遅くなって御免
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どうやら見張り役の人間は玄人ではないらしく、わりかし無防備な所がある。試しに食器を遠くに置いてみたりしたが、彼自身が手を伸ばし、食器を回収していった。部屋に入った奴等の仲間なら、手を伸ばす事でその手を捕まれ、返って恐喝紛いな事が起きる可能性を避ける為に、俺にそれなりの指示をするだろう。だが、そんな直軸の配下でないとしても、その門番にどうやってドアを開けさせるかが問題なのだ。
(俺がここで仮病してみるか…… 仲間にしたいっていうなら死なれても困るだろうし。それにある程度の日数が経っているのにも関わらず、玄人の奴等が現れないって事は、奴等は多忙。そんな状況なら不測の事態を見越して見張りに鍵は渡している筈……)
ひたすら悶々と考えている最中、事が起きた。いきなり、目の前の石の床が光出し、円い陣が浮き上がる。すると、そのサークル内に銀色の粒子が飛び交い始めると、徐々にそれは人の形へと形成されていく。その現状を見つめる事刹那。目の前に大会時に羽織っていたローブを着たタスラムが俺の目の前に現れた。
俺はじっとその姿を見つめる。すると、そんな自身を捉えた彼は切なさを含ませた笑みを浮かべた。
「セルリル。元気してた?」
「ふん。見ての通りだが」
「そっか…… あの後、君がいないと知って…… セルリルの周りが騒がしかったからきっと何かあったんだろうって思って結構頑張って探したんだよ。でもなかなか足取りがつかめなくてね。でも、良かったよ。君の近くにローブがあって。何とかして君の居場所を探したくて、一か八かでローブに掛けられた魔法の形跡をどうにか辿ってみたんだ」
すると、彼が俺の方に近づき前に立つと、目の前で膝をつく。そして今まで見た事がない真剣な面持ちを浮かべ自身を見据えた。
「本当に、すまない」
一瞬その姿に目を見開く。が、タスラムなら何の躊躇なく当たり前にしてしまう行為だろう。それは彼を近くで見てきたので理解出来る心理。
(まあタスラムらしいな)
そんな思いが過りながら、深い溜息をつく。
「何で、お前が謝る事あるんだ。一般市民を守れなかったからか?」
「そうだね。友人をまんまと攫われたというのもあるけど…… 今回のセルリルの周りに起こっている事が私達の内部事情に関係している可能性が濃厚なんだ」
「それって、セルリルが言ってた潜入捜査絡みって事か?」
「ああ」
「そりゃはた迷惑な展開だな」
「そうだよね。本当に我ながら情けないよ……」
すると、彼がガバリと顔を上げると、日頃見せた事がない必死な顔つきで俺を見た。
「でも、安心してセルリル。君の事はこの件が解決する迄、身の安全を保証する。もう、それように屋敷も準備したから、セルリルはここから出たらそこにっ」
「はあ?」
彼の言葉を端折りながら声を上げる。
「何言ってやがる。散々な目にあってるっていうのに、尻尾巻いて逃げるわけねーだろ。勝手に蚊帳の外にするな!!」
「だからってこれ以上セルリルを巻き込む事はっ」
「今更だろ。それ相応に熨斗つけて返してやる!!」
「あのねーー セルリル。今回の事は本当に危険なんだ。学園内での問題とは桁違いで」
「それがどうした!! 喧嘩を売った相手が俺だと言うことを後悔させてやる!!」
するとタスラムが深い溜息をつく。その直後ドアの方から物音がすること刹那。
「おい、誰と話している」
門番らしき男が声をあげたのだ。思わず目を見開く。この空間は遮音魔法が掛けられているのは確かだ。なので、こちらの声は聞こえない筈。だが、その男には聞こえたというのか。
(俺の読みがハズレた?)
すぐさま俺とタスラムは立ち上がると同時に、ドアの方を見る。そんな中、施錠が開ける音がすると戸が渋い音をたて徐々に開き、暗がりの部屋に光の線が差し込む。その直後、タスラムがドアノブを勢いよく引っ張り、一気にドアを全開にする。すると、その拍子にその男が前のめりにけつまずき、すぐさま彼がその者の背後へと回る。そして、片手を掴み捻り上げながら石畳に跪かせた。
「イ、イタタタッ」
「いきなりすまないね。でも少し聞きたい事があるんだ。あなたも一緒に来てもらうよ」
すると、彼がローブの下から灰色のガラスの塊を取り出し、掌に置くと、陣を描き出す。その直後、塊に金色に陣が浮き上がると、壁にそれが反射し、写し出される。
「クラック鉱石か?」
「ご名答。微量の形跡でも、今回みたいにわかってしまうからね。誰が施行したが曖昧にしておく必要があるんだ」
そう言い。輩の腕を掴んだまま、セルリルがその円陣へと入って行き、姿が消えた。俺もその後をついていく。一瞬目映い光で瞼を閉じたものの、すぐにそれは解消され、ゆっくりと目を開く。すると、木々が茂る風景が視界に入った。その直後、自身の背後にあった陣は跡形もなく消え去る。
「これで、脱出成功。はあーー とりあえず良かった」
「良くねーだろ? 問題は何も解決してねーぞ」
「そうだね。山積さ。でも君は日の当たる場所に戻ってこれただろ? それともあんなジメーっとした所に居たかったかい?」
「フン。それよりもここはどこだよ」
「ああ。リンセント王国第二の都市キリナムの郊外の森」
「学園都市と、首都との間か…… 」
そう呟く俺の横で、タスラムが男のもう片方の腕を掴み背後に持っていくと、両手首を石のリングで施錠する。
「とりあえず、そこに座ってもらえるかな」
彼のその言葉に従うかのように膝を折ったと思いきや、輩が瞬時に走り出す。それは思った以上に早い。だがタスラムが逃走経路を土壁で塞ぐ。すると、蛙が踏まれた様な声を上げると、力なく輩がその場に座りこんだ。そんな奴に俺とタスラムはゆっくり近づく。
「おい、何逃がしてだよ」
「ごめん。ちょっと君を助けたられたと思って気が抜けちゃったよ」
そう言い、輩の前に立つ。
「で、おっさん誰?」
鋭い眼光を向けると、明らかに恐怖の顔で歪むツーブロックヘアーの無精髭を生やした中年男性が、再度小さい悲鳴をあげた。
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