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シャベリバ!  作者: 黒熊
11/15

ギャフンと言わせるのギャフンとは?

養成所の2回目の授業は今後のスケジュールの共有である。


明日からの時間はネタ見せ希望者の評価と練習、週一でダンスの練習である。


その他にも座学やお笑い理論学など様々な内容が各曜日で開催される。


そして半年後、養成所内で一番おもろい奴を決める新人発掘バトルが行われる。

そこで一位になれば養成所の学費免除+早々に幾つかのテレビでネタ見せが出来るらしい。

更に今年はラジオ局の何周年かの記念でワンクールのレギュラー番組をくれるらしい。

しかも有償である。

一応養成所内での活動となるため、マネジメント両等は差っ引かれるのは流石は大手事務所のやり口である。


「今年の新人賞ウチらで決まりやな!」


講師の説明の合間に柊花乃が小声でガッツポーズを見せる。

私は自分のネタがそこまで面白いと断定出来ない不安と自分で書いたネタを自分が出来るか分からない不安のダブルパンチである。


その日は説明と各々の練習時間と言う名目で授業は終わる。


そして私たちは空き教室を見付けてその場で練習しようと読みあわせを始める。


見渡せば同じクラスのコンビもいた。

こんなところでやるのかと少し後ろめたい気持ちを隠せずに初めての読みあわせが終わると、柊花乃不満気である。


「ご、ごめん。なんかミスった?」

「そうやないけど、、、。」


柊花乃は私のノートを見つめながら考え込んでる。


「何かあるなら、言ってくれていいよ?」

「これ、ほんまに鈴華が書いたん?」


その言葉の意味が分からなかった。

確かに私が書いたものである。

なのに何を疑われているのか私に察することが出来なかった。


「いや、確かに普段の言動と乖離したネタ書く人はいるけど、それはそもそもその人が思ってることやからスイッチが入ると別人になる人が多いんよ。けど、今の鈴華からこのネタの熱量を感じへんねんなぁ。」


確かにその通りである。

私自身も読み返した時は鳥肌がたった。

いかにも自分の喋ってる内容とは乖離しているのである。

しかしこの感情をどう伝えるべきか悩んでいると、柊花乃は私が他のコンビに目を移すのを見逃さなかった。


「もしかして鈴華、人前でやるのが恥ずかしいん?」

「ッ!?」


私は図星を突かれて狼狽える。

虚勢を張って「べ、別に。」と答えるも声が震えている。

怖くないわけがない。

長年「人」に虐げられ、そんな「人」の前で何かをやることを。

私が声を出すこと躊躇していると、柊花乃は私の頬を両手でピシャリと挟み込み話し始める。


「今、あんたの前にいるにはウチや。他の誰でもない。ウチはあんたの才能認めてる。だから、演技でも何でもええからこのネタに恥ずかしくない喋りを見せてぇな!」


柊花乃の顔がいつになく真剣だった。

このネタに恥ずかしくない喋りを見せろって?

出来てれば一回目でやっとるやろ!


「、、、ムカつくわぁ。」


両頬の痛みが私の何かを変えた気がする。

今はこの目の前の存在をギャフンと言わせてやりたい。

私だって出来る。

違う、このネタは私にしか出来ないのである。

だってこれは私の言いたいことなのだから。


「、、、噛んだら殺す。」


私はそう呟くと何かが変わった雰囲気を感じた柊花乃は私のノートに目を移す。



ーーーーー、、、。

2回目の読み合せはなぜかお互い息を切らしていた。

時計を見ると養成所の下校時刻がもう近付いていた。


柊花乃は肩で息をしながら私のノートを片手に持ちながら呟く。


「これ、ホンマにボリューム減らさんと、死ぬ、、、。」


あれから私たちはずっと喋り倒していたようだ。

柊花乃はしんどそうにしているものの、どこか表情は楽しそうだった。


「、、、羨ましい。」

「え、何が?」


お互い息をするのもやっとの姿で話す。


「そんな風に、笑えるん。わ、私、あんま笑われへんから。」


ふらつく足元を何とか壁に寄りかかりながら目の前の死にかけの相方を見やる。


「なに言ってんねん。、、、今のあんたの顔、誰よりも楽しそうやんけ。」


そう言われると不思議に思いながら教室の端に置かれた鏡を見てみると、そこには何とも清々しい笑顔を見せる美女がいた。

それが私である。

久々に見た自分の笑顔を確認すると、安堵感からか足の力が抜けてしまった。

自分の表情が見えなくなると、流れる額の汗を拭い上着を脱ぎ捨てる。


「そういえば、私らのコンビ名、どうする?」


途切れ途切れの息を整えながら、私は柊花乃に声をかける。


「そういえば、そうやったな。どないしよ、、、?」


彼女もまた力尽きたようにその場で大の字になって寝転ぶ。


「もう、それでエエんちゃう?」


彼女は後頭部をあげながら上下反転した視界で私のタンクトップに書かれた文字を指差し投げやりに答える。


これが私たち「ロックンロールガール」の誕生の瞬間だ。

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