開申
遊びに来て下さり有難うございます。
始めのうちは誰もいない廊下を歩いていたが、講堂が近づくに連れ、人が多くなってきた。
今日は特に、爵位持ちが一堂に会している事もあり、その取り巻きも来ているせいかいつもより人口密度が高い。そんな中、我々一行は視線を集めていた。まあそうだろう、王の子供が揃って、正装して歩いているのだから。それに、王太子、王子達は不参加というのは耳に入っている筈。それなのに、こうやって城内を闊歩しているのだ。驚くのも至極当然である。また、警備兵達も、日頃目にする本物王子達が先頭を切って歩いている事で、俺達の集団をただただ見つめている状況となっていた。
そんな状況であり、ただならぬ視線を感じつつ、講堂の前まで辿りつく。すると、講堂前に立つ警備兵2人が、顔を見合わせ、声をかける。
「王太子殿下、王子殿下方でおられますか?」
「いかにも。自分達はこの中に入りたいのだが開けてもらえるか?」
「あ、今、講堂では会議が行われてまして」
「それは、重々承知」
「はあ、では少々お待ちを。今、聞いて」
「その行為は無用。その扉を今すぐ開けよ」
「しかしっ」
「開けよ」
次男がいつもより鋭い声を上げる。すると、2人の兵の顔が青ざめると、すぐさま頭を下げた。
「出過ぎた事をし、申し訳ございませんでした。どうぞこちらへ」
そう言い、扉が開かれた。少し顔を上げ、兜越しから前を見る。すると、目の前には王が鎮座し、その隣には宰相らしき白髪の中年男性が立っていた。その両端に爵位の面々が話している。すると、俺達を見るに一瞬空気が止まる。それと共に、主犯と覚しき宰相を見た。目を見開き、こちらを見つめる事寸刻、周りの貴族達がざわつき始める。そんな中、案の定警備兵が俺等を囲む。すると、王が立ち上がった。
「どうしたんじゃ。お前達は別邸に行ったのではないのか? 宰相一体これは?」
「は、今すぐ確認をっ」
すると宰相に近づく近衛隊長らしき男が呼ばれた。
(あの男、俺を尋問した奴だ)
今すぐ飛び掛かりたい思いを、奥歯を噛み締める事で我慢する。そんな中、俺の前にいたデルステインが反応した。
「地図を見てこいっていってるな」
「あれは第1近衛騎士団マイザード隊長です」
振り向く事無く小声でタスラムが背後のデルステインに話しかける。
「じゃあ。俺はあいつの後を」
そう呟いた直後、宰相が冷ややかな視線をこちらに向けた。
「あなた方は誰ですか? そんな格好までして。王太子殿下、王子殿下方を愚弄するつもりか?」
「愚弄? 自分達が偽物とおっしゃるのか宰相? 我々と接点の多いあなたが、そんな事を言うとは悲しい限り。それとも自分達が確実にここにいないと言い切れる証拠でもあるのか?」
「…… いえ、しかし私自身、あなた方のお見送りをさせて頂いた背景がありますのでの、少々驚いてしまったと言うのが本音ですが…… どうしてこのような事を? ましてや今城内は以前話をした通り、不穏な空気が漂っているのです。ですのでっ」
「その元凶が思いの外身近にいるとしたらどうする?」
次男の言葉に、宰相は押し黙り、周りの貴族達の声は大きくなる。その時、魔女がタスラム達の前に立った。
「お初にお目にかかります。介立の魔女でございます。世間では拙老の事を『俊傑のウィッチ』と呼ぶ者もおります」
その言葉に、瞬時に驚きの声が響き、講堂内がパニック状態となる。まあ介立の魔女が公の場に現れる事などまずないからだ。ましてやそれが巷で名を轟かせる俊傑のウィッチともなると、驚きは尋常ではない。
そんな魔女が視線を独占している間に、デルステインは、リンザルド公爵の忍ばせた護衛の者と共に、近衛隊長を追う為、その場から離れる。そんな中、魔女の演説は続く。
「今回拙老がこのような公の場に出る事になったのは、拙老がある者達の思惑により、魔物の餌食にされそうになったのです。そんな矢先、王の御子息様方に助けて頂いたのです。こんな国の民でもない放浪の魔女に対し、体を張って守って頂いたお礼を、王陛下に直接お伝えしたく、赴きました。また、この機会を借り、王陛下に聞いて頂きたい事があります」
「いきなり、このような場に乗り込んでおきながら何をっ!!」
「二アグラ。そんな声を荒げる事でもなかろう。それに日頃、顔を表に出さぬ者がこうやって、現れ懇願しているのだ。その思いは汲むべきであろう。さあ、言いてみよ」
「はい、先程魔物の餌食させられそうになったと告げましたが、そのしかけた者達からとある仕事の依頼があったのです。その内容が今回城内外で起きてる異変に合致している事が多々あることから、その依頼主と、今、起きている不穏な出来事をしかけている者が、同一人物である事が濃厚かと思いこのような形で、馳せ参じた次第ございます」
「なんと!!」
「王陛下!! このような戯れ言のような話に耳を傾けてはなりません!! しかも介立の魔女。裏の世界で暗躍する者達です。そのような者が言う言葉に信憑性など皆無。殿下方もどうかそのような者に加担するような行為はお控え下さい。国の基盤が揺らぎ兼ねません!!」
「でも、今揺るぎかけてるんですよね、二アグラ宰相」
「ええ。タスラム殿下その通りです。ですので尚の事っ」
「では、その乱す根元を炙り出すまで」
「ゼダ殿下。炙り出すといっても、何をどうすればそんな事にっ、ましてや何故ここでなのです」
「この中に、今回の一連の件を企てた者がいるからだ」
すると、貴族達が騒然となる。そんな中、宰相が声をあげる。
「静粛に!! 貴族たる者。このような事で狼狽えてはならぬ!!」
そう一喝すると、俺等に厳しい視線を送る。
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次回の更新は4月22日 20時30分以降の予定です




