流石にヤバい
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とりあえず、色が変わっている事で、それなりの効果が石に蓄積されているに違いないのだが、実際にやってる俺は半信半疑だ。
それは、目の前で同じ作業をしているタスラムも同様だったらしい。一瞬目が合ったが苦笑いを浮かべて見せた。だが、今はそんな疑念を抱くより、俺達が置かれている苦境をどう乗り切るかを考える事が最優先。現在は風防壁でデビルアントを近づけずにいるが、これを解けば先程より接近している状態は明白であり、不安がないと言ったら嘘になる。
そんな心中を抱えてつつ、手持ちの回復薬が尽きる。それを見計らい魔女が近づく。
「フィフィフィ。良い感じじゃ。童二人は将来有望じゃのう」
「それよりどうするんですか?」
「うむ。とりあえずこの防壁を解除する」
「ちょ、ちょっと待てよばーさん。周りには魔族がうじゃうじゃ居るんだろ? それこそ防御解除したら一気に押し寄せてくるぞ!!」
「それはデルステインさんに賛同しますね」
「おい、ばーさん。大体俺達にこの石に魔法蓄積させたは良いが、これ、どうやって使う気だ?」
「フィフィフィ。それよりも、防壁を解いた時に、魔族が襲いかかって来ると思うが、拙老が術をかけ終わるまでどうにか抑えこんでおくれ」
「正気の沙汰じゃねーー !!」
「はははは。今回の件で一番の難題ですね」
「ばーさん。だいたい時間はどのくらいだ? 俺達もそう余力は無いぜ」
「ふむ。術は一瞬じゃよ。ただその力が目に見えて来るのは魔法の質と蓄積によって変わってくるので言いきれん」
「博打にちけーじゃん」
「大丈夫だよきっとセルリル」
「タスラム。お前のメンタルやっぱおかしいわ」
「そんな事ないよ。だって私達がこんな所で死ぬわけないだろ? ましてや私とセルリルが一緒にいるのに」
「…… はいはい。って事でばーさん。さっさとやってくれ」
そう言い、虹色に光石を魔女に手渡す。すると、彼女はそれをゆっくり撫でた。
「フィフィフィ。さてと。やり始めるとするか。お前さん達。気張っておくれよ」
すると、瞬時に防壁が解かれ、それと同時に、魔女の片方の手に息を吹きかけ、小さく言葉を囁く。すると瞬く間に白いカラスが現れたのだ。それと同じくして視界がハッキリしてくる。すると予想通りに、俺達から10メートルも離れない場所にデビルアントに四方囲まれていた。デルステインが絶句し、腰を抜かしたのか尻餅をつき、俺と、タスラムは魔族を睨む。
そんな中、背後にいた魔女が動く気配と共に頭上にカラスを飛んで行く姿を捉えた。その鳥の口には鉱石だろうか光物が見える。すると、数メートル飛んだ所で、魔女が一回手を叩いたのだ。その直後、それに同調するかの様に、カラスが消え、鉱石が日光を反射しながら、飛び散る。流星群の様に流れる鉱石はこんな窮地にも関わらず、思わず見入ってしまう程に圧巻な景色だ。だがその時、足に振動を感じ、我に返り、正面を見た。
すると、魔族が一斉にこちらに向かって来たのだ。俺はすぐさま地面に手を置き、進行を防ごうと魔物の足を氷らせたものの、当初の威力より弱いせいかすぐに動き出してしまった。また、隣にいたタスラムも防御魔法を発動させる余力がないらしく剣を構えている。
(いよいよヤバいな)
出来る魔法はもう限られる中、俺は手に火の玉を作り、苦笑いを浮かべた。その時だ。魔族の進行が明らかに遅くなると共に、俺のいる場所から4メートル程の場所で足が完全に止まった。そして、地べたに腹をつくと、次々と魔物が黒い霧となり消えていく。それは四方全ての魔族が同様であり、その光景を呆然と見つめる。そんな中、隣にいたタスラムが声をあげた。
「ねえ、セルリルこれって?」
「俺が知るわけねーだろ?」
すると魔女の笑う声が耳に届く。
「これだけうまくいくとは。上出来じゃ」
「一体、どういう事ですか?」
「ふむ。童達の魔法を蓄積させた鉱石をこの一体にばら撒いたのじゃ。それにより、ここを拠点にざっと500メートル付近全てに光魔法が降り注ぐ様になっておる」
そう言われ、周りの様子を注視するに、今さっきまで緊迫した状況だったせいで気づきもしなかったが、自身の魔法の気配が微かに感じ、辺りを見回す。そんな中、魔女は話を続けた。
「ふむ。これならここら一帯は3週間は魔物も湧くこともなければ近寄らんじゃろう。フィフィフィ。ケガの巧妙と言ったもんじゃ」
「何の巧妙だが知らねーがこれで森から出れるんだよな」
「そのようですね」
「や、やったぜーー これでやっと俺も自由の身!!」
「おっさん何言ってやがる。自由の筈ねーだろ」
「へ?」
「そうですよ。最初に言ったじゃいですか。あなたは捕虜です。ほ、りょ」
タスラムの言葉に彼は天を仰げ片手で顔を覆った。その姿をタスラムは半ば呆れつつ見る事暫し。魔女の方へと足を向かわせた。
「申し訳ないですけど、最初にお伝えしましたが魔女さんも一緒に来て頂けますか?」
「ふむ。勿論じゃ。そして聞きたい事を聞くが良い」
「有り難うございます」
すると、久々に彼が胡散臭い笑みを浮かべる。俺はそれを溜息混じりで見つめ、頭上に広がる青空を見つめた。
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