勧誘
遊びに来て頂きありがとうございます。
(ったくっ、アイツはっ)
グランド内は生徒達のどよめきが収まらない。そんな中、タスラムは学校関係者や、リンザルド公爵に囲まれ事情を説明している最中だ。さっきの子供じみた表情にはドン引きしてしまったが、彼らしいといえばそれまでだ。
(だからって、俺は子供じゃねーんだよ!!)
あの表情は立腹いると言うより自身を諭しているように思えて仕方がない。それが異様に鼻につく。それに、先方の出来事も、蓋を開けてみれば、彼がどうにか場を納めてしまった。
端からすれば美談にもなるが、俺の腹の虫は未だに蠢いている。あんな程度で収まるわけがない。ましてや、今回はうまく事が運んだかもしれないが、いつもそうだとは限らない。
そんな中での、タスラムの掲げる『理念』も腑に落ちないのだ。そんな事もあり、胸糞悪い空間から早々に退散し、控え室へと闊歩する。すると、目の前から一人、フードを深く被ったローブを纏う人物がこちらに歩いて来た。そして、すれ違う寸前、俺の名を呼んだ。それに一瞬視線を送ると共に、フードから見える口元がニヤリと笑う。
「君はやはり見込みがある」
と、呟いた直後、自身の首もとに強い衝撃を感じると共に、視界が閉じた。
そんな俺が意識を取り戻したのは、いきなり、顔に何を掛けられた感覚に襲われた時だ。一瞬ぼやける視線の先には年期の入った石壁が見えた。ただ全体的に薄暗い。すると、中年の男が自分の顔を覗く。
「水をかけたら起きたみたいですよ。だいぶゆっく寝てたな」
「…… お前誰だ」
「評判通り威勢のいいガキだ」
俺はすぐさま、氷を叩きつけてやろうと思い陣を形成しようとするも、発動した気配がな
い。それどころか、顔から下が全く動かないのだ。
「何しやがった!!」
「君の魔法を封じさせてもらっている。後、半日ぐらいは首から下の自由もきかないようにしてあるので動かせない。なんせ君は元気がいいからね」
その声に聞き覚えがある。俺は瞬時に声の方に視線を送ると、年期の入った木のドアの横の椅子に座るローブの男が目に飛び込む。水をかけ輩より少し年配の角刈りの男だ。俺はその者に鋭い眼光を向ける。
「何で俺がそんな状態にさせられてんだよ!! 第一お前等誰だ!!」
「そうだね。わかりやすく言うなら、ルファルド伯爵の依頼元というべきかな」
「…… はああ。アイツに俺に対して釜かけるようにしむけた奴らかっ。通りでやり口が生け簀かねーわけだ」
「それはすまなかった。本当ならもう少し丁重に扱うべきなんだろうが、君の性分上こういった感じになってしまっているだ」
「俺のせいだっていうのか?」
「ああ」
「すげー開き直りだな。で、こんな事までして俺を連れてきて何がしたいわけ?」
「単刀直入に言う。俺達はこれから大きな仕事をしなくてはいけなくてね。その時に優秀な魔法の使い手が必要なったんだ。なのでその手伝いをしてほしいんだ?」
「はあ? 今まで散々な事して、今もこんな状況だっていうのによくそんな事が言えたもんだな」
「そうだね。でも、君が承諾してくれればすぐにでも解放するがどうする?」
「断る」
「では仕方がないね。君は一生この部屋からでれないだけだ。まあでも、こちらも優秀な人材を逃したくはないので、ある程度期間をおいてまた意向を聞くことにする。その時に良い返事が聞けるとこちらとしても嬉しいよ」
そう言い椅子から立ち上がる。
「ふざけんな!!」
そう叫ぶ俺には目もくれず、二人は部屋から出て行った。
それからどのくらいの月日がたったのであろうか。全く窓もなく、弱いランプの光に照らされる薄暗い部屋に監禁されている。お陰で、時間の経過がわかりずらい。まあ奴等の公言通り、体の自由はどうにか解消され、濡れた体もどうにか乾いた。服も攫われたままで特にはぎ取られてはいない。
たが、魔法に関しては全く効力を発揮しないまま。原因は自身が意識を失くした時につけられた手枷のような物のせいだろう。
(きっと魔具ってやつだよな)
だが、魔具についての知識はほぼ皆無。基本魔法は極めつつあるが、魔具や、内服薬などを作製する魔術師関係は基礎のみで、素人に近い。
(魔術師の関係も知る必要があるな)
それにはここから出る必要がある。再度周りを見る。ベッドと椅子、最低限の洗面所がある6畳程の狭い部屋。また、ローブを羽織っていても肌寒さを感じる環境。四方八方石のせいもあるが、きっと地下なのであろうと推測しつつ、木のドアを見つめる。
下の方に小さな開閉小窓があり、そこから食事が提供さられているい状況で。あれ以降奴等がここに来る気配もなければ、部屋に入る人間もいない。お陰で奴等の事が全くわからないのだ。知った所でどうにかなるわけではないが、用心深いのは確か。
この前の話でも、奴等自身の事はほぼ触れず、しかもこの部屋には遮音壁が張られている。
それに気づいたのは2回目の食事提供の時。何がしらの魔法の気配を感じてはいたが、何の魔法か不明のまま観察していた時だ。食後の食器を片す際、門番らしき輩が食器を確実に床に落とす瞬間を小窓から目視した。が、その際の音が全く聞こえなかったのだ。
そんな今までの事を踏まえて考えてみるに、入ってきた二人は常日頃から、尋問的な類をしている玄人。
(そんな奴等の網を掻い潜り、ここからどう出るか……)
とりあえず今は有り余る時間をそれに傾けている。まあチャンスがあるとするならば、食事提供の時しかない。
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次回の更新は4月7日 20時30分以降の予定です




