第六羽【魔都侵攻】①
魔法とは不可視の手である。……そんな言葉があるらしい。
曰く、直接手を伸ばすのではなく、感覚の手を伸ばし、そこへ作用させる技術。その技術を汎用化させ、形式化させて、実用化させたものが今日の魔法なのだそうだ。
なるほど、全く分からん。
感覚の手って何やねん。ニホン語でおk。
瞑想するみたいに座禅組んでも、目を瞑って集中しても、そんな感覚は微塵も掴めない。
あっれぇー? 自然体が一番集中できるってH×Hで読んだことあったのに全然できねえ。あっれぇー?
「……こんな感じでしょうか……。……炎よ!」
ボゥ! ……と菊花の掌の上には火の玉が踊っていた。なんでできるんだよ、おかしいだろ。
ぐぬぬ……。俺は唸ってみるが反応はない。へんじがない。ただのしかばねのようだ……。なんでやねん。
「キッカ殿は心得があるらしいな。上達がかなり早い。それに比べると……」
「俺の成長速度は鈍重極まりないって言いたげだな。……合ってるけど」
「いえいえ、そんなことありませんよ! 私には、アリシアさんも仰っていた通り、心得がありますから! コツさえ掴めばツバサ様もすぐですよ!」
そんなことを言われてもな……。思わず胡乱な眼差しを返してしまう。
「そう気落ちすることもないぞ。私も全く得意ではないからな。今でこそ基礎的なものは扱えるが、実用的なものはさっぱりだ。人には得手不得手があるのだから、得意なものを磨けばそれでいいのだ」
「……ほう。そうしたら俺の得意分野ってなんぞ? 言ってみろよ?」
「えっと、それはだな……」
「……う~ん、それはですねぇ……」
ハイ来た。そうですよね。……つーか、二人揃って視線を逸らすな。分かり易過ぎるだろ。
まずいな……。本気でまずい。いつか本気でタイトル変わるぞ。-黒衣の菊一文字-か-黒衣の断罪者-あたりになるぞ。選ぶんじゃねえ。もう選んだんだよ。
それにしても、魔王を倒すとはいうが、この面子では明らかに少なすぎるだろう。たった三人(と一羽)だけでは心許ないにもほどがある。勇者たちもたった五人パーティだったが、こちらはそれ以上に少ない。そのうえ戦力は実質二人だし。
アリシアは分かりやすいくらいに前衛だ。腕力が高いし、槍も使えるから、前衛で暴れるにはうってつけの戦力だ。
それを菊花がサポートできる。菊花は高い攻撃力と素早さが持ち味だ。威力が高いのは速さと、ついでにクリティカル率の高さが影響しているようだ。訊くと、攻撃が効きやすい場所がなんとなく分かるとのことだ。それ、なんて直死の魔眼?
菊花一人では敵の攻撃を受けるという動作が困難ではあるが、アリシアにはそれができる。そういったところから考えると、優秀な前衛はアリシアで、菊花がその補佐というのは実に優れた采配であったりする。
……なわけだが、それ以外が実に貧弱なパーティだ。泣けるぜ。
俺はただのパンピー同様で、ほぼ戦力外だし、シロも戦闘要員ではない。
なにより後衛の空白が大きい。
ゲーム知識だけで言わせてもらうなら、前衛は壁だ。攻撃は一体多数には適していないし、大勢を一瞬で仕留められるような大技はない。無双シリーズじゃないんだから、そんな戦い方はできっこないのだ。
戦いは一瞬の油断がダメージになる。そのダメージの蓄積は、ゲームオーバーではなく、死に直結している。そんな戦術は愚の骨頂だ。むしろ戦いですらない。ただの自殺だ。自暴自棄だ。
戦いにおいて、前衛が戦局を支え、後衛が崩す。このパターンこそが必勝のイメージに近いだろう。
もっと言うのなら戦わずに勝つ、みたいな天才軍師系パターンこそ王道だろうが、それはちょっと理想論だ。
本気で魔王と戦うのであれば、現状の戦力は戦力と呼ぶにすら値しない。無力なものだ。
魔王の一軍がどの程度の規模なのかは分からないが、国を滅ぼしている現状からだけでもその絶望的な彼我は察してあまりあるものだ。
……このままじゃ、まずいんだろうなぁ。
しかし、とりあえずの目的としては情報収集ができればいい。敵情視察だ。戦力の多さは重要ではない。
国境に一番近い街、ラグナ要塞へと旅を続けていた。
「しっかし……」
問題は山積みだ。
多大なる戦力差。後衛の不在。問題はそれだけじゃない。
「もう入らんぞ、これ……」
「うわー、全然整理してませんでしたね……」
アイテムボックスがついに溢れ始めていた。まぁロクに使い道もないものをひたすらに突っ込んだんだから当然と言えば当然なんだが……。どうしたもんかな……。
「……う~ん、合成してみるのは、どうだろうか……?」
……やっぱりあるのか、合成。
しかし、そればっかりは知識無しでできるもんでもなさそうだしなぁ。……せめて合成のスペシャリストとかがいれば……。合成大好きで時々爆発とかさせちゃう女の子急募。ロロナとかメルルとかトトリとかキボンヌ。
「だが、合成石がなければ合成はできないぞ? 持っているのか、ツバサ殿?」
もちろん、ありませんが何か? ついでに知識もなければお金もない。ないないばっかでキリがない。現状はそんなんで……。いっそ、欲望のレベル上げちゃう?
……くっそ、錬金術師の仲間も欲しいな。共にマグダラを目指す感じの獣耳っ娘も大募集です。
「次の街に着いたら、石と術士さんを探してみましょうか」
菊花の提案にそれぞれが頷いた。打倒魔王とか宣う前に、やることいっぱいだな、チクショウ。
ホントに世界なんて救えるのかよ。というかかつてのツバサ様はこんなことやってたんですか? ソレ、さっさとアニメ化しろよ。BD全部買ってやるからさ。もちろん初回版で。
今後書くべき課題の提示。
本当にそれだけしかしてない。続きは明日の俺が頑張ってくれるって信じてる。




