理世の看病とイベント後の掲示板 後編
80:名無しの騎士 ID:cbftCTi
あ、予告きてた……って次マジで対人イベントかよ
対人イベント面白くないねん
決勝付近になると、いつも同じ面子になるし
81:名無しの重戦士 ID:CRXeSTB
(俺は参加できないし)
82:名無しの騎士 ID:cbftCTi
そうだよ! 悪かったな弱くて!
83:名無しの弓術士 ID:gbZ4yBi
おじさんの体力で若人たちの相手はちょっとネ
84:名無しの武闘家 ID:KzdSRyL
いやいや
子持ちおじさんのアルベルトを見習え
あの人、少なく見積もっても三十後半は越えているだろ
85:名無しの魔導士 ID:Kg4Lfes
やはり筋肉……
86:名無しの神官 ID:sp87VUz
筋肉は全てを解決する!
87:名無しの重戦士 ID:CRXeSTB
と、後衛職たちが申しております
88:名無しの軽戦士 ID:emKJ6Fs
意味ねえ!
89:名無しの騎士 ID:wrP3w8a
魔法とか弓なら体力差を埋めやすいぞ
足りないところは人生経験で補え、おじさんズよ
90:名無しの魔導士 ID:NakuQ8i
すまねえ
俺の人生には戦いに役立つような経験はなにも……
91:名無しの軽戦士 ID:BVPESJe
普通はないよねぇ
格闘技経験者とかならいいの?
92:名無しの騎士 ID:6UufP4h
いや、ゲームの知識と経験でいいんだよ
やってきただろ?
若いころからゲームなら
93:名無しの弓術士 ID:2zmkZ7L
な、なぜゲームばかりしながら生きてきたことがバレて……
94:名無しの軽戦士 ID:J9wLhdS
そら、TBがゲームデビュー作って人は
多くないだろうけどねぇ
95:名無しの弓術士 ID:BCnubYQ
プロゲーマーの世界だって若さが全てじゃないぞ
知っているか?
世の中にはシニアだけで構成されたプロゲーマーの
チームもあるくらいだ
ま、若くて技術もあるのが一番強いんですけどね!
96:名無しの神官 ID:sp87VUz
途中まで「へー」とか言いながら読んでいたのに
最後の一行で台無しなんじゃが?
97:名無しの神官 ID:8F2nHi8
某レジェンドプロ格ゲーマーだっていい歳だし、
へーきへーき
98:名無しの重戦士 ID:CRXeSTB
その人は元気に若手をしばき倒している妖怪だから
99:名無しの魔導士 ID:sNBaZRS
あんまりプロプロ言わないでくれるか?
昨今のTB情勢を思い出して悲しくなるから
100:名無しの武闘家 ID:kMkPEeu
レイドの話かぁ
見事にランキング蹂躙されたよねぇ
101:名無しの重戦士 ID:26Gsx89
あーあ、せめて勇者ちゃんが勝っていればなぁ
ああ、勝っていればなぁ!(他力本願)
102:名無しの弓術士 ID:ZkXzdef
情けない話だけど、みんなそれは思ったんじゃないかな
103:名無しの武闘家 ID:Va2gesR
若人よ、おぢさんたちの分まで頑張ってくれ
プロに負けるな……我々には体力も時間も足りぬ……
104:名無しの軽戦士 ID:GuzuamW
セゲムだって若手プロじゃないか
それと年齢を言い訳にするんじゃありません!
105:名無しの武闘家 ID:Va2gesR
はい! すみません! 筋トレしてきます!
106:名無しの武闘家 ID:bLdpbCM
素直か
107:名無しの軽戦士 ID:4n3xs2p
こういう人はまだまだ大丈夫だよ、おじさんでも
筋トレがんばって
108:名無しの魔導士 ID:cppGV8R
しかし、決して競技性が高いわけじゃないMMOで
プロに蹴散らされるとは思わなかったよね……
109:名無しの弓術士 ID:2cmn3Bh
うーん、なんかやだなぁ
こういうタイプのゲームでトップにプロがいるの
110:名無しの軽戦士 ID:MXp6mZZ
自分は気にならんが
動画サイトなんかの配信需要もあって、
プロゲーマーも手広くなったもんだよ
111:名無しの軽戦士 ID:HJuSPti
プロゲーマー自体の人口が増えたせいもありそう
賞金だけで生活しているプロなんて一握りだべ?
112:名無しの弓術士 ID:LyRF6kP
昔はプロっつったら主に格ゲー
次点でFPS・TPSやらスポーツ系ゲームが主だったんだけども
113:名無しの魔導士 ID:RJ4eeyP
落ちものパズルゲーの世界大会とかなら、
もっと昔からありましたねぇ
114:名無しの騎士 ID:X3ygUka
今更だけど、このスレちょい加齢臭がきつくない?
115:名無しの騎士 ID:YY5XrDN
午後から講義の大学生もいるぞ!
116:名無しの重戦士 ID:CRXeSTB
平日昼間だからね、年齢層高めなのは仕方ないね
俺も会社のPCから書き込んでるもん
117:名無しの神官 ID:7sRbZC9
仕事しておじさん?
118:名無しの魔導士 ID:w8bz3j2
(いまどきのセキュリティと管理上、それは無理じゃないかな……)
119:名無しの武闘家 ID:XQY26JG
(昔のテンプレというか、それに乗っかった冗談だと思うよ)
120:名無しの重戦士 ID:26Gsx89
(バレたら一発アウトだぞ、冗談に決まってる)
121:名無しの神官 ID:6WjETQT
(こいつら直接脳内に!?)
122:名無しの騎士 ID:X3ygUka
掲示板オールドファッション
123:名無しの武闘家 ID:XQY26JG
インターネット老人会
124:名無しの弓術士 ID:LyRF6kP
そこまでひどいノリではないよ? ……ないよね?
125:名無しの神官 ID:8F2nHi8
そんなことないよ
大昔に自作したAAとか
引っ張り出してきたくなったけど
126:名無しの魔導士 ID:Kg4Lfes
俺も顔文字多用していい?
今度は長めに読み上げて、一息。
この先はアスキーアートと顔文字が多数を占めたため、読み上げはここで終わりとした。
どう読めばいいのかわからんし。
ただ一点、理世の表情がやや優れないのが気にかかる。
スマホを下ろして視線を向けると、理世のほうから口を開いた。
「……体調が悪化しそうです」
「……怒りと加齢臭で?」
「兄さんの加齢臭だったら、一番近くで出た瞬間に、最初に嗅ぎたいですが」
「なにその鋭角すぎる返し」
そして自分から触れておいてなんだが、体臭ネタはもういい。
このままだとお風呂用品や制汗剤、香水なんかを無駄に買い込んでしまいそうだ。
「すまん。少しだけど、俺たちの敗戦に触れるレスがあったな」
理世が不機嫌になった原因は簡単で、レイドでの敗北について書き込まれていたからである。
――にしても、的確に傷を抉られたものだ。
プラスに捉えるなら、それだけ応援してくれていた人がいるということになるが。
俺たちだってメディウス一派には勝ちたかった。悔しい。
「いえいえ。兄さんのせいではありませんから」
俺に頭を下げさせるのは違うと思ったようで、理世が表情を取り繕う。
ちょっと失敗だったな。
事前に内容をざっと斜め読みしてから、読み始めたほうがよかったかもしれない。
「……やっぱり反省会、必要だったかな?」
レイド終了後から、なんとなく触れるのを避ける流れになっていたが……本当にそれでよかったのだろうか?
ユーミルの傷も癒えたようだし、そもそもあいつはどう反撃するか考えさせたほうが、立ち直りが更に早かっただろう。
「え? 兄さんの読み上げは大変楽しかったですよ。反省の余地などないのでは?」
「そっちの反省は、あとからひとりで――じゃなくて」
途中からおじさんっぽいレスが増えに増えて、似た声音ばかりになってしまった。
ダミ声のおじさんが複数人いた気がする。
「理世、わかっていて言っているだろう?」
「……どうなのでしょうね?」
「?」
理世のつぶやきは、俺の問いに直接答えるものではなかった。
「当然ですが、私たちはプロのゲーマーではありません。TBに生活がかかっているわけでもないですし、配信活動などもしていませんから、時間を注ぎ込んだところでお金になるわけではありません」
「……そうだな」
しかし、その前提――。
そもそも、そこまで高いモチベーションを持ってゲームをすべきか? という根本的な姿勢に対する問題提起。
「それに、私たちやセッちゃんだけならまだしも。中学生の御三方をどこまで巻き込んでいいのか? という問題もあります。気持ちの問題だけでなく、成績に影響が出ていないか……というのは常に気にかけるべきかと」
「それはそうだ。ちょうど今日、進路についての話も出たところだしな」
熱量の差や意識の差、目的の違いなどは往々にして悲劇を生む。
「仕事でゲームのイベントに参加できない? じゃあ仕事辞めてください」なんて言っちゃうリーダーが生まれるのはよくない。
ユーミルはそんなこと言わないと思うけど。
「セゲムへの逆襲を考えるとしても、そこの意思確認は大事だよな。今までがそうだったからって、次も大丈夫だと怠っちゃいけない。きちんと訊くことにするよ」
「はい」
前々から「俺の行動におかしいところがあったら言ってくれ」と、理世には頼んでいた。
それを気に留めての忠告なのだろう。ありがたいことだ。
「……それはそれとしてだ、理世」
「なんでしょう?」
我が妹殿の意見はどこまでも理性的である。
しかし、それだけを指針に行動を決定しないのが人間という生き物である。
「そういう諸々を抜きにして、今の自分の気持ちを素直に言うと?」
「今すぐ再戦して完膚なきまでに叩きのめしたいです。このままだと寝覚めが悪いので」
「はははっ!」
少し突いただけで、打って変わって荒々しい言葉が口から出てきた。
ついつい笑ってしまうと、理世は俺に向けるにしては珍しい不満顔をする。
そのまま軽く睨みを利かせてくる。
「……どうして笑うんですか。兄さん」
「いやいや、今のは仕方ない。仮に未祐がこの場にいても、同じように笑ったと思うぞ」
「はい?」
疑問の言葉の後、否定するような口の動きをしたものの。
結局、声にならずに理世は口をへの字に曲げた。
「……むぅ」
理世の中の想像の未祐も、俺と同じく笑ったようだ。
イマジナリー未祐である。
本物の未祐は廊下で足でもぶつけたのか、「あいたっ!」などと叫んでいるのが聞こえてくるが。
……ともかく、俺たちの気持ちは一致している。
だから俺は照明の明かりを弱めつつ、理世にこう言った。
「早く治そうな」
「……そうですね。頑張ります」
「うん。頑張って休んでくれ」
早く治して、また一緒にゲームにログインしよう。
みんな待っている。
理世は布団で顔を半分隠すと、照れ隠しを兼ねるようにぎゅっと目を閉じた。