子どものこない家
今回の出張は新規顧客への挨拶がメインだったので、小難しい折衝はなかったし、向こうのコンプラうんぬんで、接待もなかった。
だからあっさり終わり、日帰りもできたわけだが、どうにも家には戻りたくなかった。
妻は長くなるだろう不妊治療への覚悟を決めたらしい。だが、正直俺はどうでもいい。
ただでさえ育てるのに金がいるのに、その子どもをつくるのに大金を払ってまでやる必要があるのか。
そんな金があれば、妻とレストランや旅行へ行く方がいいし、後輩にもおごってやれる。
孫は姉ちゃんがつくってくれたので、親も心配しないだろう。
来月には精子を採りにいかないといけないらしい。
だるいし恥ずかしい。なんでこんな情けないことを俺がしなくちゃならないんだ。
妻がヒステリーを起こすので、仕方なく予約までは付き合ってやったが、また家に帰れば覚悟の程を聞かれるのだろう。
俺は自費でビジネスホテルをとり、仕事が立て込んでいるからと帰る予定を延ばして妻に連絡した。
だが出勤もあるし、今日こそは帰らないと怪しまれる。本当にだるい。
妻には、もう何ヶ月も触れていない。
正直、ボディタッチしてくる後輩の子の方が気になっている。
セックスが子作りに切り替わってから、妻はややこしい家族にしか思えなくなった。子作りに躍起になってる女には興奮しない。
今日も深夜に帰って、翌日は早く出よう。