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異形な姿をしたもの

作者: カイリ

初めて投稿します。

お願いします。

月が奇麗に円を描く満月の夜。家の屋根から屋根に高速で移動する一つの影があった。

暗がりの中で移動するその影は、満月の明るい光があるからこそ見えるものであり、光が行き届いていなければ決して気付くことはないだろう。

満月の光によって一瞬だけ照らし出された影は、ヒトの形をしていた。影から影に移動するそのヒト、汰那橋双夜たなはしそうや

彼はある任務のために隠れるようにしながら移動していた。彼が受けた任務とは、『異形な姿をしたもの』の抹殺である。

『異形な姿をしたもの』とは、夜という暗い時間帯になると現れる、ヒトに成らざる姿をしたものだ。無差別に命あるものを狙い、糧とする、まさに怪物、化け物だった。姿、形は現れるものによって様々で、どこからくるのかは不明。分かっていることは、光のないところから出現するということだけだった。

だから双夜は、光が届いていない場所から場所へ移動しているのだ。

双夜は、任されている区域を約2時間くらいこうして移動している。

そろそろ頃合いだろう。

双夜はそう思い、この区域から離脱しようと体の向きを変えたその瞬間、彼の薄い灰色の瞳に何かが写し出された。


「……何だ」


2階立ての一軒家の影が長く伸びているその空間だけが何かおかしい。ぼやけているような、歪んでいるような、とにかく普通とは違う。双夜はそう感じ取った。そして、頭に閃いたものは一つ。


「まさか……」


『異形な姿をしたもの』の出現。

双夜はその場所へ急いだ。彼の移動速度からその場所に到達するまでの時間は約10秒。決して遠い場所ではない。

一迅の風のようにしてその場所へ到着すると同時に、彼の武器である2丁拳銃をその空間に標準を合わせた。


「『異形の姿をしたもの』らしきを確認、必要であれば抹殺する」


耳に付けているインカムからのびているマイクにそう告げ、相手の出方を窺いながらすぐに戦闘態勢に移行出来るように構える。

やがて、その空間が不気味に歪み出した。粘土をこねるようにして何度も何度も歪んだ結果、ヒト一人が通れる程の穴が空いた。そこから液体がこぼれるようにして何か黒い物体が出てくる。ぶよぶよした姿で出てきたその物体は、姿を形造るようにして形成されていく。形成されて出来たものは、ヒトのような形をしていて、頭、体はヒト、手はカマキリのように鋭く、獣のような足は6本、爬虫類みたいな尻尾が2本という歪な形をしていた。この奇妙な姿、形こそ……。


「『異形な姿をしたもの』」


その通りだった。

『異形な姿をしたもの』は、空間をも歪めてしまうように、咆哮を轟かせた。

それが合図とでもいわんばかりに、双夜は二丁拳銃の引き金を引いた。


ドガンッ!!


爆音が響き、銃口から吐き出された2つの鉛玉が高速で『異常な姿をしたもの』に飛んでいく。

しかし、『異形な姿をしたもの』は、鋭い爪で弾丸を軽々しく弾く。


「弾いた……ッ」


双夜は目を細め、簡単に終わる相手でないことを悟る。

『異形の姿をしたもの』は、六本の足で地を蹴り、双夜へと距離を詰めようとする。


双夜はもう一度引き金を弾いた。


ドガンッ!!


しかし鋭い爪がまたも弾丸を弾く。それと同時に一気に距離を詰めると、鋭い爪を双夜に振るいかかる。


ギィィンッ!!


双夜は咄嗟に二丁拳銃で受け止める。しかし、凄まじい力が重力のように上から双夜を押し潰そうとする。

双夜は力が強い方ではなく、細く華奢な体つきをしている。だから受け止めたものの、耐えられるかといえばそうでもない。押し返そうにも力が足りない。徐々に体が沈んでいき、膝が少しずつ折られていく。奮える体が己の限界を悟させる。


「力で負けるなら、これでどうだッ」


双夜は二丁拳銃の引き金を引いた。


ドガンッ!!


二丁拳銃から弾丸が吐き出される。その時の手にかかる反動を利用し、一気に押し返す。


「はぁッ!!」


「…………ッ!!?」


ギィィンッッ!!


予想外の出来事に、『異形の姿をしたもの』は目を見開いてよろける。

双夜はその時にできた隙を見逃さず、二丁の銃口を目の前の化け物に向けて発砲。


ドガンッ、ドガンッ!!


間髪入れずに連射し、幾重もの弾丸を喰らわせる。空薬莢からやっきょうが次々と地面に落ちて乾いた音を奏でる。


「ヴォ、ヴォオオオオオォォォォッッッッ!!!?!?」


『異形の姿をしたもの』は、自慢の鋭い爪で弾くことには間に合わず、その身をもって弾丸を喰らうこととなった。体の表面はヒトのように脆いのか、弾丸が次々と体を駆け巡っては貫通していく。

双夜は装填されている弾丸を全て撃ちつくすまで引き金を引き続けた。

やがて、


カチッ、カチカチッ!!


装填されている弾丸を全て撃ち尽くし、文字通り弾切れになった。

双夜は二丁の銃口を下ろし、目の前の敵を見やった。目の前の敵は、見たままに『蜂の巣』と化していた。無残にまで無数の穴をその身に空けて、穴という穴から赤黒い液体をまき散らしている。敵は、潰れた顔の口の部分だった穴から赤黒い液体を一息吐き出すと、ぐらっとゆっくり後ろに傾いていく。傾きながら、体が砂のような粒子になり、風に吹かれて消えていった。


「ふぅ、終わったか……」


戦闘終了と体の緊張を解き、二丁拳銃をホルスターに収める。粒子になって消えていった空間を確かめるように見やり、


「任務完了。『異形な姿をしたもの』は抹殺した」


耳に付けているインカムからのびているマイクに一言、そう告げた。歪んでいた空間も、化け物が出てきたと同時に元に戻っており、特には異常はなさそうだ。


「近辺でもしかすると現れるかもしれない。しばらくは周辺を捜索する」


マイクにそう言うと、双夜はもう一度化け物が現れた空間を一瞥し、何もないことを確認してからその場を立ち去った。

彼は、『異形な姿をしたもの』を抹殺に夜の闇に消えて行った。

読んでいただきありがとうございました。

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