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見知らぬ場所

今後週1回の投稿ペースで定期更新していくつもりです。

 

 ぼんやりと揺蕩っていた意識が徐々に水面に上がってくる。

 目が覚めた俺の眼前に広がっていたのは一面の岩肌だった。


「ここは……どこだ?洞窟?」


 そう。そこは先ほどまで俺がいたであろう巨大な合金建造物とは打って変わり、うっすらとろうそくの明かりで照らされた洞窟だった。気を失う直前まで確実に俺はあの建物にいたはずだ。それがなぜ目を覚ましたら洞窟にいるんだ?

 そう周りを見渡していると、ふと酸っぱいような甘いような臭いが鼻をかすめた。


「何の匂いだ……?」


 見下ろすと作業着にべったりとゲロが付いていた。まだ湿っている。

 ()()湿()()()()()()気絶してからそんなに時間が経ってないのか?


「考えたって何もわかんないか」


 そう、いくら考えたって意識を失っている間の事はわからない。なら今すべきことは、


「今すべきことは、この洞窟の出口を探す事。」


 大事な事を口に出して再確認する。頭で考えるだけではダメだ。想像している半分も曖昧なことしか考えられていないことがある。


「……よし」


 一歩足を踏み出した。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「それにしても広いな、本当に洞窟か?」


 壁沿いを歩きながら色々と思考を巡らせる。この洞窟、とてつもなく入り組んでいるのだ。至る所で道が分岐しており、とてもじゃないが全ての道を見て回れる広さじゃない。


「それに殆どの道がまっすぐなんだよな…もしかしてここって……


 そこまで言って俺は黙った。足音が聞こえたからだ。恐らく10mほど先にある十字路。そこに何かいる。

 ザッザッザッと足音はどんどん近づいてくる。もう少しですがたが見えると言うところで、最初に角から出てきたのはツルハシだった。

 全身から緊張が抜け落ちるのを感じた。やはりここは人工的に作られた坑道だったのだ。彼は鉱夫に違いない。彼に出口を教えてもらおう。

 そう思って近づいた俺の目に次に映ったのは岩だった。より正確に言うと人型の岩。頭部や胸部と思われる部分が所々が欠けておりそこから腐った肉が露出している。俺のゲロとは比べ物にならない程の激臭が漂ってきた。


「アグッ…‼」


 余りの匂いに嘔吐しそうになるが、胃にほとんど何も入っていなかったのが幸いしたのかえづくだけで済んだ。だが、今の音であいつが確実にこちらを向くのが分かった。

 近づこうとしなければ、静かに息を潜めていれば或いは気づかれることもなかったのかも知れない。しかし、残念なことに人間がいると思った俺はそんな警戒など全くせずに近づいてしまっていた。

 足どころか指の一本すら動かすことが出来ない。目をそらせない。もし少しでも動いたら、もし少しでも奴から意識を背けたら、その瞬間に俺の体は肉塊にされるんじゃないか?今から何をしても無駄な足掻きにしかならないんじゃないか?

 そんなことを考えている間にも奴は少しずづ俺との距離を詰めてくる。


「フーーッ‼フーーッ‼」


 歯を食いしばり何とか足に力をこめる。動かない。

 もう目と鼻の先まで奴が近づいてきている。動かない。

 つるはしを振り上げる。動かない。


「動け!動け動け動けェ‼‼」


 バギッ‼


 生きている。

 後ろに尻もちをつくことしか出来なかったが、少なくとも死ななかった。つるはしが振り下ろ……


「振り下ろされてない……?」


 顔を上げた俺の目に映ったのは武器を振り上げたまま顔面のほとんどが消滅した怪物の姿だった。


「おーい、生きてるかーい?」

「これで死んでたらあなたのせいだからね」

「攻撃の前に殺ったから大丈夫デショ」


 どこからともなく聞こえて来るそんな間の抜けた声。遠くの暗闇から5人ほどの男女が現れた。


「お、生きてるね、こりゃ良かった。立てるかい?」


 近づいてきた男にそう言われて立ち上がろうとしたが足にも腰にも力が入らなかった。


「すいません。どうも腰が抜けてしまったみたいで……」

「まぁ、しゃーねぇさ。手貸してやる……ん?」


 俺が男の手を握ると男は顔をしかめた。


「ピート、抗態薬(レジストポーション)って残ってる?」

「残ってるけど、何?その子状態異常なの?」

「あぁ、中度魔力酔いと恐怖(フィアサム)だ。そりゃ立てない訳だ。」

「へぇ……よく回避行動取れたわね。」

「あ、あの。さっきから何の話を?」


 よくわからない単語を矢継ぎ早に話され、つい話に割り込む。


「こりゃ悪い。その、なんだ、根性座ってんなって話だ。」


 男はそう言って青い液体の入ったガラス瓶を差し出してきた。正直信じてもいいのかわからなかったが、動けない俺をわざわざ毒で殺すようなことはしないだろうと思い、その液体を飲むことにした。


「苦っ」

「我慢なさい。それでもかなりえぐ味を抑えてあるんだから。」


 その液体は透き通ったその色からは想像できないくらい舌に残る嫌な苦みを有していた。が、その苦みに耐えているといつの間にか足を動かせるようになっていた。まだ少ししびれが残っていたが、ゆっくりと立ち上がる。


「ありがとうございます、助けていただいて。皆さんが来てくれなかったらどうなっていたか……」

「気にすんなよ挑戦者(チャレンジャー)は持ちつ持たれつさ。()()()()()


一拍開けて男は続ける


「このまま出口まで連れて行ってやりたいんだが、そうも行かん。君が何者かわからないからだ。」











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