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シャベリバ!  作者: 黒熊
9/15

紫煙の吐き出す時、紫煙もまた吐き出されているのだ。

ギンジの店で少し書いてみたが、考えが纏まらず家に帰ってノートとにらめっこをすることにした。

考えが纏まらないと言うより書いてる横でギンジが煩い。

面白くないや文章力がない、次第にはあの鈴華ちゃんがと言って泣き出しそうになっている。

因みに私が書いてる姿を写真に納めて母に送ったりもしていた。

流石に集中できない。


とはいえ家に帰ったからといって筆が進む訳でもない。


「自分の言いたいことを書けばいい。」


相方の柊花乃とギンジに言われた事である。

言いたいこと、自分の思い。

言いたいことなら沢山あるが、それが面白いに繋がらない。


諦めて寝ようか考えていると携帯にメッセージが届いた。

柊花乃からだ。


『ネタの進捗どぉ?こっちはいくつか書けたよ!明日授業の前にここでネタ見せ合お!』


そこにはリンクが張られていて見ると養成所近くの喫茶店のURLだった。


「、、、ムカつくわぁ。」


こっちは一文字も書けていないのにネタが幾つか書けたらしい。

思わず言葉が勝手に出てきていた。


『こっちもあとちょっとで書き終わる。』


勿論虚勢である。

ここで書けなかったと言えばバカにされる。

ただ一文字も書けていないのである。

ムカつく。ムカつく。ムカつくムカつく。ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく。


自分に出来ないことを出来る人間腹が立つが、それ以上に自分が出来ないことが一番腹が立つ。


いつぞやにボス猿を思い出した。

きっとこういう気持ちだったのだろう。

ただあのボス猿は自分の努力を諦める理由が分からない。

知りたい。

こんな黒い気持ちなのに晴らす方法が苛めになった理由が。

いや、私はそうならないようにしたい。

だからこそ知っておきたい。


私が私でいるために、私が彼女のようにならないように。


八つ当たりするように私は筆を進める。

気付けば何ページも何ページも書いていた。

記憶の無い程に灰皿が山のようになっている。

外は明るい。


既に日は登り始めていた。

そして初めてのネタが出来た。


書いてる時は気付かなかったが体があちこち痛い。

痛みを和らげるように伸びをして私はベランダに出る。

春とはいえまだ少し肌寒い。

ギンジのバーからガメテきた残り少ない煙草を一つ取り出してライターで火をつける。

冷たい空気と共に煙が入ってくる。

紫煙がまだ少し薄暗い街中に溶けては消えていく。


何だか夢の中にいるような気分だ。

成し遂げた達成感と言うより、

私が感情が全てノートに吸い込まれたような気分。

正直無に近い。


取り敢えず今私はとても、

お風呂に入りたい。

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