思った通りの展開
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「『この前』俺が、このカフェテラスの壁を吹っ飛ばしたんだよ」
「吹っ飛ばす?」
疑問符を口にするパドリックに畳みかける様に俺は、自身の背後に数メートル先の壁を振り向く事無く、親指で指し示す。
「あそこだけ、外壁が違うだろ? 一ヶ月前俺が壊した後だ」
「あっあっのね。セルリル君こんな感じだから僕が弁明するけど、あの時は今回のセドリックみたいに僕が彼をご飯に誘って来ていたら、上級生が彼に因縁つけてきたんだよ。その時に……」
「将来王の元で働く可能性がある奴が目上に対して横柄な態度は良しとしないとか言ってな」
「さっきの授業もそうだけど、確かにその事については正論だね」
「だから? はっきり言って今の教師よりは俺の方が魔法の腕は上だ。そんな奴等に遜る事なんてしねーよ。第一俺は王の手先にはならねえし。それ言ったらいきなり魔法しかけてきやがって!! そん時、上級生が手加減しないでかかってこいっていうから一発かましたら、あんな事になっただけだ」
言いたい事をぶちまけつつ、俺の素行を聞いたのだ。驚愕した表情を浮かべるに違いない。自身の思惑通りに事は進んでいる事に内心ほくそ笑む。そして目の前のセドリックの様子を観察しようとした時だった。3人で囲む席に人影がうっすらと映し出される。その時だ。
「もし、君はセルリル・アンバートかね」
直感でまた面倒臭い奴に声をかけられたと理解する。俺はその問いには答えず沈黙する事暫し。背後の彼は再度口を開く。
「私は問いているのだ。君はセルリル・アンバートで間違いないか?」
「間違いないけど何?」
そう言いつつ振り向く。すると甲冑を纏い、腰に一本の剣。頭はワックスでガッチリ髪を固めた図体のデカい男が立っていた。
「あんた誰?」
「ああ…… 成る程。噂通りの人物のようだな。私はクランドル・ルア・マイザード。君の二学年上になる。交流は確かにない。それに新年度に入ってからは将来を見据え父と同行を共にしていたので無理もなければ、今しがたこちらに戻り、その足で学園に赴いた」
すると、俺以外の二人が席を立ち軽く頭を下げる。その姿を俺は一瞥しつつ、尚も彼に背中をみせていた。そんな俺にフラッグが、耳打ちをする。
「マイザード侯爵ですよ。何世代にもわたり王宮近衛騎士第三部隊長の座に君臨しているんだ」
「そんな事知るか」
すると、背後に立っていたクランドルが喉で笑う。
「全く持って私が次男という立場という事で、嘗められているのか定かではないが、園外にいた私の耳に届く程の、うつけ者という事は理解した」
そう言い切った直後だ。俺の制服の襟を背後から掴まれ、一瞬足が宙に浮いた。その直後、腹部に猛烈な勢いで何かがあたった感覚と同じくして、体中を強打する。一瞬記憶が飛ぶ共に、意識がハッキリした時には、俺は庭園の芝生に倒れていた。すると、腹部に激痛が走り、口内から鉄の味がする。その時、俺の頭先の方がどよめいている事に気づき、ゆっくりと顔を上げた。すると10メートル程先にカフェテラスと仁王立ちをする、クランドル。そしてその背後には騒ぎに常じ生徒が集まっていた。
(成る程)
この状況から推測するに、奴が腹部を殴打し、その勢いで庭園芝生に受け身もとれないまま、打ち付けられ様だ。お陰で、その衝撃により口内を切ったと言った所であろうか。
(やってくれるじゃねーかよ)
息苦しさと共に、体のそこかしこが軋む。特に腹は今でも鉛の様な重みの混じった痛みが続く。だが、このままやられっぱなしなど論外だ。
俺はゆっくり立ち上がると、口に溜まった血を吐き出し、軽く拭う。そしてクランドルを睨む。
「はっ、騎士っていうのはこんなやり方しか出来なのかね。まあしかたねーか。どうせ番犬にすぎねーんだからな。しかもお前の場合小型犬ぐらいの肝っ玉しかねーみたいだし」
「ふん。はたして私が小物かどうか試すといい」
「お前が言うまでもねーよ!!」
そう叫ぶと同時に両手が青白く光り、陣が形成させる。その直後、目の前のクランドルに、無数の鋭利な刃に似た氷柱が降り注ぐ。すると奴は剣をすぐさま抜き、それらを割り、こちらの攻撃を相殺した。そして続けざまに剣をこちらに大きく振り下ろす。
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