腹を括れ
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「おい、二人して何ビビってんだよ」
「…… そういうセルリルも手、どうしたの?」
「うっせーー」
「君達こんな所でそんな悠長な事言っていないでくれるかな? それより早くここから離れた方がっ」
「はあ? 森に何しに来たか知ってるよな?」
「勿論さ。でも俺はこんな所で死にたくねー」
「デルステインさんにそれを決める権限ないですよ」
「はひ?」
「だって、私達の捕虜になった時点であなたの身柄は私達に委ねられてるんですから」
「ああーー ねえ君さ、口の悪い友達よりタチ悪い?」
「今さらかよおっさん」
「…… ダメだ…… こりゃ。俺はここで……」
「全く。私達より年長者と言うのに何を言ってるんですか?」
「おいおい。それよりおっさん。魔女の声とか聞こえねーのか?」
「う、ううう。こんな状況でも人使いが荒いっ」
そう言い押し黙る事暫し。
「俺達の居る場所から直線…… 一番奥の方から女の掠れた声が聞こえるな」
その言葉に、未だ修羅場の現場を覗く。が、混沌としている現状では目視する事が出来ない。だが、今は彼の言葉だけが頼りであり、今までの経緯から言って間違った事は言っていないであろう。
(さてどうする?)
模索する自身の前では、タスラムが短剣をデルステインに渡し、彼は長剣を腰に据え直す。
「とりあえず、あの魔物も光属性に対してかなり有効ですからね」
「因みにアイツ等の弱点箇所とかあるのか?」
「二足歩行の魔物だし人間と同じと思ってもらって良いんじゃいのかな。後以前同様全身を一気に消滅させるなら何属性でも良いとは思うけど。ただ、ここ森だから大規模な火属性はちょっとね…… 流石にここの森焼いちゃうと、そこを住処にしていた魔物が極端に密集率上がっちゃうだろ? そうなるとこの周りに光魔法はっていても突破されちゃうかもしれないから…… それなりにあの魔法もキャパあるからさ」
「魔物に関してはわかったが、問題は魔女の所までどう行くかだ…… 迂回するにも、その間に見つかる可能性の方が高い…… それならどさくさに紛れて中央突破」
「そんなの無謀過ぎるだろ!! 俺は反対だ!!」
「おっさんの意見は聞いてねーし」
その言葉の直後甲高い声が俺の耳に届く。すぐさま振り返り声の方を見ると、ウルフが何かを高く掲げている。それは布切れのようにも見えるが、その布から白い手が魔物の腕を掴んだ。
「今の女性の声ってあの人からだよね?」
「じゃあアイツが魔女で良いだな!!」
俺はそう叫び立ち上がる。そしてすぐさま片手に陣を形成した。もうやるしかない。このまま魔女に事情を聴けぬままでは今までの苦労が無駄になる。それどころか、黒幕から明らかに遠くなってしまう。
(そんな事は絶対にしない!!)
「魔族だろうが、俺の邪魔をする奴等は蹴散らす!!」
そう叫ぶと地面に手を置くと、ほぼ同時にウルフが一斉にこちらを向く。その瞬間、地だった場所が瞬時に氷の床と化し、足下からパキパキと音を立てながら氷が奴等の足元を凍らせる。それは即座に魔物の全身を覆い、瞬く間に、数十本の氷柱ができあがった。周りには冷気が漂い、霧が立ち込める。その様子を背後で見ていたタスラムは軽く口笛を吹いてみせ、かたやデルステインは声もあげず沈黙する事刹那。
「マジか……」
ポツリと呟く声が耳を掠める。そんな中、俺は氷柱が立ち並ぶ空間へと足を踏み入れ、その後ろには二人が続く。そして暫く歩くと、氷ついた地べたに座り込む人影が視界に入り、その前へと立つ。
「なあ。アンタ『俊傑のウィッチ』?」
するとボロボロのローブのフードから顔を覗かせた老婆がこちらを見る。
「世間さまからはそう呼ばれているようじゃな」
「俺達、アンタに聞きたい事があんだよ。だから一緒に来てもらうぜ」
「フィフィフィ。威勢の良い童だね。にしてもこれは童の仕業かい?」
「それが何?」
「いや、たいしたもんだ。本当助かった。と言いたい所だが、そうは問屋が卸さない状況でね」
する森の暗闇から無数の青白く光るモノがこちらを見ている。
「ウルフの残党達じゃ」
「フン。アイツ等を一掃すれば良いだろーが」
「フィフィフィ。それはそうなのじゃが…… とりあえず、この森から出れたらお前達の知りたい事を洗いざらい話してやるわい」
「言ったな婆ーさん」
すると、森の中から数20体程のウルフが囲むように現れ、こちらへと近づいてきたのだ。
「さっきより個体数多いじゃんかよーー どうすんだ!!」
「おっさん喚くな!!」
「デルステインさんは私達の背後で『俊傑のウィッチ』さんといてくだい。もし捌ききれなかった魔物がそちらに行った場合はそれ相応の対処を」
「対処ってっ」
「その為に短剣渡したんですがね」
タスラムのその言葉に半べそをかく姿が一瞬目に留まったのも束の間、低い唸り声を上げ、魔物が俺等に襲いかかってきたのだ。
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