14.労働の喜びを知ってしまった
「Sマイナスさんおはようございます」
「おはようSマイナス」
「今日もそのネタ引っ張るんですかね?」
宿に泊まり、朝起床して部屋を出ると丁度二人と出会した。
そして、昨日からのネタを開口一番にぶっ込まれて、俺のテンションはダダ下がりである。
一体いつまでそのネタを擦るのだろうか?
その度に俺の復讐心に火が灯ってしまう。
あれ?でもこれって、イジメられっ子が復讐する過程に似てないか?
「そうですね、もう辞めておきましょう。タダシを喜ばせるだけのようですし」
「え゛っ!?今ので喜んでんの!? 引くんですけどー!」
「喜んでねーし!寧ろ恨んでるしー!ぜってー許さねーしー!!」
そんなやり取りをして、他の宿泊客に迷惑をかけながら宿を出る。
向かう先は、勿論ギルドだ。
朝食は宿で摂ったのだが、そろそろ働かないと路銀が尽きそうになっている。
「なあ、馬車から持って来た宝石って売れないのか?」
「確かにこれを売ればひと財産ですが、それ以上にデメリットが多くなりそうなので、止めた方が良いでしょう」
「どうしてだ?金になるなら問題ないだろ?」
「バカね、タダシは。サンが持ってる物にはラスタンドル家の紋章が刻印されているのよ。そんな物を売れば、宝石の出所を聞かれて、最悪投獄よ。売るなら、関わりのない遠くの国に行くか闇市で流すしかないわよ」
「じゃあ闇市で……」
「はあ、分かってないわね。闇市だと、相場の十分の一で買い叩かれるのがオチよ。そんな事も知らないなんて、どこのお坊ちゃまよ」
「ぐぬぬっ!」
言い返せない。現代知識があるのに、この世界を知らなさ過ぎて何も言い返せない。
どちくしょ〜。
悔しさのあまりサンに視線を送るが、笑顔でそれが現実だと突き放される。
世界が違えば常識も違う。
それを実感するやり取りだった。
そんな悔しい思いをしながらも、冒険者ギルドに到着する。
ギルドに入ると、何故か注目を集めてしまう。もしかして、俺がS−ランクだからって馬鹿にしているのだろうか?
だったら、絶対にやってやろうと思い耳を澄ませると、聞こえて来たのはサンに対するものだった。
「あれがFランクか、まだ子供じゃないか」
「人類の到達点。ファイナルランクになるのに、年齢は関係ないって話だ。選ばれし者の称号か」
「どうする?パーティに誘うのか?本当にFランクなら逃す手はないぞ」
「何だいあの格好、冒険者舐めてんのか?」
「お貴族様か?どうせ金を積んだんだろうさ」
尊敬や勧誘の言葉から、嫉妬からか悪意ある言葉までサンに向けられていた。
「何よアイツら!サンが凄いからって嫉妬して」
「止めとけ、本人が気にしてないのに、俺達が怒ったら意味がない」
怒るアルミーを諌めて、サンを見る。
周囲からいろいろと言われているのに、気にした様子はなく、その足取りに迷いはない。サンにとって、悪態を吐く奴らなど取るに足らない存在なのだ。
「なあ、Fランクの隣にいる奴、弱そうじゃね?」
「何だよ知らねーのか、あれが噂のSランクマイナスさんだ」
「あれがそうなのか!?やっぱ弱そうな上にブサイクなだけはあるな」
大丈夫、俺は怒ってない。
そもそも、俺のことだとは限らないからな。
「Sマイナスさん、言われてるわよ」
うっさい。
「隣の娘は誰だ?」
「さあ、知らないなー。10歳くらいか?」
「どうやってギルド登録したんだ?お貴族様の力か?」
「胸が無いな」
「無いな」
「男じゃないのか?」
「男の娘ってやつか」
「アリかナシかだったら、アリだな」
「アリだ」
「カーリーのライバルが現れたな」
「勝手にアタイの名前出さないでもらえる!」
「ちょっと殺してくる」
笑顔のアルミーがナイフを引き抜き、戦闘モードに移行する。殺気は無く、その存在が揺らいで薄くなっていく。
おお、これが暗殺者の技か。
って違うわ!
「待てってアルミー、そんな事で目くじら立ててたらキリがないぞ!胸が無いくらい何だ!幼いからって何だ!男の娘に間違われたからって何だ!それがアルミーの魅力なんだ!」
「……タダシィ」
涙目のアルミーは俺の言葉で止まってくれた。馬鹿にされて悔しいのだろう。俺も悔しい。だが、一番言われているサンが耐えているのだ。ここで無碍には出来ない。
「分かってくれたか?幾ら胸なくたって需要はあるんだ。俺は無理だけど、きっと誰かが受け止めてくれる。俺は無理だけどな。しかし、男の娘か……ブホッ!?あっごめん、ツボに入った訳じゃないんだ。大丈夫、それも、アルミーの、魅力、だ、あははは!」
「ムキー!!!」
ぶはははっ、やべー、笑いが止まらねー。
アルミーの兇行から逃げ回る。
どたどたとギルド内を走り回り、昨日と顔ぶれの変わっている酒場に突撃して、アルミーの兇行に巻き込んで行く。
「おいこっちくんな!」
「あのちびっ子良い動きしてるぞ!」
「ナイフ投げて来るぞ!何本持ってんのこの子!?」
「ヒィ!?アタイは関係ないだろ!?」
「あー!?俺の飯がー!!」
「避けるなー!!」
いい気味だと思いながら酒場を一周すると、サンの元へと駆け寄る。
ゴールはここで良いだろう。
「スッキリしましたか?」
「まあな。言われっぱなしは、やっぱダメだわ」
「ダシにされたアルミーは可哀想ですけど」
「そんな事はない。見てみろよ、あの活き活きとした姿を」
酒場の方に目を向けると、暴れ回るアルミー。M+という冒険者の中では、なかなかな実力があるせいで、殆どの冒険者がボコボコにされている。
「だーれーがー男の娘だー!言ったのはこの口かー!」
「や!やめ!俺じゃない、俺は胸の話をしたダグホッ!?」
「しねー!!女の敵め!次はお前だー!」
「ア、アタイ!?何も言ってないよ!本当だよ!待って、掴まないでー!」
「今のうちだ!カーリーが囮になってくれている間に逃げろ!この乳無しは凶ぼウオホッ!?」
「ダシャー!」
流石のアルミーもナイフは悪いと思ったのか、しっかりと肉体言語で語り合っている。
何故かカーリーがアルミーの左手で気を失っているが、それを気にしてはいけないだろう。
「ギルド側も静観しているので、放置で問題なさそうですね。私達はクエストボードに行きましょう」
「まじか、流石に止めると思ったぜ」
「今止めたら、あの怒りがタダシに向かいますよ」
「早く依頼受注しようぜ、俺たちの初仕事だ!」
凶暴化したアルミーは放置の方向で、俺達はクエストボードに向かう。
ボードには多くの張り紙がしており、その全てが仕事の依頼だそうな。またクエストボードにはL、M、Sと上に表示されており、仕事の難易度を表しているのではないかと推察される。
サンはその中の、Sと表示されたボードに向かう。
「なあ、なんでSランクの仕事なんだ? サンが居ればLランクの方が良いんじゃないか?」
「タダシはギルドカードを確認しましたか?」
「ん?ああ、見たけど、これがどうかしたのか?」
「裏面を見て下さい。タダシのカードには青い横線とS−ランクの表示がされているはずです」
「……されてるな」
「こちらが私のです」
差し出されたサンのギルドカードには、青い横線とFランクの表示がされていた。
Fランク……、こんなに響きが悪いのに、この世界では最強の称号。
俺の心が嫉妬の炎で燃え尽きてしまいそうだ。
「そこは見なくて良いです。見るのは、この青い線です。クエストボードを見て下さい、Sランクが青色で書かれています。つまり、私達はSランクという事です」
「どういう事?サンはFランクだろ?」
「それは実力を示すものです。このSランクというのは、ギルドランクになります。実力とはまた別物です。簡単に言うと、信用を値する表示です」
「んー、どうしてわざわざ別るんだ? それだと、実力を測った意味ないじゃん」
「それはギルドの仕事に関係しています。ギルドは他所から仕事の依頼を引き受け、冒険者に斡旋することが業務です。 ですが、依頼を均等に振り分けても、その依頼に実力が見合っていない者、途中で放り出す者などがいれば、仕事の達成率は格段に下がってしまいます。そうなれば、ギルド側にとって不利益にしかならない。だから、実力と信用の二つの基準を作ったのです」
「そうか、現実はシビアだなぁ。 にしても、よく知ってんだな」
「昨日、タダシが出て行ってから説明がありましたので」
「……」
何も言えなくなって、改めてクエストボードを見る。青のSランクの他に、黄色のMランク、赤色のLランクと張り出されている。
張り出された紙には、必要と思われる実力の表示もされており、それ以下の実力の者では仕事を引き受けられないのだろう。
ん〜、ん?んん?んんんっ!?
「サンさんサンさん!」
「どうしました?」
「俺が受けれる依頼が無いんですが、この場合どうしたらよろしいですか!?」
クエストボードを見ると、実力の欄が全てS以上になっており、モンスターの討伐は一番低くてもS+が表示されている。
「馬鹿ですねタダシは、よく見て下さい。依頼の中には、実力の欄に何も書いてない物があります。これは実力不問の依頼です。タダシにはピッタリですよ」
ボードから取った一枚の依頼書は、役所から出された町のドブさらいの依頼だった。
依頼書を持つ手がプルプルと震える。
俺が、この俺が、異世界から転生した主人公たる俺が、ドブさらいだと〜!?
怒りのボルテージが上がり顔が真っ赤に染まる。
「では、私たちは森に薬草採取に行きますので、ドブさらい頑張って下さい」
「しっかりするのよ、ドブさらい!」
「……」
サンとアルミーは、領都アルマニアの北側にある森に向かう。目的は、ギルドで受けた薬草採取の依頼を達成する為だ。
薬草採取という、一見簡単そうな依頼だが、薬草の専門知識や採取方法の知識も必要な上、森に現れるモンスターから生き延びないといけないので、実力のランクはM−となっている。
つまり俺は、この依頼を受けれなかったのだ。
俺達パーティなんだから、みんなで一緒に行こうよと提案しても、
「二手に別れたら、それだけ収入が増えるので、タダシは一人で頑張って下さい」
と、温かいお言葉を頂いた。
どうして、最弱の俺が一人なのか、みんなでドブさらいやったら良いじゃんと更に提案しても、絶対に嫌とその目が訴えていた。
「……行くか」
冒険者ギルドでレンタルしたドブさらい用の保護具と道具を持って、待ち合わせ場所に向かう。
俺は今、初仕事に胸を躍らせて、希望に満ちた顔をしているに違いない。
「ママー、あのお兄ちゃん、白目剥いて涎垂れてるよ」
「あれはね、人生の敗北者なの。絶対にあーなっちゃダメよ」
「はーい!」
歩くこと十分。
ギルドで教えてもらった場所に到着する。
そこは、一見公民館のような作りをしており、ガラス戸から見える室内では、ジジババがお茶を飲み談笑していた。
ここはジジババの憩いの場なのかも知れない。
まあ、そんなことどうでも良いとして、公民館の表に立っている俺と同じ格好をした人達。
年齢は様々で、お年寄りから俺より若い奴までいる。そして、全員男である。
くそ、ここで美少女の一人でも居ればやる気が出るのに、まったく気の効かない仕事場だ。
「いち、に、さん……じゅう、これで全員だな。じゃあ、仕事の内容を説明するから集まってくれ」
ドブさらいの依頼は、地区から出された物で、説明するドワーフの髭もじゃおじさんは、この地区の公務員的な職員なのかも知れない。
ドワーフは髭がモサモサ生えているので、この人をドワーフと判断したが、もしかしたら、単に身長の低い小太りのおっさんなのかも知れない。
仕事の内容は至ってシンプルだ。
側溝の蓋を開けてドブをスコップで掬い、蓋を治して行く。
たったこれだけの仕事内容だが、その範囲がかなり広く、思っていたより重労働だ。
「ぐぐぐっ、腰がやばい」
腰を曲げてドブをさらっていくが、一向に進まない上、溜まったヘドロが重く、かなり臭い。保護具のマスクを貫通して来るので、体に染み付いている可能性まである。
終わったら、公衆浴場に行こう。
この仕事が始まる前に、ドワーフのおじさんに無料券を貰ったのは、この為なのだろう。
「はあ、はあ、はあ、ぜんぜん終わんねー」
「兄ちゃん、まだ始まったばっかなのに、もうへばってんのか?」
「かー、最近の若い奴は軟弱だなー」
「あはは、うるさい老害」なんて言えたらすっきりするのだろうが、そんな度胸もなく、サーセンと謝るのが精一杯だった。
愛想笑いをしていると、何を勘違いしたのか、腰を曲げるんじゃない落とすんだと、実演して見せてくれた。
へー凄いっすねーと感心していると、気を良くした普通のおっさんがオラオラと一気にドブさらいをやってくれる。
この調子でおなしゃすと思っていると「うっ!?俺の持病が悪化した!」と腰に手を当ててダウンしてしまった。
その様子を見て、全員が深刻な表情をする。
これで一人脱落だ。
残りは九人となった。
ここから、いや、もう始まるのだ。
命(腰)を賭けたデスゲームが。
って、なんでやねん。
どうしてデスゲームが始まってるんだ。
この人達のノリに乗せられてしまって、思考が変な方向に逸れてしまった。
馬鹿やってないで働くかと、ドブさらいに戻る。一人脱落したのは間違いないので、負担が増してしまったのだ。遊んでいる暇はない。
痛む腰をこれ以上いじめない為にも、普通のおじさんに教わった方法を採用する。
すると、腰への負担は確かに減り、作業が捗るようになって来た。
「おう、兄ちゃん、スジが良いな。それとも、俺の教えが良かったのか?はははっ!」
うるせー。
腰を痛めて、眺めているだけのおっさんが師匠面してくる。
正直、うざいだけだ。クビにしてくんないかなぁ?
いらいらしながらも、黙々と仕事を続けていく。汚いし臭いしキツイし3K職場そのまんまだが、何故か放り出す事が出来ない。
俺はこんなに責任感の強い人間だったのだろうか。こんな事する為に異世界転生した訳ではないと言うのに、動き続けてしまう。
「おーい、休憩にしようぜー」
「はい!」
やべー、いい汗かいて気持ちー!!
コレが労働の喜びというやつか。こんなに清々しい気持ちになったのは生まれて初めてかも知れない。
「ほらよ、よく働くな。なかなか良い動きしてるぜ!」
「ありがとうございます!」
手渡されたお茶を貰い、一気に流し込む。
いい汗かいた後の一杯は格別だ!
ドブをさらった場所からは離れているが、臭いは微かに漂って来る。だが、それも気にならないくらい、俺はやり甲斐を感じている。
「やっぱ、俺の教え方が良かったんだな!」
役立たずのおっさんが何か言っているが無視だ。ドヤ顔が腹立つので、絶対に視界に入れてはいけない。周りもこいつ何言ってんだ状態だ。だが、そんなアウェイな中でも、気にしてないのか、役立たずのおっさんは喋り続ける。こいつのメンタルは化け物かも知れない。
「兄ちゃんは、きっとデッカい男になるぜ!俺が保証してやるよぉ!」
まったく嬉しくない。
愛想笑いをして、視線を逸らす。それを照れていると思ったのか、おっさんは手を叩いて笑っている。
将来、いや、近いうちにデカい事をやるだろう俺に、何を当たり前のことを言っているんだ。
もしかして、俺が見出したとか、俺が腰の使い方を教えたとか言い出してドヤるつもりだろうか?
……あり得る。
悲しいことに、このおっさんの嗅覚は本物だ。
なにせ、俺の素質を見抜いたのだからな。
くっ、どうやったらこのおっさんのドヤ顔を阻止出来るんだ!?
「あっちのあんちゃんと合わせて、豊作だな〜おい!」
「……あっちの?」
俺の葛藤を他所に、おっさんが何かを言った。それが気になり聞き返すと、おっさんはドブの方を指差して答えた。
そこには、休憩だというのに未だ黙々と作業を熟す少年がいた。
金髪にエメラルドの瞳、肌は色白でイケメン。このドブ臭い中でも輝く存在感。必死に働く姿が、額から流れる汗が一際その魅力を引き立てていた。
この少年を見て思った。
「おい、そこの少年!今休憩中だろうが!お前が働いてたら、俺達が悪いことしているみたいだろうが!?」
まるで俺達が、子供だけを働かせている悪者に見えるのではないかと。
「お気になさらずに、俺が勝手にやってるだけですから」
「そうじゃねーんだよ!大人の俺達がサボってるように見えるのが問題なの!分かる!?先輩方を見ろ!少年の行いに憤慨していらっしゃるぞ!?」
「いや、俺らは別に……」
「働きたかったらどうぞと言うか……」
「若いんだし、好きにさせたらええやん……」
「なんか、サボっててごめんな」
「そうだぞおっさん!腰を言い訳にサボってないで働け!」
「口先だけの老害が!」
「テメーのせいで俺達の負担が増しているんだぞ!」
「そこまで言わんでもいいやん」
皆がおっさんを責め立てる。
結局のところ、皆の気持ちは一緒だったのだ。
おっさんうざい、黙ってろ、このハゲ!これが皆の想いなのだ。
だから、ちゃんと反省しろよ、おっさん……ってぇ!?
「おっさんの事なんかどうだっていいんだよ! お前も休憩しろっ『カツン』て?」
俺が必死に少年を恫喝していると、黙々と作業していた少年のスコップの先から、軽い金属音が鳴った。
少年は眉を顰めながら、その金属音の元を拾い上げると、
「あっ金貨だ」
と黄金に輝く硬貨を見て呟いた。
魔法なのか、少年は手から水を出して金貨を綺麗に洗い流していき、それを手にどうしようかと迷っていた。
「あんちゃん、運が良いな。貰っとけ貰っとけ!ここで見つかったやつは、見付けた奴の物だ!」
「いいんですか?持ち主がいるんじゃ……」
「ドブに落ちた物なんて、誰も取ろうとはしねーよ。前に金貨の入った袋が出て来たが、持ち主現れなくてパーと使っちまったからな!」
「なんですと!?」
おっさんの言葉に思わず反応してしまう。
マジかよ、そんなに金貨って落ちてるものなのか?じゃあ、ドブに落ちてる金貨拾い集めれば大金持ちになるんじゃね?
「何であんたが反応するんだ?」
「そんな話聞いて、落ち着けるかよ!」
俺は少年に一言告げると、俺自身のスコップを持ち反対側の側溝に立つ。そして、スコップを構えると、
「うおおおおーーーー!!!」
全力でドブさらいを開始した。
「おー、凄いな兄ちゃん」
「凄いぞ!この調子で全部やってくれ!」
「お前こそドブさらい会の期待のホープだ!」
ギャラリーの声援を受けて、更に力が漲って来る。気がする。
そして、担当していた地区の全てのドブさらいを終わらせ、その成果の金貨3枚を手に入れた。
「よっしゃーー!!」
俺はこの日、労働の素晴らしさというものに気付いてしまった。
「どうしてそうなるんです?」
どこかの森で、空を見上げた誰かが呟いたとかいないとか。




