビは頷き合うと、手袋を嵌めた手で大剣を持ち上げ直すために力を込める。

「先に行くぞ、お前達!」
「ああ、先導頼む! ――せーのっ! ぬおおっ……昨日もそうだったけど神官と軽戦士だから重い、重いぞ……」
「し、仕方ないでござる。これも兄貴のため……何やら喜んでいるようでござるし、ここは我慢でござる……」
「女性陣に持たせる訳にもいかんしな……くっ……」

 地下に向かう最後尾についたトビと共に、前に聞こえないようにひそひそとささやき合う。
 渡り鳥の中で物理攻撃力が高いのは一位がユーミル・二位がセレーネさんだが、その二人に持たせて俺達が持たないのは罪悪感が……。
 更に補正だけでなく現実での地の筋力も必要なので、どちらにしても苦労はどっこいどっこいということに。
 なので必然的に「それなら俺達が」という感じにはなる。
 ちなみにトビが柄の方、俺が刃の方を持っているので緊張感もひとしおだ。

「あ、もう始めてるでござる!」
「うわぁ、燃えてる燃えてる。属性武器は見た目が派手だな」

 訓練場に入ると炎を巻き上げながら、案山子に向かって小さな少女が背丈ほどもある大斧を振り回していた。
 一通りの型で斧を動かし終えると、体を捻って力を溜めた状態で一度静止する。
 あの構えは、ピラミッドで見せた……!
 直後、フィリアちゃんが勢い良く回転を始め『トルネードスウィング』を発動。
 燃え盛る竜巻と化すと、案山子を切り裂きながら焼き尽くしていく。
 表示されるダメージは属性攻撃分も伴ってかなりのものだ。
 案山子の防御力は0に設定されてはいるのだが、それを考慮しても前の武器とは雲泥の差である。

 斧を振り切った体勢でピタッと止まったフィリアちゃんは、大斧を背負ってこちらに向けて無言で親指を立てた。
 無表情ではあるが、その動きは「大満足!」と俺達に示しているような感じがした。

「よし。次は俺が行こう」

 アルベルトがそう言うと、ようやく俺達の手からグレートソードを受け取ってで肩に担ぎ上げる。
 そのままフィリアちゃんと入れ替わるように案山子の前に進み出ると、空いていた手を柄に沿えて足を踏み出す。
 ズドッ! という床にヒビが入るのではないかという踏み足の音の直後、目を見張るような速度でグレートソードが振るわれた。
 万近い大ダメージの表示が出たので恐らく振った、のだと思うのだが……。
 思わず俺は呆然とこう問い掛けた。

「い、今の見えたか?」

 全員が一斉に首を横に振る。
 当のアルベルトは自分の手の平を驚いたように見た後で、ギュッと握り締めた。
 肉食獣のような笑みを浮かべ、再び剣を握り直すと突風が発生。
 五桁のダメージ表示が踊り狂い、案山子が地面に付きそうなほど右に左に薙ぎ払われる。
 聞こえてくるのはダンッ、ダンッ、という激しい足音と風切り音。
 それからこの不気味な笑い声である。

「――ふ、はははははっ! これだっ、そうだ! これを待っていた! 求めていたっ! ははははははははっ! もっと、もっとだ! もっと速くっ! まだ先にぃっ!」

 狂ったように笑いながら案山子を斬り付けまくるアルベルトを見て、ユーミルが思わず後ずさる。

「こわっ! ふぃ、フィリア、あれは大丈夫なのか?」
「お父さん……楽しそう……」
「え、アレをそういう感想で済ませてしまうのですか!?」

 リィズが思わず突っ込みを入れてしまうレベルにはおかしい。

「フィリアちゃん、止められないの……?」
「無理。ああなったら、落ち着くまで放っておくしかない」
「喜んでもらえてはいるようだけど、何だこれ……」
「兄貴カッケー! うひょぉぉぉぉっ!」

 あの狂騒を見てそう評するトビを、俺とユーミルとリィズは白い目で見た。
 どんだけ盲目的なんだよお前は……。
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