夏の思い出
「夏の思い出」
それは夏も終わりに近づいた頃の事だ。僕は田舎のばあちゃんちに帰省していてた。
いつもは都会の人混み溢れた場所で大学に通っている僕にとって10年ぶりの田舎は、僕の好奇心をなかなかに刺激した。
そのせいか普段はこんなことしないんだけど、夕飯までの3時間暇だったせいもあり1人で周辺を散策することにしんだ。
ばあちゃんの田舎は隣の家まで約500メートルとかが普通なくらいのド田舎で人とすれ違うことも殆どない。そんな田舎道をひたすら足の赴くまま歩く。
「あぁ、久しぶりの大自然。人間はこういう時間も大切だよなー。」
周りの景色は畑、田んぼ、竹林、林、と移り変わり、時間にして約1時間、17時になろうかとする頃には結構な森の舗装もされてない砂利道を僕は歩いている。
「そういえば、前に来た時もカブトやクワガタを取りに森に来たっけ。そのときは確か早朝で父さんと一緒だったよなぁ。」
父さんは7年前、僕が中学2年の時に亡くなっている。あの時が父さんと遊んだ最後の思い出なんだと今になって初めて気付いた。
亡くなった父さんのことを懐かしんでいると、いつの間にか道の砂利も無くなり、道かどうかもわからないところを歩いていた。
そのとき、僕は少し戻れるか不安になった。
時計を見ると17時25分。森の中のせいか辺りは暗くなり始めていて、さっきまで視界が晴れていたのが嘘みたいだ。
「これ、フラグ立たないよなぁ?」
今の不安な気持ちを茶化すようにワザと明るく言った。とにかく砂利道まで引き返そう。
暫く歩いたがなかなか砂利道にならない。
「これ遭難したら良い話のネタになるわぁ。練習しとこうかな。ねーねー聞いてくれる?僕田舎に帰省して遭難したんだー。へー、そうなんだ。・・・。」
虚しい以外の何物でもなかった。
辺りはもう大分暗くなってきて10メートル先位が少しぼんやり見える位だ。
「これはマジでヤバいな。」
小走りで進んでいく。が、目印の砂利道に出れない。
「あ、スマホを持ってるの忘れてた。」
焦りからか忘れていたスマホを取り出すと無駄だと分かりつつも電波をチェックする。
「まぁ、圏外だよなぁ。それよりライトライト。」
もう殆ど暗くなっていた森を1点の明かりが照らし出す。
時計を見ると18時12分。これは夕飯には間に合いそうもないなぁと無駄な心配をしつつも、必死に森を突き進む。
ライトを照らしたせいが際立った辺りの暗さ、どこからともなく聞こえる虫の鳴き声が、僕に恐怖心を芽生えさせる。
お願いだからどっかに出てくれと心で念じながらひたすら進んで行く。
すると、暗闇の中から急に赤いものが目に飛び込んできた。
「うわぁ!!」
あまりに突然で思わず叫んでしまった。
よく見ると小さな社の扉の色だった。
こんなところに社があるんだ、なんだか気味が悪いなぁと思いつつライトを照らし社を見てみる。
小さな扉があり扉の片側にに紙切れが貼ってあるが文字は読めなかった。
「お札だとしたら扉の真ん中に貼ってあるはずだよな?」
怖い気持ちもあったが、その時は何故か扉の中身を見たい好奇心の方が勝っていた。
恐る恐る紙切れの無い方の戸を開けて中をライトで照らした瞬間、人の顔らしきものが見えた!と同時にスマホからフッとライトが消失した!
「うぎゃぁーーーーーー!!!」
あまりの出来事に僕の意識も失われてしまったらしい。
翌日僕は地元の猟師に発見され、前日僕が帰らなかったことに心配してばあちゃんが近所の人に声をかけてくれていたこともあり、無事ばあちゃんちに帰ってこれた。
僕はばあちゃんに昨日の出来事を話さずにはいられず、まくしたてる様に話した。
するとばあちゃんは、
「おめえさんは幸せだんなぁ。今でもちゃぁーんど、とーちゃんさ見守られでるんだ。とーちゃんも逢えでうれしがっただろなぁ。」
この地方では頭蓋骨に生前の顔の装飾を施して社に祀る風習が古くからあるらしい。
そして、父さんが僕に会いたかったがためにあそこまで誘導したのかと思うと不思議と穏やかな気持ちになった。
父さんとの思いでを大切にして、その分これからは母さんをもっと大切にしていこうと決めた。僕にとってかけがえのない夏の思い出。
最近小説を書くことに興味を持ち初めて書きました。
とりあえず書いてみたのですが、ジャンルがよくわからなかったのでその他にしました。
どのジャンルに入るかは何を基準にすればいいのでしょう?
また、文章の表現等の間違いや感想、アドバイス等頂けるととても助かります。