俺に譲れよ
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深く暗い森の中。風も生ぬるく、遠くで聞いた事のない、生き物の声が耳に届く。その度に、俺の背後を歩くデルステインが低く悲鳴を上げる。
「おっさん五月蠅い」
「お前等がおかしいんだ!! どっから魔物来てもおかしくないんだぜ」
「そうですね。だから気を付けて下さい」
「サラッとそんな簡単に言わないでくれるかなっ、それこそ魔物に出くわした日には、もうっ」
「だからうっせーって言ってるだろおっさん。騒いでると、魔物寄ってくるぞ!! それより、奴等の声とか聞こえねーのか?」
「も、もう、今の若者ってこんなんなのかよーー」
そう嘆き押し黙る。そんな彼を一別し、道無き道を歩く。
ここはケピアの森。キリナムから西へ3キロ程離れた所にある、数10キロに渡り深い森が広がる地域で、魔物が住む森として有名なのだ。というのも、ここの森周辺は土地の特性で、波動の波が非常に激しい場所であり、人が住むには適していない。なので手つかずの自然が残っているのだが、そのせいで、魔物の住処と化している。
まあ、だからといって、全く人が立ち入らないといったらそれは嘘だ。やはり手つかずと言う事はそれなりに資源があるという事を意味する。なので、それを目的に、森に入る者達もいるが、それはほぼ自己責任といった形。だが、場所的に大都市との距離がそう離れていないという事もあるので、森を囲う様に人に害がなく、魔物に有効な光魔法が常に展開されている。またその状況を維持する為に、力と名声のある貴族が一任されているのだ。それが、この前学園の大会に来賓に来たリンザルド公爵である。
なので、酒場で輩から事情を聴き、この森に向かったとの話から、森の管理の拠点でもある公爵のセカンドハウスに乗り込み、今に至。まあ、公爵は不在とは言ったが、タスラムと公爵が昔からの顔なじみ且つ、友好な関係という事もありすぐさま連絡をしてくれるという事であった。またそんな絡みから、必要な物は惜しむことなく提供してれたのだ。
と言うのも、今回渡された物として、光魔法を宿した長剣、短剣一本ずつ。そして今まで使った事のない、上級回復薬を一人3本も持たせてくれる奮発ぶり。
(本当太っ腹だよな)
回復薬も下中上と三種類あるが、上となると、まず市民はほぼお目にかからない。ましてやそんな品を売ったとなれば、かなりの高額なのは確かだ。日頃そう手にする事の出来ない一本。研究材料にしてみたい。俺は後ろで未だオドオドしているデルステインを見る。
「なあおっさん」
「な、何? まだ魔女達の形跡はつかめないよ。いかんせん話によれば半日は経っているからな。だいぶ奥の方にいるかもしれないぜ」
「いやその話とは別。おっさん回復薬持ってるよな」
「ああ。しかも三十路過ぎで初の上級回復薬。テンション上がるぜ。それにしてもよくこんな代物9本も譲ってくれたよな」
「まあ、私が居たからね」
「確か、君は金貨も出してたな…… それにあの時、3人に事情聞く前に、一瞬奴等の顔色が変わったけど、何言ったんだ?」
「ああーー あの時は、『もし誰かに公言したら、第三騎士団送り込む』って言ったんだ」
「第三騎士団ってっ、鬼将レナウド率いる隊だろ? あの団が通った後にはペンペン草も生えねえって有名だぜ」
「それは嘘だから。でもかなり有能な人物なのは間違いないよ」
「でもそんな団を名指し出来るってことはかなりの上級階級の人間って事だよな?」
「デルステインさんの想像に任せるよ」
すると彼が薄笑いを浮かべると共に、俺は一回溜息をつく。
「しょーもない話は終わったか?」
「君の減らず口はいつ聞いても辛辣過ぎて驚きしかないな」
「じゃあ驚きついでに、さっき話そうとした続きで、おっさんの回復薬俺に一本くれない?」
「はあ? 何いってるんだ君は? こんな魔物うじゃうじゃの所でこの薬だけが唯一の頼みの綱なんだからな!! やるわけないだろう。っていうかぶっちゃけ3本でも気持ち足りないぐらいだ!!」
「でもおっさん。いざっていう時戦力にならないし、俺等にやった方が生き残れる確率あがるぜ」
「…… 自信過剰? いやビッグマウス?」
すると、列の最後尾に居たタスラムがクスリと笑う。
「確かに傲慢ぶりが凄いけど、セルリルの言うことも一理あるかな」
「やめてくれよーー 絶対に君達には渡さないからな!!」
彼がそう一声上げた直後。足がピタリと止まった。その動きに合わせるように俺とタスラムも歩みを止める。するとデルステインが周りを見回した。
「何か聞こえたのデルステインさん」
「ああ…… 人の声…… いや魔物の声もあるなっ」
「どっちだ?」
すると彼が再度周りを見渡し一点に指を指す。
「こっちだ。まだちょっと距離はあるみたいだが、間違いない」
「急ぐぞ」
そしてすぐさま歩き出す事数10分。俺の耳にも罵声のような声と、獣の遠吠え。そして金属の擦れる音がする。俺達は木の陰に隠れ、その方を見る。すると、二足歩行の茶色毛に覆われたデイジーウルフが、甲冑を着た兵を襲っていたのだ。しかもその周辺には兵の亡骸が無数に転がり、血痕が飛び散っていた。まさしく地獄絵図。俺自身もこんな惨劇を見るのは初めてであり、すぐさま目を背け、奥歯を噛みしめる。
(なんだよこれ!!)
鼻には鉄のような臭いが届く中、俺の視界に入った二人も一様に視界を下に向けていた。だが、このままここで蹲っていても何も解決しない。とりあえず情報通りに奴等に追いついたのだ。ここからが本番。だが、気づくと微かだが、自身の手が震えている事に気づく。
(我ながら情けーな)
そんな思いに駆られ、もう片方の手で震える手を押さえつける。そして、二人に視線を送り直す。
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