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死んだ男

俺は、共働きの貧しい家に生まれた。

コンクリートの壁が剥がれ、そこに斜めになったポスターがかろうじて貼りつけられている。


物心ついたとき、そのポスターの中の微笑む女に何かムズムズするものを覚えた。


俺は学校へ行ったり行かなかったりだった。

都会では、受験戦争で子どもが建物に詰め込まれているらしい。


俺はそういうことにならなくてよかった。お袋は露店でシャーピンを焼いており、俺もときどきそれを手伝った。

出しっぱなしの鉄板に油を引き生地を焼く。手にいつもの熱気がくる。しばらく焼いていると、涼しい風が汗ばんだ頭皮を抜けてゆき、気持ちがよかった。


お袋はゆっくり腰を伸ばしながら家へ向かっていく。手伝ったところで、お袋は親父と喧嘩をしにゆくだけで、何も良くなることはない。でもそれもいつものことだ。


俺が9歳の時、いじめが始まった。

親父は俺を嫌っていて、近くに住む叔父もその子どもも、後ろ盾のない俺をぞんざいに扱った。


13歳になると、怪我をするようになった。

お袋は、俺を守りたくて親父と喧嘩していたんだと思う。でも、俺は毎日誰かしらに殴られ続けた。


ある時、学校に毎日通っているという従兄弟が、学校の友達を連れてきて俺を殴り始めた。

その友達は、こんなクズ見たことないと心底愉快そうに俺をぶってきた。

学校とやらに毎日行っても、こんな風になぶる奴にしかなれないのか。クズはお前の方だと、俺はそいつを睨んだ。


そいつは、初めて人をぶったんだろう。エスカレートの加減が分からなかった。

気づけば、俺は側にあった鉄のヘラで頭をぶっ叩かれていた。


血が一度に抜けてガクガクと体が震える。視界が黒く狭まり、青ざめた顔の従兄弟と夕焼けが見えた。


最期くらい、もっといいものを見て死にたかった。

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