にんぎょひめ?
またまたやっちゃいました。童話改造シリーズ第四弾。
リクエストをいただいたので人魚ちゃんのお話です。
今回はギャグ少なめかなぁ・・
相変わらずところどころ文が荒ぶってます<m(__)m>
空が白み始め、世間では暁と呼ばれる頃。
ある王国の浜辺に一組の男女がうちあげられていた。
否。正しい言い方をすれば意識を失った男が一人浜辺に横たえられ、下半身を海に浸した女が歌を歌っていた。
だが、その女性の歌声はお世辞にも美しいとはいえるものではなくむしろ音痴と言える類で……声は美しいのだが、少々音程が不安定なものだった。
女性が心配そうに男性を見ながら歌い続ける。しばらく歌い続け、朝日が砂浜にさしてくる。
「ッッゲホッゲホッ」
突然、男が水を吐き出しせき込み始めた。女性は顔を輝かせ男に近づく。
しかし、海から出ようとはしない。
「なんてひどい歌なんだ」
男の呼吸が落ち着いて一番に発した言葉である。
「……言うに事欠いて、助けてもらった恩人に発する最初の言葉がそれ?」
さすがの女性も文句は言いたくなるというもの。ただ、確かに女性の歌はひど……少々音程が不安定だった。
「ひどいものはひどい。そんな声が夢の中にまで届いてしまったおかげで川の向こうで手を振っていたきれいなお姉さんに声をかけられなかったじゃないか。」
「……その川を渡っていたら危なかったんじゃないのかしら。」
「そうかな? とてもきれいなお姉さんだったんだけど。それにしても、この歌はない。これなら僕のほうが上手く歌える」
「嘘もほどほどにお願いできる?」
「本当さ。」
「なら今すぐ歌ってみなさいよ。私よりも歌が上手いと証明して見せなさい。」
こめかみに青筋を立てながら女性が男に言う。
対する男はのんきに笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
「今は塩水をたくさん飲んだせいでのどが荒れているから無理だ。明日でもいいかい?」
「上等じゃない。明日の夜にここで会いましょう。そこで歌ってもらうわ。」
「わかった。君に本物の歌というものを聞かせてあげるよ。」
そういって男は再び目を閉じた。
そのまま動かなくなった男に不安を覚えたのか、女性は男に近づき呼吸を確認する。
男がただ気絶していてだけだということを知り安堵した表情を見せた女性は砂浜の向こうから人が駆け寄ってくるのを見て海へと消えていった。
次の日の夜。
星明りに浜辺が照らし出され、夜明けの海とはまた違った趣のある光景の中。
一人の男が浜辺にある大きな岩の元まで歩いてきていた。
男は岩の元まで行くと、ポツリとつぶやいた。
「…来ていない、か」
独り言のように落とされたその言葉にこたえるものがいた。
「あら? 誰が来ていないの?」
その声は女性特有の高めのもので、男のいる岩のちょうど反対側から聞こえてきていた。
「早かったんだね。来ていないと思ったよ」
男は声の聞こえた岩陰のほうへと向かおうとするが、女性の声によってその歩みを止めた。
「悪いけど、こっちには来ないでほしいの。」
「どうして?」
「姿を見られたくないんですもの。その代わり、私はあなたの正体について詮索はしないわ。」
「……わかったよ。歌が届くんならそれでいいしね。」
「ええ。ですから早く始めてもらえるかしら。」
男が『歌』という単語を口にした途端女性の声がとがる。だが、そのようなことは気にせず男は澄んだ声で歌い始めた。
それは先日浜辺で歌っていた女性の歌よりも格段に上手く、本職の者には劣るであろうものの美しい歌声だった。
男が歌い終わり、感想を岩の向こうへ求める。女性の返答はたっぷりの間がおかれてから返された。
「…っ。くやしいけれど、確かに上手ね。姉様たちにも引けを取らない歌だったわ。」
男にとって女性の姉は知らぬ者だったが声の調子からして女性にとって最大級の賛辞だということがうかがえた。
「よかったよ。ここで文句を言われたらどうしようかと思った。」
その男の言葉に女性は答えず、しばらくの沈黙が続く。先に口を開いたのは男だった。
「それじゃ、約束は果たしたよ。僕はもう帰るね。」
座っていた男は立ち上がり元来た道を戻ろうする。その背へ女性の声が投げつけられた。
「待ちなさいよ!」
足を止め、顔だけ振り向く男。
「どうかした?」
「わた……私にっ、歌を教えて!」
男は驚きに目を見開いた。これまでの女性の言動からは気位の高さがにじみ出ていたため、教えを乞うとは思わなかったのだ。…教えを『乞う』というよりかは『命令する』に近いものではあったが。
男は面白そうに笑うと岩へと戻り言った。
「わかった。じゃあまた明日同じ時間、同じ場所で。」
それから毎日、夜の浜辺に男女二人の歌声が響き渡っていたという。
しばらくの時が流れ女性の歌は幾分か上達し、二人の夜の逢瀬は長い時をかけて二人の仲を深くしていた。
かたくなに姿を見せようとしなかった女性も岩の上から顔だけをのぞかせて話をするようになっていた。
「だいぶ上達したね、嵐。今ならきっと瀕死の人を安らかに死に誘えると思うよ。」
「それってほめていないわよね。まだ根に持っているの?」
「あの時の君の歌は本当に聞くに堪えないものだったからね。今の歌も、瀕死の人にとどめを刺してしまいそうな破壊力ではあるけれど大分マシになったよ。」
にこやかに笑いながら語る男。
嵐と呼ばれた女性は頬を膨らませる。
「ほんっとなんであなたみたいな男がこの国の跡継ぎなのかしら?! 私は本気でこの国の将来が心配よ!」
ぷりぷりと怒る嵐をからかっていた男は突然真面目な顔つきになり言った。
「ねぇ、嵐。」
「…なによ?いきなり。」
「城に、こない?」
突然の男の発言に沈黙する嵐。
「……なんで?」
「妃に、なってほしいんだ。」
男は一言一言をかみしめるように真剣な顔つきで言葉を発する。
「別に、今返事をしなくてもいいんだ。ただ、考えてみてほしい。」
男は驚いている嵐をおいて城の方角へと歩いていく。
その後ろ姿は凛々しく毅然としたものだったが、赤く染まった顔が男の感情のすべてを表していた。
次の日の夜。
いつものようにやってきた男へ嵐が声をかけた。
「ねぇ、琥珀。もし、私の声が出なくなっていても……それでも同じことが言える?」
覚悟とほんの少しの不安をにじませた声の嵐に琥珀と呼ばれた男は不安げに問いかけた。
「声? …もしかして、病気なのか?」
「……少し違う。けれど、もし城に行ったら私は声を出すことが出来なくなるわ。
それでも私をきさきに…あなたの妻にしてくれる?」
「ああ。」
しっかりと力強く頷いた琥珀に安心したようにこわばっていた顔を緩ませる嵐。
「そう。…ごめんなさい。今日は、もう……」
「わかった。じゃあ、また明日。」
二人は明日の約束をし、別れた。
琥珀がいつものように砂浜を歩いて帰っていくのを見送った嵐は長い髪をなびかせながらつぶやく。
「魔女なら…きっと……」
そして、いつもは琥珀に見せないようにしていた自分の体を見下ろした。胴から下、下半身が魚の自分の体を。
嵐は海に飛び込み、昔祖母から聞いた魔女のすみかへ泳いで行った。
いいかい、嵐や。
お前が本当にどうしようもないくらい困ったとき、大渦巻の向こうの魔女の元へ行ってごらん。
きっと助言をくれるだろう。時には薬だってくれる。
ただねぇ、嵐や。注意しなくてはいけないよ。
魔女は、お前に代償を求めるだろう。人魚の娘は、たいてい自分の声を取られてしまう。
お前が魔女の元へ行くときは、覚悟を、決めなければならないよ。
嵐は祖母の言葉を思い出しながら魔女のすみかへ泳いでいく。
魔女のすみかには、気味の悪い植物やウミヘビたちがおり陰鬱とした雰囲気を醸し出していた。
内心の怯えを面にださず、魔女の家へ入っていく嵐。
家の中には薄汚れ、年老いた人魚がいた。
「何の用だい?ここは海の王の末娘さんが来る場所じゃあないよ。」
魔女は嵐のほうを振り向きもせずにしゃがれた声で言った。
「私、人間になりたいの。」
「代償が必要だよ。」
「わかってるわ。『人魚の歌声』でしょう? 構わないから早く薬を頂戴。」
魔女の言葉に間髪を入れずに答える嵐に興味を持ったのか、魔女は大鍋に向かっていた体を嵐にむけ哄笑した。
「馬鹿をおいいでないよ。誰があんたの歌声をほしがるもんか。」
「…え?」
「あたしがほしいのは綺麗な歌声。わかるかい? き・れ・い・な歌声だよ。あんたのはお世辞にも綺麗とは言い難い。あたしゃ音痴の人魚には別のものを要求することにしてんだ。」
「……失礼な魔女ね。薬を持っているんじゃなきゃぶっとばすところだったわ。」
魔女の言葉に少々むくれる嵐。
「それで?別のものって?」
「そうさね………あんたは面白いもんを持っている。」
品定めをするようにじろじろと嵐を見る魔女は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「面白いもん?」
「人間の王子との恋の記憶。めったにお目にかかれない上物、しかも初恋ときた。ぜひとも記憶をもらいたいねぇ。」
舌なめずりをしながら近づいてくる魔女に嵐は少しずつ後退する。
「っ! 何を言ってるのよ! これをもっていかれたらわたしは何のために薬を飲むのか忘れてしまうじゃない!」
「そうなるね。だが、ここは譲れない。それ以外にあんたのもつ物であたしの興味を引くものはないんでね。」
「っっ! …またくるわ!」
「ああ、まっているよ」
にたりと笑う魔女から全速力で遠ざかる嵐。その頬には一筋の涙が伝っていた。
「人間に…なれない……わたしは、琥珀と……」
その日の夜のこと。
嵐は普段よりも早く浜辺についた。
琥珀を待つ間、嵐は自分の体を悲しげな顔で見下ろす。
「きっと人間じゃないと知ったら琥珀は離れていくわ…。」
悩ましげな彼女の顔を三日月の淡い光が照らす。
「イヤ……嫌われたくない…。」
嵐は魚の尾を折りたたみ、人間でいうところの膝の部分へ顔をうずめる。
「嵐? いるかい?」
突然聞こえた琥珀の声に嵐はハッと顔を上げ、返事をする。
「な…なに?」
普段通り振舞おうとしているが、声が震えていた。
毎晩のように声を聞いていた琥珀は嵐の異変に気付いた。
「嵐? どうかした?」
「…ねぇ、琥珀。私……お城には行けないわ。」
力のない声でつぶやく嵐。
「どうして?」
その琥珀の声は嵐のすぐ近くから聞こえてきた。
いつものように岩をへだてた向こう側ではなく、嵐のすぐ近く、岩の上から。
嵐は悲しみにくれるあまり琥珀に対する警戒を解いてしまっていたのだ。
琥珀は岩を乗り越え、嵐の目の前に降り立ち、嵐の全身の姿を初めて目にすることになった。
ごつごつとした岩の上に乗せられた嵐の体には人間とは違い足がなく、魚の鱗に覆われた尾びれは薄い桜色に染まっている。
嵐の体についた水の雫は月光に照らされきらきらと輝き、幻想的な雰囲気を漂わせていた。
「きれいだ…」
琥珀の口から言葉が零れ落ちる。
琥珀に姿を見られ青ざめていた嵐が少しずつ距離を取りながら尋ねる。
「気味悪く、ないの?」
「全然! むしろうれしいよ!」
琥珀は興奮したように話し出す。
「う、れしい?」
戸惑う嵐に琥珀がまくしたてる。
「だってまさか本物の人魚に会えるなんて! やっぱり伝説だけじゃなくて本当にいたんだね!
確か、寿命はものすごく長くて三百年くらいあって死んだら海の泡になっちゃう。そして人魚の歌声はこの世のものとは思えない美しさで、さらには怪我を癒す力が存在してるって聞いたんだけど…本当かい?」
「…ま、あ……それなりにあってるけど……」
「なるほど! …でも、歌が美しいってのは嘘だったみたいだね。確かにこの世のものとは思えないものだったけれど。」
「ちょっと!」
がっかりしている琥珀に嵐が突っかかる。
「いきなりなんなの?! もっと違う反応をしたらどうなのよ!」
「違う反応って?」
どこからか取り出した紙に文字を書きながら適当に返事をする琥珀。
「に…人魚って気持ち悪いとか……」
「君は綺麗だよ。」
紙から顔を上げ、にっこりと笑う琥珀。
不意打ちで告げられた言葉に顔を赤く染める嵐。
そして、しばらくカリカリと琥珀が紙に文字を書きつける音が響いていた。
「僕はね、昔学者になりたいと思っていたんだ。伝説にある生物や不思議な動物たちを調べたくってね。
ついこの間も隣国にあるドラゴンの巣も見に行ったんだ。ただ、残念なことに肝心のドラゴンは見れなかったんだけどね。」
「…もし出会っていたらその時死んでいたんじゃないの……?」
若干引き気味の嵐に琥珀は問いかける。
「海底には、大海蛇とか水棲人とかセイレーンとかクラーケンとかその他もろもろの伝説の生物はいる?」
きらきらと期待に満ちた表情で問いかける琥珀は生き生きとしていた。
「いる、けど…」
「そうか! それはぜひとも見てみたいな!」
少年のような笑顔で言う琥珀に嵐は声を立てて笑い出した。
「やっと笑ったね。」
嵐の笑いが収まるまで見守っていた琥珀が嬉しそうにいった。
「え?」
「今日はずっと元気がなかったから。もしかして、僕の求婚が原因?」
「ち、違うっ、うれしかった! わたしも…でも、わたしは人魚だから……陸には住めない。
だから魔女に頼んで人間にしてもらおうと思ったのだけれど…」
「前に言ってた、声が出なくなるというのはその魔女が?」
「そう。人間になれる薬の代償に。でも、わたしの歌声は聞けたものじゃないからだめだって」
「確かに。」
悲しそうに訳を話しだす嵐に真面目な表情で答える琥珀。
「ひどい!」
憤慨する嵐に笑いかけながら謝り、琥珀は続きを促した。
「恋の記憶を渡せば人間にしてくれるって…。でも! それじゃ意味がない!」
固くこぶしを握り締め歯を食いしばる嵐。
思案しながら彼女を見つめていた琥珀は静かに口を開いた。
「…ねぇ。その魔女は、人間を人魚にすることも出来るのかな?」
「え?」
「僕が、君の住む海底に行くのはだめなのかな?」
「な、にを言って……あなたは王子で!」
「弟がいるよ。」
静かに言葉を返す琥珀。彼の眼には決意が宿っていた。
「家族だって陸に住んでいるし…それに! 人魚になったらもう二度と陸にはもどれないのよ!」
「でも、君は僕のために同じことをしてくれようとしたんだろう? 故郷も、家族も、友達も……そして声も捨てようとした。僕もね。君と同じ気持ちだよ。君がいれば、それだけでいい。一緒にいたい。
魔女さんに聞いてくれないかな? 僕が人魚になるためにはどんな代償を支払えばいいのか。」
「でも…………。」
「それに、もう地上の不思議な生物はそれなりに調べちゃったからね。クラーケンに会いに行くってのも悪くない」
「…ムード台無し。」
口をとがらせる嵐に悪びれた様子もなく笑う琥珀。
二人の間には確かな愛情が存在していた。
魔女が薬の代償として要求したものはドラゴンの爪だった。琥珀はドラゴンの巣で手に入れた爪のかけらを泣く泣く手放し、代償を支払った。魔女は薬を完成させるまで一月かかるという。
二人はいつもの浜辺で一月後の再会を約束した。
「一月かぁ。それじゃあ薬が出来るまでいろいろとやらなくちゃいけないね」
「いろいろ?」
「王位継承権を放棄したり、友人に結婚と引越しの報告をしたりね。忙しくなりそうだから、一月後までは会えないかもしれない。」
「わかったわ。じゃあ一月後、満月の夜。ここで待っているから。」
一月後。
日も落ち切らぬほど早い時間から嵐は浜辺へやってきた。琥珀の姿はまだない。
日が沈み、月が昇る。
常であれば姿を見せる時間になっても琥珀は現れない。
「大丈夫。きっと……遅れているだけよ」
嵐は自分に言い聞かせる。
しとしとと霧雨が降りしきるなか嵐は琥珀を待ち続けた。
時間がたち、夜も深まっていくが嵐は琥珀を待ち続ける。
「…気が変わってしまった……のかしら。やっぱり、人間のままでいたいって…」
気弱に呟く嵐の耳に、かすかな音が届いた。
「…ぁ!……!」
遠くで人が叫んでいるような音がする。それはまさに琥珀の住む城の方角から聞こえた。
目を凝らして見てみると城の方角から何人かの人間がこちらにかけてくるのが見えた。
一人の男が先頭を走っており、しばらく遅れて何人かの兵隊と立派な服を着た人間が走っている。
「殿下~! お待ちくだされ~! 殿下!」
後方で必死に叫んでいる集団には目もくれず先頭を走っている男は海を指さし叫んだ。
「嵐! 海に!」
そして速度を緩めることなく海へ飛び込んだ。
「でんか!!!」
男の行動に慌てふためく集団。彼らが冷静さを取り戻す前に嵐は男を支え沖へと泳いで行った。
「ごめん。おそくなっちゃった。」
陸地も見えないほど沖まで泳ぎ、人心地ついたところで琥珀が目を伏せて謝る。
いつしか雨はやみ、雲の切れ間から満月が顔をのぞかせていた。
「…もう、こないかとおもった」
「気が変わったと思った?」
「うん」
会話をしながら自然と二人は寄り添いあい、抱き合う。
「ひどいなぁ。……ねぇ。くすり、ちょうだい。」
「いいの? これを飲んだら、もう後戻りは出来ないのよ。」
「言ったでしょ? 僕にとって、君がすべてなんだ」
「後ろから、誰か来ていたみたいだったわ。」
「ああ、ちょっとうちの親父が勝手に縁談進めててね。駆け落ちします!って宣言して出てきちゃったから追いかけられちゃって。本当はもっとこっそり出てくる予定だったんだけど。」
苦笑しながら話す琥珀の言葉に嵐は首をかしげた。
「かけおち?」
「海底には駆け落ちって言葉はないのかな? まぁ。いいや。」
額をこつんと嵐のそれに押し当てて笑う琥珀はどこかさびしげだった。
「僕は、故郷よりも君とともに生きることを選んだ。覚悟だって出来てる。だから、薬を頂戴?」
「……はい。」
嵐は小瓶を取出し琥珀の手に押し付ける。
中には無色透明の液体が入っていた。
液体をしばし見つめていた琥珀は目をつむってぐいと飲み干した。
瞬間、顔をしかめる。
「これ…ちょっと苦いね。それにちょっと痛い。」
「大丈夫?」
心配そうに見つめる嵐の顔を真正面から見つめ、琥珀はささやいた。
「愛してる」
やわらかい満月の光が降り注ぐ中二人の人魚のシルエットが重なり合い、互いの唇を触れ合わせた。
原作では人魚には涙がないと書かれているんですがついうっかり泣かしちゃいました。
・・・改造だから許してほしいな~なんて。
なんかもう改造しすぎて原型がほとんど残ってないですね。設定だけもらって話作っちゃった!みたいな・・。これまでのやつもそうですけど(笑)
今回はいつもより情景描写が多めかな?
いつもよりも丁寧に書いた気がします・・。(あくまで主観)
ちなみに今回の名づけは
琥珀→原作の海の城の描写から
嵐→王子が遭難する原因からです。
一応、原作をほとんど改造しないで後日談を捏造して付け加えた物も考えてあるのですがこれ書いたら満足しちゃったんで投稿できるかはわかりません。もし書いたら読んでいただけるとありがたいです。
ではでは恒例の。
元の童話は全然違うお話です。過程もさることながら結末も全然違います。
人○姫さんを誤解しないでください。
そして朔夜は童話・お伽話の類が大好きです。特にこの人魚○は本当に好きな作品です。
よってこの改造に悪意はありません。改造が改悪になっていないことを切実に祈っています。
読んでくださってありがとうございました。