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24.これの何が楽しいのか…

 薬草採取を終えたサン達は、冒険者ギルドに戻って来ていた。

 仕事中、少々トラブルはあったが、結果としてプラスになったので問題ないだろう。


 サンは手に持った刀を見て、改めて良い拾い物をしたと感想を持つ。


 それなりに腕の立つ傭兵が使っていただけの代物というのもあるが、ここまでの武器はミルローズの記憶を探っても出て来ない。

 唯一、比較できる物があるとすれば、騎士団長が使っていた魔槍くらいだろう。素早さ上昇と風と炎の魔法能力、更に頑丈という能力を持っていた。

 それほどの魔槍でも、この刀と比べると一段落ちてしまう。


 魔法耐性に身体能力上昇、自己再生能力や他にも武装という隠された能力もあり、優秀な一本であるのは間違いなかった。

 国の宝物庫にはこれ以上の物もあるだろうが、表に出てきていない以上、考える必要もない。


「嬉しそうだね」


「ええ、良い拾い物をしましたから」


 アルミーがサンの表情の変わらない顔を見てそう呟く。

 正義のアサシンという頭の痛くなるようなものを目指していただけあり、人の感情の機微を読み取るのを得意としているのかも知れない。

 その割には、直志といがみ合っているのだが、それは彼女なりのコミュニケーションなのだろう。


「次の方どうぞ」


 ギルドの受付に呼ばれて前に進む。

 カウンターに依頼書と品物である薬草二十束を提出して、内容を確認してもらう。


「……はい、確かに受領いたしました。ではサン様、アルミー様、ギルドカードを提出して下さい」


「はい、今回でMランクに昇格だったね」


 この場合のランクは実力の方ではなく、冒険者ギルドに対する貢献度の方になる。

 どんなに実力があっても、信用がなければ重要な仕事は任せられない。至極真っ当なランクではあるが、これに納得出来ない者も中にはいる。


「頼む! この依頼を受けさせてくれ!」


 そう、隣の金髪イケメンのように。


 なんだ何だと周囲の注目が金髪のイケメンに集まり、その動向を伺っていた。

 そんな人物を無視すると、サンはギルドカードを提出して昇格の処理を待つ。アルミーも特に興味は無いのか、小さい口を空けてあくびをしていた。

 その仕草が猫を彷彿とさせて、サンは思わず頭を撫でてしまう。

 直志の一部とはいえ、ミルローズの体を使っている以上、女性の感情に流されしまうこともあるのだ。だから可愛いと思ったら、思わず触れてしまうのも仕方ない。


「ですから、Sランクの貴方ではエリクス草採取の依頼は受けられないんです。それに、実力もM−では死にに行くようなものです。諦めて下さい」


 エリクス草とは、あらゆる病を治すと呼ばれている薬草である。実際は、病に効く材料の一つに過ぎないが、その幅が広く万能薬の一つとも呼ばれていた。

 そんなエリクス草が生息しているのは、サン達が採取に行く森の奥地にあり、そこは凶悪なモンスターが跋扈する場所と知らされている。


「それでもお願いします! 妹が死にそうなんです! エリクス草がないと助からないんです!」


 必死の声を聞いて、サンはようやく其方に目を向ける。別に興味は無い。ただ、直志が好みそうな話題だなぁと思ったに過ぎない。

 隣には頭を下げた金髪の少年。

 その隣には彼の仲間であろう二人、魔法使いの少女と戦士の少年の姿があった。


 頭を下げていた少年は頭を上げ、真っ直ぐに黄金の瞳で受付嬢を射抜く。


「うっ!?」


 受付嬢が胸を押さえて狼狽している。

 決して胸を撃ち抜かれたからではない、少年がイケメン過ぎて受付嬢のドストライクだったに過ぎない。


「ダメなものはダメです! 死ぬと分かっているのに行かせる訳にはいきません!」


 それでも受付嬢は仕事を真っ当する。これが直志ならば「受付は出来ないけど行くのは勝手だよ」と言って追い払っていただろう。

 イケメンは貴重なのだ。世界の宝なのだ。だから失う訳にはいかない。

 受付嬢は受付嬢なりに世界を思って判断したのだ。


「なら、そこまで行ける人を紹介して下さい! その人に依頼すれば、取って来てもらえますよね!?」


「そ、それはそうですが……」


 言葉を濁す受付嬢。森の奥に行くには、L−ランクの実力は必須になる。それもパーティ単位でだ。そんな実力者は、相応に依頼料は高額になる。しかも厄介な性癖を持った奴もいるので、少年は別の要求もされるだろう。

 それはそれでアリだなと思わなくもない受付嬢だが、もう一つ問題があった。


「現在、L−ランク以上の冒険者は王都に向かっています。残念ながら、この依頼を受けられる方は……」


「そんな」


「少しよろしいですか?」


 絶望に染まる少年。

 その顔に見覚えのあったサンは、声を掛けた。

 見覚えと言っても、サン自身が見たのではなく直志の視界を通じて見ていた相手だが。


 少年の名前はライオネルと言い、直志とは共にドブさらいをした仲間でもある。


「貴女は?」


「失礼しました。私はサン、こちらはアルミーと申します。何やらお困りのようでしたので、お力になれたらと声をお掛けしたのですが、ご迷惑だったでしょうか?」


 丁寧な対応に慣れていないライオネルは驚いて「あっ、えっ」と呟いてしまう。

 その頃になると、サン達を担当していた受付も処置が終わったようで、ギルドカードと報酬を渡してくる。


「あちらでお話ししませんか?」


 酒場を指差すサンの提案に反対することはできず、ライオネルは頷くしかなかった。




「俺はライオネルと言います。こっちの魔法使いはマイ、戦士はルークです」


 ライオネルからの紹介で、よろしくと頭を下げる二人。

 魔法使いの少女は美しい黒髪をしており、青いつぶらな瞳に、少し困ったような眉、他もバランスの取れた容姿をしており、美少女と呼んで差し支えなかった。そして装備も、華美ではないが一級品の物で身を固めている。

 見た目だけなら他二人と遜色ないのだが、見る人が見れば、一人だけ浮いているように見えただろう。


 戦士のルークは茶髪の少年で、元気が取り柄のような印象を受ける。容姿も決して悪い訳ではなく、直志よりも良いのだが、ライオネルと比べると、んーとなる。

 装備はまだ貧弱ではあるが、その肉体は鍛えられているのが分かる上、技術もそうとうな相当なものだと思われる。


 最後にライオネル。

 金髪イケメン、終わりである。


「先程、妹さんが大変だと」


 受付に言っていた内容を思い出す。

 妹が死にそうと言っていたが、そこは敢えて濁した言い方をした。しかし、その事実を改めて実感して、歯噛みしたライオネルが悔しそうにして口を開き内容を話し始めた。


 何でも妹は魔力量が多いせいで、体の機能を阻害しているらしい。

 その治療で錬金術師が作る魔力を解消する薬を購入していたのだが、今回材料が手に入らなかったらしく薬が作れなかった。

 何でも、錬金術師ギルドで騒動が起こっているらしく、その影響でどこも素材が無い状況に陥っているそうだ。


 だが、この状況をはいそうですかで済ませられない。何せ妹の命が掛かっているのだ。どんな理由があろうと、諦める訳にはいかなかった。


「それで、ギルドに依頼を受けに来たと?」


「はい、そうすればどこに群生している場所の情報が手に入ると思ったんです」


 冒険者ギルドでは、冒険者が持ち帰った情報の買取もしている。勿論、何から何までというのではなく、信用ある冒険者から役に立つ情報だけではあるが。


「そうですか、では私がその依頼を引き受けても宜しいですか?」


「え? それはいくら何でも無理じゃ。森の奥に行くのに貴女だけでは……」


「問題ありません。こちらをご確認下さい」


「こっこれは!?」


 差し出したのはギルドカード。

 黄色のラインにFの表示。それを見たライオネル一向は驚いて、口をあんぐりと開いていた。


「もしかして、最近現れた最高ランクって……」


「そうよ、サンのことよ!」


 何故かここでしゃしゃり出て来て、サンをヨイショするアルミー。

 サンは、きっとこういう私スゲーを直志はやりたかったんだろうなぁと虚しい気持ちになった。


「凄い! Fランクなんて初めて見ました!」


「マジかよ!凄いな!」


「うん、この人に頼んだらメアリも助かるよきっと」


 皆がサンを称賛してくれるが、何も心に響かない。というより、ライオネルは既にFランクを見ている。ドリーという竜殺しの冒険者と知り合っているのだが、残念ながら本人は嘘だと思っていた。


 まあ、それは良いとして、話しを進めないと何も始まらない。


「一度、妹さんの容態を確認させて下さい」

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