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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~  作者: 二階堂風都
アイテムコンテストとギルドの発展

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ピラミッド探索その1 アルベルト無双

 翌日、俺達はピラミッドの入口前に立っていた。

 メニュー画面には現在地『ナール王のピラミッド』と表示されている。

 ヤービルガ砂漠に複数ある点在するピラミッドの内の一つで、ここが最も敵モンスターのレベルが低かった。

 前にリィズが偵察に一回だけ入ったピラミッドでもある。

 低いといっても敵モンスターのレベルは50から、現在のレベルキャップは40なので本来ならまだ踏み入るべき場所ではないのかもしれないが。


 メンバーは渡り鳥からは俺、セレーネさん、リィズの三人。

 それと今回は時間を俺達に合わせてくれたアルベルト親子が同行する。

 トビ……もとい秀平は昨夜の課題の出来が悪かったらしく、再提出に向けて今夜は家で勉強中。

 未祐は父親の章文おじさんと外食に行くそうで、今日はTBにログインしない。

 本当はくじかジャンケンでもして探索に行くメンバーを決める予定だったのだが。

 二人とも残念がっていたが、これで都合よく五人パーティが出来上がる形となった。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「悪いものばかりじゃなくて、お宝が眠っているといいんだけど……」

「中の広さはどうなんだ? 一応、俺達はサブの武器として短剣なども所持してはいるが」


 アルベルトの疑問に関してはリィズが知っている。

 なので俺は視線を傍に立つ妹へと送った。


「内部は必要以上に広かったので、アルベルトさんが大剣を振り回しても問題ないかと」


 リィズの話によると、見た目に反して中は非常に広かったのだそうだ。

 灯りも壁に等間隔で設置されており、探索に不便はないとのこと。

 ゲームならではの設定というか、現実通りにしても意味はないというはっちゃけ具合というか。


「ならば問題ないな。移動時は俺が先頭、最後尾にフィリアを配置する。戦闘時は前に。俺達はどちらも重戦士だ、存分に盾として使ってくれ」

「おおー、頼もしい。そのまま全体の指示出しをお願いしても?」

「それはお前がやれ、ハインド。俺もフィリアもお前の指示に従う」

「……うん。従う」

「あれ?」


 やってくれないのか……。

 しかし見るからに高難度ダンジョンのここに来たのは、彼等の戦闘力を当てにしてのことである。

 特にアルベルトの兄貴が居れば、10のレベル差くらいなら何とかなるのではないか? と期待を寄せている。

 得たアイテムがもし素材系ならそのまま剣と斧に使用、余った分は俺達が頂く。

 それ以外なら適当に山分けするという事前の取り決めだ。


「……じゃあ、行きましょうか」


 俺の号令に全員が頷き、狭い入り口を一列になって通っていく。

 しかし今回も俺が指揮官役をやらなきゃならんのか……。

 兄貴が居るから、楽できると思ったんだけどな。




 中はリィズが言った通り、俺がイメージするピラミッド内部とは違っていた。

 というより、知識の中にある現実のピラミッドとも大きく違う。

 地下構造は無く上に向かって階段を登っていくダンジョンのようで、このタイプの物だと頂上に何かがあるというのが定番ではないだろうか?

 そして最初に出現したモンスターもこれまた定番の動き回るミイラだった。

 それを見たリィズが声を上げながら俺の腕に縋りついてくる。


「きゃー怖いですハインドさんー」

「すっごい棒読みだよリィズちゃん!? くっつきたいだけなのが見え見えだよ!」

「大体リィズは二度目だろう、このモンスターを見るの……」

「フンッ!」


 緊張感の無い俺達を尻目にアルベルトが剣を一閃、敵の体力が極僅かに残ったところをフィリアちゃんが大斧で潰し切った。

 レベル差など関係無いと言わんばかりの二人の攻撃力である。

 この親子強いわー……知ってたけど。


「群れで襲われなければ問題なさそうだ。ハインド、ユーミルのように俺達も防御を気にせず突っ込んで構わんか?」

「あ、はい。もちろんです。回復はお任せを」

「……」

「フィリアちゃんも、支援が欲しい時は遠慮なく言ってくれ。バフは一通り習得してあるし、状態異常も回復できるから」

「……ありがとう」


 ユーミルを対象にした時のようなノータイムでの蘇生は無理だが、闘技大会で見た限りこの二人は押し引きがはっきりしているので、もし戦闘不能になったとしてもかなり合わせやすい部類だ。

 こちら側のメンバーは全員が後衛なので、それほど連携が取り辛いということもないし。

 その後で数戦したのだが、アルベルトとフィリアはこちらの動きを見てセレーネさんとリィズの射線を確保する動きすら見せ始める。

 傭兵を名乗るだけあって、さすがの適応力と言うべきだろう。

 即席パーティにしては良い連携に仕上がってきている。


「ぜぁっ!」

「おおー……」

「はぁぁぁぁぁっ!」

「わあ……」


 ……なのだが、先程からほとんど俺達の出番がない。

 途中からアルベルトは最も多く出現するミイラ男の弱点を見つけたようで、敵が複数で来ない限りは俺達が攻撃する前に戦闘が終わってしまう。


 五階に到達した時点でピラミッドの出現モンスターはミイラ男に加えて宝箱に擬態したミミック、ウィル・オ・ウィスプ等、いわゆるアンデット系のものが多く生息……生息? している。

 生きているのかどうか微妙な連中だが。

 それらは階層を登る毎にレベルがじわじわと上がり、九階に到達する頃にはモンスターのレベルが遂に55にまで到達した。

 ちなみに道中にある宝箱に関してだが、ミミックかどうかどうやって識別しているかというと……


「――むっ!」


 単純明快、アルベルトによる漢識別である。

 今触れた目の前の宝箱はミミックだったらしく、その逞しい腕に鋭い歯を立てて思い切り噛み付いている。


「ぬぅん!」


 アルベルトが近場の壁に噛まれた腕ごとミミックを叩きつけ、そのまま戦闘開始。

 だが俺がアルベルトに回復魔法を使い終わるころには、一斉攻撃によってミミックは粉々になっていた。

 兄貴の壁への叩きつけで既に瀕死だったしな……どえらいパワーですよ、本当。


 本来なら軽戦士のバランス型が識別系のスキルを保有しているのだが、生憎このパーティに軽戦士は存在しない。

 なのでこのように、最もHPの高いアルベルトが罠等を気にせず開けるという強引な方法を採っている。

 状態異常やダメージを受けても神官おれが居るので。


 そして戦闘後でも息一つ上がっていない彼は、大剣を収めると悠然と歩みを再開した。

 俺達はその背中を追ってぞろぞろとついていく。


「しかし、兄貴が先頭でグイグイ進んでくれるから攻略が早い早い。ただでさえ半端なく強いのに」

「本当ですね。ユーミルさんやトビさんだと、罠の度にギャーギャー騒いで直ぐに止まってしまうでしょうから。弱くはないのですけど」

「えと、この階段を登ると十階……かな? このピラミッド、本当に外観と中身の大きさが一致していないね」


 そういえば闘技場も同じだったな。

 どちらも外見と中身を一致させると尋常じゃない巨大建築物になってしまうからな。

 景観だったり移動の邪魔にならないようにだったり、色々と都合はあるのだろうけど。

 と、そこで急に先頭を行く大男が、こちらを振り返りつつ立ち止まった。


「……ハインド」

「どうしました?」

「どうやら十階は安全エリアのようだ。ここで一度休憩にしよう」


 アルベルトの大きな背中越しに階段の先を見ると、壁の一部が崩れて日光が差し込む静謐な一室がそこにはあった。

 次の階段も直ぐ近くの見える範囲にあり、部屋に入ると安全エリアであることを示す緑色の光が足元から浮かぶ。

 俺達は武器をしまうと、一息ついてその部屋の適当な場所へと座り込んだ。




 今日のゲーム内の食事メニューは「羊肉のカツサンド」である。

 探索ということで食べやすくカットしたものを全員に配り、早速一口――


「ハインド。おかわり」

「食べるのはやっ! ――と、ごめんごめん。ちょっと待って」

「ソースが絶妙」


 フィリアちゃんに遮られ、一度自分の分を置いて籠の中を漁る。

 多めに作ってきて良かった……。

 バスケットの中からカツサンドを取り出し、フィリアちゃんの小さな手の上に載せる。

 彼女は礼を言ってセレーネさんとリィズの近くに戻ると、両手でカツサンドを持ってかぶりついた。

 それを何とはなしに見ていると、アルベルトが俺の傍に歩み寄って来る。


「すまん、ハインド」

「いえいえ。フィリアちゃんは戦闘で頑張ってくれたので」


 今のところ、アルベルト親子のおかげで戦闘は非常に安定している。

 この上の階がどうなっているかは分からないが、レベル差20くらいまでならひょっとしたら行けてしまうかもしれない。

 無理そうならさっさと撤退する予定だが。


「今日のフィリアは普段よりも楽しそうだ。――考えてみれば、ダンジョン探索するのは初めてだからな」

「……普段より楽しそうなんですか? あれで?」


 傍目には違いがまっっったく見受けられないんだが。

 身内なら分かるのだろうか? 少なくとも俺には、会った時から変わらず同じ無表情としか思えない。


「俺と同様、愛想のない娘だが仲良くしてやってくれ。お前達との交流なら、俺としても安心だ」

「は、はあ」


 どういう判断基準でアルベルトがそう言ったのかは分からないが……。

 それなら折を見て、フィリアちゃんにもフレンド登録を持ちかけてみようかな。

 そこでようやく自分の分のカツサンドにありつくと、噛んだ味と共に僅かに疲れが取れるような感覚に包まれた。

 うん、美味い。

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