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prologue

なろう登録1周年記念作品、になるといいですね(ぇ

夏休みということで連載は少々早めに。欲を言えばちょうど1年になる8/7に完結出来たらなと思います。


今回は原稿を書きためており、またなかなか自分の中のモチベーションも安定した作品でもあります。


ちゃちいですが、テーマは壮大です。少し自分でも書くのが恥ずかしい部分もあります。この作品を読んで少しでもそれが感じられたら、私はとても幸せです。


それでは、「神様に、ないものねだり」の始まりです。

 こんなにも寝苦しい夜は、久々だった。


 僕はベッドから起き上がると、電気を付けてキッチンへ向かった。冷蔵庫にしまってある麦茶を飲んでリラックスしようと考えたが、余計目が冴えてしまい、眠れなくなった。

 ベッドに座り、カーテンを開けて、すでに水色に染まろうとしている空を見て、僕は諦めのため息をついた。月はまだ空に浮かんでいる。僕は産まれてから一度も、この天体を美しいと思ったことはなかった。そしてこの国に昔から伝わる、朧月夜という曲の意味も僕には分からなかった。なぜなら僕が普段見ている月は、いつもおぼろ気で、正確な形が分からないからだ。何も珍しくないことを歌っていても感動出来るわけがない。

 しばらく僕は月をぼんやりと見ていた。そしてとてもとても寂しい気持ちになった。それは珍しいことどころか、毎日のことだった。

 いたたまれなくなった僕はまたキッチンに向かい、今度は電話に手を伸ばした。するとその瞬間、コール音が鳴った。受話器をすぐに手に取る。

「もしもし?」

 電話の相手は予想通りだった。それもそのはず、今自分がまさに電話をかけようとしていた相手であるだったからだ。彼女の名はハツミという。

「ああ」

「寝てた?」

「いや、起きてたよ」

「そうよね、出るのが早かったもの」

 僕はいささか恥ずかしい気持ちになった。

「いつになく寝苦しい夜でね、麦茶を飲んだり空を眺めたりとしているんだが、今日の僕はどうも無敵らしい。睡魔が全く寄ってこないんだよ」

「私もまったく同じだわ」

 僕とハツミは他愛もない話を30分ほどした。話のネタが尽きてきたところで、やっと眠気らしきものがやってきた。

「少し眠くなってきたようだ」

「ええ、私も」

「じゃあまた朝な」

「あら、もう世間では朝よ」


 僕らは電話を切った。そして僕は床についた。最後のハツミの言葉はほんのジョークだが、だが僕の言葉も嘘ではない。僕らの住むこの世界には、少なくともいま現在は世間や社会などは存在しない。ゆえに朝などもない。僕とハツミが朝なら、世界は朝なのだ。

 そして僕とハツミの考えが食い違うことはなかった。僕が寂しく誰かとのコミュニケーションを欲しているときには、ハツミも欲している。そうやってこの世界は、今日まで動いてきたのだ。


 そんなことと、ハツミの言葉を思い出しながら、僕は眠りに引きずり込まれていった。さっきまでが嘘のような、実にスムーズな寝入りだった。


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