天草に立ちはだかる者
俺は急いでエマの元へ向かった。しかしどうしても全速力では走れない。理由は簡単だ。敵がどこにいるのかもわからない。急に攻撃でもされたらたまったものじゃない。それに体力を使いすぎるのもよくない。
天草が息を切らし始めた頃。天草の前に1人の女性が立ちはだかった。天草は剣を地面に刺して前にかかる勢いを殺した。
「うざいなぁ」
俺がそう呟くと
「そんなこと言わないでほしいわね。私はあなたと戦いたくないの。どうせ勝てないだろうし」
そんな返答が返ってきた。てっきり戦うためにここにいるかと思い込んでいた。
「じゃあどいてくれ。俺は行きたいところがあるんだ」
俺がそう言って横を通り過ぎようとしたとき。
「契約をしない?」
「嫌だ」
「ちゃんとあなたにもメリットがある。話だけでも聞いてくれないかしら」
俺は足を止めた。
「そのメリットを教えてくれ。それによる」
するとそいつは安心したかのように一息ついた。
そして言った。
「メリットはあなたにポイントをあげる。私が持ってるのは56ポイント。どうかしら?」
「なるほど。それで契約とは」
「私と握手をするだけよ」
「そんなんでいいのか?」
「えぇ。実はね、私はあなたの熱狂なファンなの!」
そう言って頬を抑えてくねくねしだした。
そして気づいたらポイントが送られていた。
「本当にもらえた。あとファン?まぁいいけど」
ま、俺も強くなったからな。そうして2人は握手を交わした。
「それじゃ」
俺はそう言ってエマのところへ向かった。
そして少し走っていると急に視界が揺らいだ気がした。
「.....気のせいか」
怖い。こうやって強者と戦っていると黒澤を思い出す。黒澤にはたくさんの暴力を受けた。そんな痛みももう少しだけ忘れかけている。まるでポロポロ崩れるように忘れている。きっと忘れるほどに今まで楽しかったんだと思う。友達もできて、天草もいて。だからこそ忘れちゃいけない。怒りは人を強くする。
私は今までに覚えた全ての怒りをこいつにぶつける。
「容赦しないわよ」
エマは低い声で言った。すると死神が笑い音を置いていくほどに早いスピードでエマに向かう。
「おらあああ!」
エマは目の前に現れた死神の腹に拳を喰らわせる。
その拳が真っ赤に染まり光り輝く。そしてその拳から炎が噴き出た。死神は瞬く間に炎に包まれ遠くへ吹き飛ばされる。エマはすぐに死神を追いかける。顔まで真っ黒になり煙を体から発している死神。
「雷龍!!」
そう言いエマは自分自身の体に雷龍を纏った。
そしてうおおお!という雷龍咆哮とエマの叫びが混ざった声と共に死神の下半身が噛みちぎられた。
エマは重力に逆らえず真っ逆さまに落ちてゆく。
「エマさん!」
「.....リアネ?」
リアネはエマをキャッチした。
「よかった。生きてる」
「生きてるわよ。ただ体力がもうないっていうだけ」
「じゃあ少し隠れて寝ましょう」
「あ、そうだ。リアネ。これ飲んで」
そう言ってエマはリアネに薬を渡した。
「いいんですか?」
「だって今だって無理してるでしょ?痛いでしょ?いいのよ。別に私は疲れてるだけだから」
「.....じゃあありがたくいただきます」
そう言ってリアネは薬を飲んだ。喉を通した瞬間に足のズキズキとした痛みが一瞬で消えた。
「本当に治ってる」
リアネは少し驚いていた。
「あ、この岩の影で少し休みましょう」
そう言ってリアネはそっとエマを岩の影に下ろした。
そしてエマはすぐに眠りにつくのだった。
「本当に眠っちゃったよ。薬もありがとうね。天敵の死神を倒してくれるなんて、本当にいい道具だったよ。でも殺しはしないであげる。今は。また次会った時に苦しませて殺してあげる。それじゃ。バイバイ。
エマ」




