綺麗事言ってんじゃねーよ!!
遊びに来て頂きありがとうございます。
「お、俺は、何もわからねーんだっ、ただ金で雇われた人間だからっ」
「だろうな。看守としてはお粗末過ぎる」
「俺より若いのに手厳しい事言うな君は」
「フン。それより、名前」
「デ、デルステイン」
すると、ローブから眼鏡を取り出しそれをかけ、タスラムが膝を折り、彼に笑みを向ける。
「じゃあ。早速だけど、デルステインさん。雇われたと言う事なので、事情がわからないとは思いますが、私達は少しでもこの件についての情報が欲しい。なのでどんな些細な事でも構わないので教えてくれませんか?」
「些細と言われても……」
「ラチあかねーな。なあ、タスラム。まず俺はドコに閉じこめられていたんだ?」
「キリナムの町外れ。今は使用されていない地下貯蔵庫」
「じゃあ、おっさん。アンタはどこでそいつ等に声かけられた?」
「お、俺は、キリナムの飲み屋」
「じゃあやっぱりキリナムが拠点じゃねーの?」
「うーんセルリル。それ安直過ぎだって。ここは交通の便も良いし、第二の都市だから、情報も人も集まり安い利点を使っているだけで、拠点は違うかもしれないよ。それより、セルリルも何か気づいた事なかった?」
「そうだな。強いて言うなら尋問慣れしている感じはあった」
「うんーー それだけじゃあ何とも…… はあーー やっぱりこちらの手持ちのカードが少なすぎる」
「手持ちのカード?」
「あるだろ? 一連の出来事で少しはわかった事。ある程度の爵位持ちにコネクションがあって強制権が施行出来る人物で、魔女由来の力を使う。まあ今はフラッグの家の背景については早急に調べている最中だけどさ」
「なら魔女はまだ調べてないんだな?」
「魔女って言っても基本彼女達は集団で住んでいるらしいけど、その場所が不明なんだよ。そんな状況なんだから魔女と会うなんて無理に等しい」
「だからって端から調べないのはどうなんだ?」
「…… まあね……」
困った様な表情を浮かべるタスラムを目視するも背後の男が我関せずといった顔をしている。俺はそいつに再度視点を向ける。すると、それに感づいた男が一回大きく体をビクつかせた。
「なあ、おっさんさ。本職何?」
「しがない日雇いっ……」
「こんな状況なのに何ごまかす事あるの? 看守の時も、さっきもそうだけど、あんた肉体強化魔法使えるんだろ? しかも聴覚に関しては魔法アンチ的な」
「は、はひっ?」
声が上擦ると共に、顔がひきつる。そんな状態の彼を俺はニタリと笑う。その姿に、セルリルが食いつく。
「でも、魔法の発動の形跡はなかったよね」
「ああ。陣は勿論波動の形跡すらない。ただ、何がしらの方法で、一時的にその部位が強化されるのかもしれない。そうでなければさっきの行動といい、説明できん」
「うんーー まあ確かにあの足の週敏さは尋常じゃないしびっくりしたけど…… でも聴覚が特殊だね」
「ああ。俺が監禁された部屋に遮音魔法がかけられていた。それは部屋にいる時に察しがついたんだが、その遮音効果があったにも関わらず、タスラムと話している声に反応して戸を開けた」
「あ、あれは偶然というか?」
「偶然で『誰と話している』なんて言えるか」
すると苦笑いをすると、丈夫肩を落とし俯く事暫し。深い溜息をつく。
「とんだ。墓穴ほっちまったみたいだな」
「自業自得だろおっさん」
「おっさんおっさん五月蠅いよ君。でもなかなかの洞察力だ。すげーよ。まあ、これ以上は隠せねーから言っちまうが、俺の本職は情報屋だ。だから今回の依頼は畑違いだったんだが、あまりにも報酬が良かったら飛びついたらこのザマだ」
「成る程ね。それなら今までの行動が多少だけど納得いくよ」
「まあな」
「じゃあデルステインさん。今までの話。聞いていたと思うんですけど、秘匿の観点と、相手と接触している手前、セルリル同様狙われる恐れがあるので、安全な場所に移動してもらいます。でも、今の状況では捕虜扱いになってしまうので、数人見張りをつけることになります」
「はあ?」
「え、何か問題でもセルリル」
「当たり前だろ。情報屋っていうならそれをフルに使わなくてどうすんだよ」
すると、タスラムは立ち上がり、俺を見る。
「彼をこの件に関わせるつもり? 君にだって本当なら関与してもらいたくないんだ。ただ、セルリルの言い分も100歩譲ってわからないわけでもないし、君の素性ひっくるめてわかっているから、それなりの状況でも信頼がおける。でも彼は違う。苛辣な事を言うようだけど、さっきまで、君を監視していた人間を信頼するのは無理だし、私利私欲の為に安易に人の日常生活を奪い、他人の情報を盗み聞きをして金銭を貰う人物に加担してもらいたくはない」
「何綺麗事言ってやがる。こんな状況なんだ、使えるもんは使えばいいだよ。だいたいな。こんな世の中、聖人ぶって生きられる人間がどれだけいんだ。そりゃあ言うだけなら誰でも出来るがな」
「私がそうだと?」
タスラムが眼鏡越しからでもわかる程の鋭い眼光をこちらに送る。今までにない強烈な圧に一瞬驚きはしたが、俺自身も引くつもりは毛頭ない。彼の視線以上の射るような目つきをタスラムに向ける。
「違うのか? じゃあタスラムの信念を貫く為にお前の替わりに誰かが汚れ仕事をしてるって思った事ねーのかよ。今回の事だって情報収集している奴等が人に手をあげてない保証とかあるのか? ましてやその時に死んじまう奴だっているかも知れないんだぜ」
「そんな事は断じてない。もしあれば私に知らせて来る筈だ」
「だからそこが甘いんだよ!! お前の周りの人間はタスラムが自責の念に駆られるってわかってる。そんなお前に事実を伝えると思うか? まあそんな事、見なくてもわかる展開だがな」
「聞き捨てならないねその言い方」
「じゃあ、お前の信念通すんなら自身の手を汚す事も辞さない覚悟をしろよ!!」
その言葉にタスラムの目が見開き、暫く俺の顔を凝視した。俺もそんな彼の顔を睨む。勿論空気は最悪だ。その時。
グーー
足下から腹の音が聞こえた。思わず視線をそちらへ向けると、デルステインが恐縮しながら笑う。
「ははは。どんな状況でも人って腹減っちまうんだよなこれがまた」
その言葉の後に深い溜息をつく。明白に気持ちが削がれた。
「だ、そうだがタスラム。どうするんだ」
「…… そうだね。こんな所で言い争っていても何の解決にもならないのは確かだから。それに……」
すると、彼は真剣な顔つきで、強い視線を俺に飛ばす。
「私の信念を貫く覚悟を君に見せないといけないからね」
「じゃあ、そういう事で、さっさと黒幕炙り出してやろうぜ。そしてボコボコにしてやる」
「その前に、腹ごしらえと、作戦会議」
すると、タスラムが足下のデルステインを見た。
「まあ、そういう話になりましたので、暫くつきあってもらいますよデルステインさん。まあ私はあなたを信用していませんのでそれだけは言っときます」
「ははは、はい」
そう言うと彼を立たす。気づけば空は茜色に染まりつつある。そんな中、微かに木々の枝の隙間から街明かりが見えると共に、ゆっくりとその目印に向かい歩き出した。
読んで頂きありがとうございます。
また、いいね、ありがとうございます!
日頃感想諸々お伺い出来ない為、
星、いいね!、感想(どんな些細なのでも構いません)
頂けると非常に有難く、励みになります。
もし宜しければ聞かせて頂ければ幸いです。
またワンオペ作業の為、誤字脱字諸々有り読みにくい事があるかと思いますが
ご了承ください&お知らせ頂ければ有難いです。
次回の更新は4月9日 20時30分以降の予定です




