最高の相方の見つけられ方
それからの私は至って普通である。
三重にある実家を出て養成所の入学時期になるまでに細々とバイトをしながら1人暮らしをする。
流石に「明日から」と言う母の話は現実的ではなく、次の日に母の付き添いで不動産の内見を済ませる。
そして予想通りその日の食卓には漬物が出た。
そしてトントン拍子に入学し今日が相方探しの初授業である。
ここで私の容姿について少し注釈しようと思う。
私は綺麗なのである。
大阪に来てスカウトされたこと5回、内1回は誰もが知る大手事務所。
そして内2回はキャバクラ、内1回は風俗。
最後の1回は聞いたことの無い雑誌モデル。
よくよく調べてみたらAV会社だった。
都会は怖い。
けど、高校時代からこういう好奇な目には慣れている。
と言うよりそのせいで虐げられてきたのだ。
良くも悪くも目立ってしまう顔立ちに、私の耳には自称行為にも近い数のピアス穴が開いてる。
これを逆手に取るようにゴリゴリのバンギャスタイルの服装。
嘗められないようにするためである。
そう虚勢だ。
しかしそれは今回の授業では逆効果だったようである。
コンビを組む相手を見付けるのに周りの異性は「可愛いけど、、、。」「近寄りがたい。」等の声が聞こえる。
同姓からは「目立ちたがり屋」「鼻に着く」等の声が聞こえる。
完全に失敗である。
漫才師なると言う目標を掲げてみたがピンでやる程の度胸はない。
そもそもギンジしか友達がいない私に養成所に一緒に入ってくれる友人はいない。
完全に呆然として半ば諦めているその時、
可愛らしくも五月蝿い声で私の前に立つ存在が現れる。
「なぁ、ウチとコンビ組まへん?」
その光景を私は今も忘れることが出来ない。
まるでこんな私に天使が舞い降りたかのように後光が指している。
それが蛍光灯の光だと分かっているが、これは彼女との最初の出逢いである。
「別に、ええけど。」
もっと言えることがあるだろう。
しかし呆然としていた頭が回らない。
何なら気合いを入れた格好が少し恥ずかしい事もあり、格好着けてしまったのである。
「ホンマに!?ありがとー!一緒に入る筈やった子が急に辞めるとか言い出して困っとってん。」
こっちの内心など気にもしないかのように捲し立ててくる。
きっと私と違って友人の多いタイプなのであろう。
そうなると疑問が次々と沸いてくる。
「でも、何で私なん?」
「いやぁそんなゴリゴリのバンギャみたいな格好してる面白いヤツあんたしかおらんやん!」
冷やかしか?
言われなくても失敗したって分かってんねんボケッ!
と初見の人に言えていたら私の人生はもう少し違っていたかも知れない。
「なぁなぁ、どんなスタイル?漫才?コント?」
「一応、漫才志望、、、。」
「ホンマに!?一緒やわぁホンマに声かけてよかったぁ。」
こっちの言いたいことを全て押し退け捲し立ててくる。
正直苦手なタイプだ。
やっぱり断ろうか悩んでいる時に講師の男性が騒ぎ立っている教室中に響き渡る。
「よーし決まったヤツは壁によれ。まだ決まってないヤツはピンでやるか残った連中同士で組め。」
「ほら行こ!」
彼女は私の腕を掴み壁側に連れていく。
言葉を出す前に既に壁のそばにいる。
「あの、、、。」
やっぱり無理かなって言おうとした時に不意に周りを見る。
残った人達の群れの中には正直近付きたくない小汚ないおっちゃんオバちゃん、学校と言う狭い山でイキッてそうな陽キャ共に絶対私よりおもんない見た目だけがオモロイ腐れオタクみたいな見た目の陰キャしか残ってないのである。
「ん?どないしたん?」
この群れに残ることは流石に躊躇する。
陽キャどものなかにはピンでやることを決意するものが増え、仕方なしにおっちゃんおばちゃん達と陰キャ達が
渋々コンビを組んでいた。
「あ、えっと、これから、よろしく。」
私に残された選択はこういう他無いのである。




