平穏な日々? に返してくれ!!
遊びに来て下さり有難う御座います。
心地良い風が頬を掠め、大きな木の根本で寝ころび目を閉じる。ここは、リンザルド公爵の別邸。例のケピアの森に赴く際に立ち寄った屋敷であり、そこの広大な中庭の一角だ。
あの一件から3週間程経過している。まああの後は、いろんな事が目まぐるしく変わっていった。その中でそれなりのインパクトを与えたのが、王が退位され、長男が即位する事。二アグラ宰相は今回の事件の主犯と言う事で幽閉され、その替わりに次男が宰相の地位に就く事となったのだ。そのニュースは国だけではとどまらず、この大陸全土にあっという間に広まった。
(まあそれなりに落ち着いたって事だな)
また俺を勧誘していたのは予想通り、宰相サイドであり、自身の身辺も力量も理解していた彼が、過去の事で追々俺に揺さぶり服従させ、いい様に使いたかったらしい。そんな宰相の手駒の1人マイザード近衛隊長は除名され、二アグラ宰相に負債を名目に加担させられたルファルド伯爵は、罰金を貸せられた。が、以前の負債もあることで払う目処が立たない事から、全ての資産を売却。それと共に伯爵の地位を王に返上し、今は何をしているかわからない。
俺自身ここに滞在している間は学園にも行っていないので、状況知る事も出来ずフラッグがどうなったのか不明のままだ。そんな中、ふと、穏和な笑顔を浮かべるフラッグの顔が脳裏を掠めた。その直後、俺の顔を上から覗く気配がしたのだ。ある程度誰か予想がついた為、あえて無視をしていると、やはり彼が声をあげる。
「ちょっとーー 無視しないでよセルリル」
「うっせーな。タスラム。お前だってこんな所に来てる場合じゃねーだろ?」
「そんな事ないよ。だって私は三男で、兄さん達を影で助ける方だし。だから表だってやることなんて私にはないよ。あ、そうそう。魔女さんまた旅に出たみたい。でも魔女さん今回の事で、今後コネクションとれそうだから、かなりの利点だよね。デルステインさんは日常生活に戻った…… とは言いにくいけど、それなりに生活してるみたい」
すると、彼が俺をマジマジと見ている事に気づき、一気に目を開け起きあがる。
「何だよ!!」
「うん。だいぶ髪の色おちてきたね」
「ったく。これ後どんくらいかかんだよ」
そう言い、肩より下が黒い髪を掴む。この前、長男に扮する為に、髪に色を入れたのだが、それがおちないのだ。除彩液で髪を洗ってはいるのだが、なかなかおちてくれない。なのでこんなツートン的な髪色になっている。流石にこの髪では学園には行けず、髪色が戻るまで、公爵の屋敷でお世話になっている状況なのだ。
俺は憎々しくその髪を見つめる中、タスラムはそんな俺を見てクスリと笑う。
「笑い事じゃねーからな!!」
「ゴメンゴメン。でも、あの変装本当にうまくいったなって。それにね、今回の兄さんの即位の件もこんなに順調に行ったのはセルリルあっての事だからさ」
「はあ? 何だそれ?」
「いやね。セイレーン兄さんって兄弟の中で一番優しい人だし、現に虫も殺せないみたいな感じだろ? それで貴族間でも兄さんは王の器ではないとか常日頃から言ってた貴族もいたんだよ。でもこの前の一件で、君が扮する兄さんが殴りかかっただろ? あれが何か良かったみたい。まあ殴っちゃうのはどうなのって思った者も多少なりいたり、兄さんが絶対言わなそうな事ばかり口にしてたけど、言葉よりビジョンの方が頭に残っちゃってるみたい。大半の貴族は、ああやって自身の手でちゃんとケリをつけようとしてくれた行為に驚いて、共感を得たみたいなんだよ。まあセイレーン兄さんはその場にいなかったからあの時の事は事後報告だったけど、セルリルにお礼が言いたいって言ってた」
「ふん。そんなのどうでもいい。とりあえず俺の目先の問題はこの髪なんだよ!!」
「そんなに学園行きたいの? 友達もいないのに?」
「それがどうした? 俺は図書館に行きたいんだ。今回の事で調べたい事が山程ある」
「本当。セルリルってそういう所貪欲だよね。そうそうライナム先生は解雇処分されたから。流石に大会の時のあのやり方は一般的概念から逸脱しているからね。後、フラッグ君に関しても退学する運びになったよ。まあ状況が状況だからしょうがないけど、彼も被害者だから、私の方でどうにかできればって思ってる」
「ふーん」
その声にタスラムが俺の顔を見た。
「少し安心した?」
「っなわけあるか!!」
「そうそう、安心ついでに。私も正式に学園に通う事になったよ。今度は素性隠すことなく、王弟としてね。だからもうあんな事は起きないし、起こさせない」
「それはようござんしたね」
「ちょっとセルリル。『俺には関係ない』っていう雰囲気じゃない?」
「実際に関係ないだろ?」
「未成年なのに酒場に一緒に行った仲だよね」
「俺は、日頃から行っているし、特に何とも思わない」
「…… じゃあ。この前森で私の背中を守ってくれたでしょ」
「それはあの時それが最前だと思ったからだ。後に先ももうするつもりはない」
「うんーー こんなに色んな事があったのに、まだ距離が縮まらないなんて…… やっぱり親近感が足りないのかな。それこそ今度王弟となると尚の事……」
すると彼は真剣に考える事暫し。いかにも何かひらめいたといった表情を浮かべこちらを見る。
「そうだ。私に対する敬称呼びをやめさえれば良いのかもしれない!! あれって仰々しだろ? あとセルリル。君は今日から私の事を『タス』と呼ぶように。私も『セル』って呼ぶからよろしくね」
「はあ? 何勝手に決めてやがる!!」
「前もそうだったけどやっぱり照れてるの? 私が良いって言ってるんだから気にしなくて良いんだよ」
「照れてもいねーし、お前の許可なんぞどーでも良いだよ!!」
「またまたーー 素直じゃないな。それにそんなに怒らない『セル』」
「ああああっ。もう、いい加減にしろ!! タスラム!!」
「だから呼び方違うって言っただろ?」
そんな不毛な押し問答は柔らかい風に乗り、庭園に微かに響き渡った。
読んで頂きありがとうございます。
これにて外伝は終了です
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