次元の違う? ナルシスト
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「おいっ!! いきなり何っ」
「シッ!!」
明らかに鬼の形相をしているであろう俺に対し、目の前の生徒はそんな事はおかまいなしといった感じで俺の手を外し植木に隠れる。だが、未だに髪を踏まれている状況は続いており、その踏んでいる当人はそれに気づいていない。
「っっどけっ」
強い口調を発しながら片膝を立て、彼の背後から肩を掴まえる。すると、その生徒はすぐさま振り向くと、俺の口に人差し指を立てた。
「だからシッ!!」
いきなりの相手からのアクションに思わず言葉を失う。すると、数分も経たずして、女子生徒が数人話ながらこちらに来たのだ。その気配に目の前の生徒は、小さく身を屈めている。そんな中、植木挟んで整備された遊歩道をしゃべりながら歩き、その声は徐々に遠くなっていく。そしていつもの静けさに戻った中庭で、目の前の生徒が一回大きく息を吐いた。その姿は明らかに安堵している事を背中越しからでも伝わってくる。すると、目の前の彼が、ゆっくりと腰を上げ、回りを見る。
「とりあえず、まけたみたい」
「…… おいっ」
「はあぁあ、女性を無碍なんて私には出来ないからね」
「…… お前っ」
「私の最大の汚点をつくりかねなかった」
「って言うかっ、いい加減足どけろよっ!!」
怒鳴り声を上げる俺に対し、背後をゆっくり振り返った。すると、軽く首を傾げる。未だに俺に髪を踏みつけている事に気づいていない。
(わざとやってるのか?)
そんな思いが過る中、俺は彼の足下を指す。すると、それに気づきすぐさま生徒は足を退かすと共に笑みを浮かべたのだ。
「ごめん。気づかなかったよ」
(本当かコイツ)
再度、鋭い視線を送る。通常の生徒なら俺に直視されただけでも恐怖に怯えた表情を浮かべ、すぐさまその場から消えた。また、今の様にあからさまに睨まれた時には声にならない声を上げ、逃げていくといった情景がお決まりである。しかし、目の前の彼はそんな俺のオーラに屈するどころか微笑んでいるのだ。
明らかに他の生徒と違う彼に、返ってこちらが困惑の色を隠せない。そんな中、彼は俺を嘗める様に見つめる。すると先まで以上に破顔を浮かべたのだ。
「セルリル君だよねっ!! 私は同じクラスのパドリック・クラネリー。いやー君と話せて嬉しいよ」
「こっちは、被害被り最悪だ。っていうか勝手に俺の名前呼ぶなっ。それにお前の事なんて知らねーし。俺はクラスメイトなんて覚えてないからな」
「大丈夫!! 私も一週間前に編入して来たから、クラス全員の名前は覚えていないから。まあ女子の名前はすぐに覚えられるんだけど、男子はね…… 自己紹介とかしてくれても忘れちゃうんだよね。でも君は目立つからすぐに覚えたよ」
「じゃあ俺も他の男子と一緒で忘れてもらって構わない」
「そんな事いわれても覚えちゃったのはしょうがないじゃないか。にしても助かったよ。課題終わってグランドから出たら、クラスメイトの女子に追いかけられちゃって。私的にはあまり目立ちたくないんでちょっと頭を抱えているんだよ。まあそういう星の元に生まれてしまったんだからしょうがいにしても、罪深いとしか言いようがないかなって」
相変わらず眼鏡越しでもわかる程に笑みを浮かべる。
(何いってるんだコイツ。とんでもないナルシストっ。い、いやっ、それ以上に怖すぎだろ!!)
明らかに周りにいる生徒と何かが違う。一連の態度もそうだが、彼がかけている眼鏡も何がしらの小細工をしてあるらしく、彼の視線が全くもってわらないのだ。いくら分厚いレンズとはいえ、ある程度はレンズ越しからでも見て取れる。だが、彼に至っては全くもってわからないのだ。なので、口角の動きと、声のトーンのみで彼の感情を判断するしかない。
(まあどっちにしろ関わらなくっちゃいい話だ)
すると、授業終了を知らせる鐘が校内に響く。この後は、昼食の時間。少なからず彼も行くであろう。そうすればこの変な奴とも離れられる。そんな思惑から俺はほくそ笑む。
「おい、鐘なったし飯だろ? さっさと行けよ」
「ねえ。セルリル君はお昼どうしてるの?」
「どうしてお前にそんな事話さなきゃいけないだよ」
「じゃあ特に予定なさそうだね」
「はあ? 俺のその発言からどう変換したらそんな答えが出せるんだよ!!」
「だって、君ならはっきり言うだろ、そういう事。さっきの授業みたいに」
「……」
「ということで。先程の女子の礼と、君の髪を踏み続けたお詫びをかねてご飯奢らせて」
「いらねーし。まず俺、昼飯食わねーから」
「何言ってるの? 人の好意には甘えるべきだよセルリル君」
すると彼が立ち上がるといきなり俺の腕を掴み遊歩道へと出た。
「じゃあ行こうか!!」
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