王族たるもの
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「これどういう状況なんだよ!!」
四方からの攻撃を避けつつ、タスラムを意味なく問いつめる。すると彼から先程感じた以上の重く冷たい空気を感じた。そんな彼は学友達を見つめる。
「さあね。私にも断言できないけど、同級生の表情見るに彼等彼女等の意志とは無関係なのかな?」
その言葉に、生徒達に注視すると、確かに皆顔が青ざめ、中には泣きながらこちらに魔法を打ち込んでいた。
「操られてるのか? まさか精神魔法!!」
「いやそれはないね。魔法の発動した形跡がない」
「じゃあ何で奴等の意志とは関係なく攻撃すんだよ!!」
「一種の精神暗示に近いのかも?」
「奴の暗示? だとしてもどうしろって言うんだよ!!」
「うんーー そう言うのって外部からの強烈な刺激とかで解かれる事あるとは聞くけど」
まあ、クラス内でもライナムの顔色を伺う生徒はある一定数いた。今回も運営スタッフという事で、奴に良いように使われ、特に服従心の強い者達なのだろう。だとしても、防戦一方であり、あんな奴の手先と化した奴等を救済するつもりは皆無。俺は両手を光らせる。
「じゃあその衝撃とやらを俺が浴びせてやる!! どのみちこんな状況だ。火の粉は払わねーとな!!」
そして俺は生徒にめがけ魔法を発動させる直前、タスラムが俺の手を強く握った。
「おいっ!!」
「…… そんな事させない…… 私には民衆を守る義務がある」
「放せ!!」
強く手を引く。だがその手はすぐさま今までタスラムから受けた事のない程の腕力で引き戻された。
「…… ましてやクラスメイトを使って…… しかもセルリルの性分を知っての実行行為」
「だから何だ!! 俺は今さら善人ぶるつもりは毛頭ない!!」
「だとしても!! 今回の件はあまりにも悪手!!」
そう彼が声を上げると同時に俺の前にローブを脱ぎ捨てタスラムが立つ。
その時、先日同様遠い記憶が脳裏を掠めていく。魔物と対峙した時もそうだが、タスラムが自身を探し森に出向いた昔話。あの時も、彼は俺の前に立ち魔物から守ろうとしていた姿…… 同年代だというのにどうしてそんな事が出来るのか当時はわからなかったあの時の記憶。
そんな回想が過る中、彼は足下に魔法陣をはり、光に包まれていた。
すると、下から徐々にバーガンディー色だった服が白へと変わっていく事刹那。纏っていた服は白となり、水晶にはその姿が大きく映し出される。するとタスラムは徐に眼鏡を外し胸ポケットにそれをしまうと、顔とターコイズブルーの瞳が露わとなった。その直後、一瞬周りが無音になった途端、渦を巻くような歓声と響めきが場内に巻き起こる。それと共に、攻撃をしていた生徒達の動きがパタリと止まり、その場に座り込む。明らかにそれなりの精神的衝撃を与える事が出来たようだ。
そんな中、猛烈な熱視線を浴びせられているタスラムは、破顔を振りまきつつ声を上げる。
「生徒諸君。今日のサプライズの為に、学園に潜入していたタスラム・ファスリナ・フォードです。みんなびっくりしたかい?」
その問いかけに黄色の声が反響し会場がその声一色になった。改めて王族の人気度に胸焼けすると共に、タスラム自身からの魅惑に似た何かに触発される異性の多さに唖然とする。
そんな彼に、駆け足で従者を引き連れたリンザルド公爵と学長がタスラムの前へと現れ二人が膝を着こうとした。が、その姿勢を彼はすぐさま制止させる。
「硬いこと抜きだよ。本当にお忍びだったから」
「だとしてもタスラム殿下」
「もう、公爵と私の仲でしょ? つい数ヶ月前にだって顔合わせたし。学長も楽にしてよ。本当にこれ公式ではないから」
その言葉に学長は苦笑いを浮かべつつ、深く頭を下げる。そんな光景を背後から見つめ溜息をつく。とりあえず、難は達した。
(ったく。本気で疲れた…… にしても……)
タスラムはこんな公に顔をだしても大丈夫なのであろうかと不意に思ってしまう。確か内密に調べたい事があると言う事で生徒に扮していた筈だ。それなりの情報は集まったのかもしれないが、今までの感じだとまだ身を伏せたかった様には思える。それなのに、こんな場所での身バレ行為は俺的には意味がわからない。
(だとしても俺には関係ないけどな)
しかし、胸の奥底でモヤモヤしたモノが渦巻き、無意識に表情が険しくなる。そんな中、話していたタスラムがこちらに歩いて来ると、俺の顔を見て、頭を傾げる。
「セルリル。何でそんな顔してるの? とりあえずこの場は収まったのに」
「…… 何で、公表したんだよ。まだ潜入続けたかったんじゃないのか?」
「まあね」
「だったらっ!!」
「セルリル!!」
彼が強い口調で俺の名前を呼び、思わず言葉が止まる。すると彼が両頬を膨らませた。そんな姿を見たことない為、暫し凝視すると彼が口を開く。
「根本的な事なんだけど、私にとってはセルリルも国民の一人なんだよ。王族としてこちらの事情云々に関わらず守るのは当たり前なんだからね!!」
そう言い先よりもまして頬を膨らませる。そんな彼を今度は顔をひきつりさせながら凝視した。
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