貫くのがロックなら迂回するのがロクガです。
私たちは反省会と言う名目で昨日のファミレスに行く。
しかし今回はどちらもドリンクバーを取りに行く素振りがない。
重苦しい雰囲気のなか柊花乃が口を開く。
「ネタ、代えよか。」
流石に驚いた。
先程まで力強く手を握ってた彼女の言葉とは思えない。
「、、、ホンマに言うてる?」
「講師の言ってたこと、間違ってはないやん。」
「せやけど、初めてのネタ見せであんなけ笑わせられててんで!あんなん聞く必要無いやろ!」
私は思わず声が強くなる。
きっと今まで苛まれてきた容姿がここで邪魔することが許せなかったのだ。
「せやけど、万人受けせえへんのは事実やん。」
「そうやけど、、、。」
「それに鈴華かてブスにブス言われても腹立たんけど美人にブスみたいに言われたら腹立つやろ?」
「立つけど今関係無いやん。」
「同じことやん。美人にブス呼ばわりされて一定数は腹立つ奴がおるってことや。今回確かにウケてた。ウチもこんなけ爆笑取ったんは初めてや!ウケたけど、一定数笑ってへんかった女子はおったことは事実やし。」
「けど、さ、、、。」
思い返せば黄色い声の中に微かにあの嫌な視線を感じた。
しかしようやく笑えたのである。
自分の言いたいことをぶちまけて、笑ってくれる人がいたのである。
なのに、自分の容姿のせいで柊花乃を巻き込む形がどうしても許せなかったのだ。
「なぁ、聞いて鈴華。ウチはあの漫才をやりたい。私も言いたいことこんだけ言い合えるんが楽しいと思わんかった。ウチらにあんたの書いたネタしかないと思うよ!」
「せやったら!」
何か言う前に柊行花乃に遮られる。
「せやから!今回は退こうと思う。」
「ど、どういうこと?」
彼女の威圧に気圧されて私のやるせない怒りが少し沸点を下げる。
「ええか?今後ネタ見せでは同じ内容を練度を上げて何度もやる。やのにこのネタのまま貫いてもいつか講師のおっさんに変な目で見られる。特に今回はウケたからよかったけどあの場でも微妙な顔してる人はおったことは事実やし。それに飲み込まれればいつかあのネタは潰される。」
「確かに、せやけど。」
「せやったら、ネタ見せそのものに違うネタをぶつける!」
「ど、どういうこと!?」
彼女の言葉が一瞬理解できなかった。
それを捲し立てるように柊花乃は口を開く。
「ええか?講師はもう一人おる。その講師の反応もあるけど、芸能界語った奴らならきっと同じ結論になるやろな。せやから一回ちゃんと指示に従ったふりをしとこ。せやないと変に反発して新人発掘ライブに出られへん方がおもんないやろ!そして舞台立ったら、オモッキリ暴れたったらエエねん!」
「ッッッッ!?」
それってつまり、替え玉のネタを作るということ?
イカれてる。流石に。
「本気言ってる?」
驚きながら柊花乃の表情を見つめる。
彼女の目は真っ直ぐに私を見つめる。
「何が容姿じゃボケ。そんなんで笑い取るためにこちとら喋ってへんねん!」
柊花乃が握った右腕の感触が少しずつ熱くなっていくのを感じる。
柊花乃もまた、この件に怒りを覚えているようだ。
「けど、ネタ見せと違うことやって優勝できる?」
先程までと違って私が冷静になる。
講師の言うことを丸無視するという発言は流石に行き過ぎで粋過ぎでは無いだろうか。
「こうなったら優勝どうのこうのやないよ。ウチらの実力、見せ付けたろうや!」
彼女はあの時の喫茶店のように拳を突きつける。
私は彼女の拳に拳を合わせて決意を固める。
言いたいことは山程あったが今は口が裂けても言いたくない。
相方になってくれたのが彼女で私は幸せ者であるこの思いを伝えたらきっと、彼女は調子に乗るだろう。
それが一番ムカつくからである。




