ばさら者
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いくつもの照明が点在しているというのに、何故だか暗く感じる店内。そんな室内は、ほぼ満席だ。ここは夜の酒場。その場所ならではの活気がある。ただ、見た目からして訳ありといった輩が多そうだ。
あの後、軽く食事を摂り、俺は普段着に着替え、腕に付けられた枷を解除する為、キリナムの魔術師に見てもらった。すると思いの外簡単に外せたのだ。なんでもこの物自体は一般的な物らしい。が、購入する人物は限られると言う事で、その線から奴等の身元がわれると一瞬思った。しかし、比較的魔術師なら安易に作れてしまう代物、また最近売買していないと言う事だった。とりあえずその背景を踏まえ、キリナムの魔術師の店全店に聞いたが、同じ回答だった。
そんな前置き後、今はデルステインの経験を元に情報の集まりそうな場所に潜入している最中だ。
俺自身こういった場所に来る事は数回あるが、店によって雰囲気がちがう。だが、一環して殺伐とした感覚は相違なく、その空気感は嫌いではない。かたやタスラムは初めてのようで日頃味わう事のない雰囲気に興味心身といった感じで辺りをひっきりなしに見ていた。すると、円卓の前に座っていたデルステインが小声で声を掛ける。
「あまり、キョロキョロしない方が良いぜ。目立っちまう」
「そうなのかい? でもこういう場所が初めてなので非常に興味深くてね。セルリルもそう思わない? 学生だからお酒飲めないし」
「は?」
「別に。俺は初めてでもないからな」
「それ、学園に知れたら停学、いや退学案件じゃない?」
「フン。それこそ俺の欲しい情報が入ってこないんだ。しょうがないだろ」
「へ?」
「何だよおっさん。さっきからその不抜けた声」
「不抜けた声って。っていうか二人学生?」
「そうだけど何?」
すると底なし沼のような溜息を零すと同時に、テーブルに身を乗り出す。
「尚の事、じっとしていろ!! ここは学生の入店お断りなんだ。バレたらそれこそ、そこで調査終了だぜ」
「それは困るね」
「ったく。何だよ」
「まあここは、俺のテリトリーだからな。それなりにこっちの言い分聞いてもらうぜ」
「じゃあ。あなたに合わせるとして、これからどうするんだい?」
「ああ。早速だが、情報を収集するか」
そう言うと、デルステインが着席し、テーブルに両肘をつきつつ、指をくむ。そしてそこに自身の頭を凭れさせ、瞼を閉じる事暫し。
「成る程ーー」
「おい、一人で納得してるんじゃねーよ。おっさん」
「セルリルに同感です」
「わかった、わかった。今から話すから。でも、お二人さんに話てもちょっと裏事情知らねーとピンとこないかもしれねーな」
「じゃあそれを踏まえて説明してくれませんかデルステインさん」
「横柄な言葉使うアイツとまた違う意味で圧かけてくるな君も」
「否定しません」
すると彼は苦笑いを浮かべて見せる事刹那、真顔になると口を開く。
「まず単刀直入に聞くが『介立の魔女』って知ってるか?」
確かに聞き覚えのない名だ。それはタスラムも一緒だったようで、俺に視線を向ける。その俺等の姿を目にした彼が話を続けた。
「『介立の魔女』っていうのは、魔女の集落から出て放浪している魔女の事だ。まあ魔女は基本集落から出ないから、その集落から出て放浪する魔女事態極端に人数が少ない。そんな魔女がここに滞在してたらしい」
「らしい? 今は居ないということですか?」
「さあな。そこまではわからねーー それにあくまでも俺のは盗み聞きだ。その話自体の信憑性だってどうかもわからねえ。ただ、色んな他人の話を聞くことで、択一していくしかねーから」
すると、いきなりデルステインが自身の口の前に一差し指を立て、暫し動作が止まると共に、みるみると顔色が変わっていったのだ。
「どうしたおっさん?」
「色んな意味で大事だな」
「大事って何ですか?」
「今回の魔女。どうやら、『俊傑のウィッチ』らしい」
「俊傑の…… ウィッチ……」
「セルリル知ってるの?」
「いや、他の酒場で、かなり前だが耳にした事があるぐらいだ」
「まあ、情報収集に精通していない君の耳にも届くぐらいの人物なのさ。なんせこの大陸の『介立の魔女』と呼ばれる中で、一番の腕利きだからな。俺達みたいな闇家業は勿論、上流階級の間でも名が知れてる有名人だ。そんな魔女が、男等に連れ去られた? らしい」
「連れ去られる? うんーー 確かに少しやっかいですね。デルステインさん。他の魔女情報はあがっていますか?」
「…… ねえな。第一介立の魔女事態、そう会えるもんじゃねーから、必然的に二人が探している魔女はウィッチだと思うぜ」
「なら、追うしかないですが、信憑性が……」
「そんな事言ってられねーだろ。ここまできたら手当たり次第あたってみた方が早い」
「まあ…… それしかないのかも。だとして、今の情報だとかなり事態は良くないね」
「ああ。明らかに魔女やべーな」
「おっさん。それどこの奴等が話しているだ」
「うんーー 俺の斜め後ろの席のグループだな」
その言葉を聞き、俺はすぐさま立ち上がり、彼が言った席へと向かう。いかにもゴロツキといった男が3人、酒を飲み談笑している。すると、その中一人が俺を見た。
「おい、何だいきなり」
「お前達に聞きたい。魔女はいつ、どこへ連れて行かれた」
「はあ? 何だいきなりコイツ」
「しかも、盗み聞きしてたのか?」
すると、3人の輩が一斉に立ち上がり、俺を睨む。そんな中、デルステインが即座にその間を割りつつ、声を上げる。
「す、すいません。若いもんでっ」
そう言うと、俺の首に自身の腕を巻き付けホールドすると、耳元で憤慨しながら、耳元で囁く。
「目立つ事すんなって言っただろうが!!」
「悠長な事してられるか!! 魔女がヤられたら身も蓋もないんだからな」
そんな会話をしている最中でも、刻々と事態は悪化している。3人の男が更に声を荒げ始めたのだ。
「ど、どうすんだよーー」
デルステインが、小声で呟きつつ顔が完全に青ざめる。そんな姿を横目に、俺は血気盛んに吠える始めた輩を睨む。すると、そんな奴等の前にタスラムが歩み寄る。
「何だ、にーちゃん。お前もそいつ等の仲間か?」
その声には応えず、彼は3人のテーブルの上に一枚の金貨を置いた。すると、息巻いていた輩が、黄金に輝くコイン一点を見つめた。それは俺の仲裁をしていたデルステインも同様に机の上を見る。
「オイオイ……」
半ば呆然といった表情を浮かべ、小声で呟くと共に瞬時に異様な程静まり返った。そんな中、タスラムが胡散臭い笑みを浮かべる。
「すいません。それ3人に差し上げます。なので先程の話聞かせてもらえませんか?」
その問いに、3人がタスラムに視界を移す。だが、声が出ない。そんな輩等に彼が話を続ける。
「その一枚でお三方が2ヶ月は楽に暮らせる価値があると思いますけど…… 話してもらえないようなら他の方にっ」
「い、いやっ。話すさっ勿論。なあ」
「ああ。そうさ。俺等の知ってる事なら」
「それは良かったです。後、これを差し上げる際に一つお願いがあるんですけど、この事は他言無用でお願いします。もしそれを反故した場合は……」
そう言い、彼が3人に耳打ちをした途端、顔色が一斉に変わった。そして大きく何回も頷く。その様子を確認すると、タスラムの背後に居た俺等に振り向き、再度笑みを零す。
「了承得たよ」
「じゃあ早速洗いざらい話してもらおうか」
すると隣で一部始終を見ていたデルステインが、表情が引きつりながらこちらを見る。
「君達。破天荒過ぎるんじゃない?」
そう呟き、俺等に苦笑いを見せた。
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