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幻の姫と泥棒  作者: のりまき あなご
8/8

///ミネアリーゼメモ///

夕暮れの人道を歩いている。

商人さんから、この先に小さな集落村があると聞いたからだ。


後で知ったことだが、集落はトルルランと呼ばれる村だった。名を聞いたことがあると思う。

そう、今では大きな町になっているね。

ただ当時はまだ開拓が始まったばかりでまだ森を切り開いて作られた小さな集落に過ぎなかったんだ。


ところで今のトルルランの産業を知っているかい?

そうだね、製紙業。

それが始まったばかりの頃のトルルラン村だよ。

商人さん達が村に向かっていたのも、たぶん紙の仕入れの為だろうね。紙の製法については、興味があったら調べてみるといい。よい勉強になるだろう。


もちろん、あのときはそんなこと知りもしない。

この国の字も知らない。

泊まるところもあてもない。

お金も、食べる物もない。

靴さえ履いていなかったんだから。

でもね、この村で手に入れたものがあるんだ。


飲み水さ。

製紙業には水は不可欠だからね。

トルルラン村は水の豊富な村だったのさ。

村の中央には、水飲み場があって飲み放題。


おいしかったなぁ。

あれより上手い飲み物を飲んだことはないよ。

お腹はぐうぐうなっていたけどね。





そう言って笑うとご主人様は窓の外を見た。

レースのカーテンが風に揺れている。

贅を尽くした調度品が並ぶ執務室。

私は立ったまま、ご主人様の次の言葉を待った。


私が父にニホンカタカナを始めて教えていただいたのは7才の時だった。

ご主人様のご立身ご出世の立役者となった『ニンジャー』の組頭だった父は私の誇りだ。

そして『ニンジャー』が通信暗号に使うニホンカタカナの発明はご主人様の偉大な才能と頭脳の一部を物語っている。

その後、ニホンカタカナを改良して生まれたニホンヒラガナ。暗号精度の向上、秘匿性を大幅にたかめたカンジー。

私ミネアリーゼは一族で一番暗号ニホンゴーを使えるといわれる女。ご主人様の『口述筆記官』。


コレハワタシミネアリーゼガ、カキトメタシュノカタルコトバノメモデアル。






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