秘蔵図書館
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そんな事があっての翌日。競技大会も明後日という事で、学園は大会準備の為、休日となっていた。まあ、やる競技事態がかなりヘビーなので、出場者の体調を万全にしてもらうという事らしい。だが一番は王族が来賓する過程において、それ相応の準備が必要というのが本音なのだろう。
そんな中、俺は学園敷地内に別館として併設されている図書館に向かっていた。本当なら、明日の件もあるので、自室でゆっくりしたかったのだが、先日の件が脳裏から離れないのだ。それなら、一層の事、調べてみた方が早いと結論づけて今に至。
(ったく。ここに来て災難続きだっ)
腑に落ちない思いに駆られ、眉間に皺が寄る。そんな中、大きな洋館の様な外見の図書館に着くと、ズカズカと中へと入っていく。薄暗い建物の周りの壁や端には本がみっしり且つ整然と並べられている。中央には閲覧用の長机や、個別用の机など配置されており、生徒がここで勉強をする姿を度々目にするも、今日は誰一人いない。そんな中、端から一際明るい部屋があり、そこへと向かう。
すると、吹き抜けになった天井から光が差し込み、壁には青々した蔦がびっしりと絡まる空間が広がる。その部屋の端に古びた木製のカウンターに一人の白髭を貯えた白髪の老人が座っていた。と、俺に気づいた故老が『ホッホッ』と笑う。
「こころの所、学園が騒がしいようじゃが」
「知るかよっ、っていうか今日ちょっと調べたいんだけど」
「ホッホッ、勉強熱心じゃのう。だが、明日の事もある。程々にするんじゃよ」
そう言うと、ゆっくりと立ち上がる、壁に触れる。すると、スルスルと蔦が動き、目の前に重厚な扉が現れた。そしてその前に立ち自身の手を翳す。すると、扉が光ると同時に2、3メートルある長身の白い布を羽織った人物が現れた。その者は蔦の仮面をつけ、ウェーブがかった髪を靡かせながら、俺の方に屈みつつ、細く長い手を俺の手にあてがう事刹那。
『汝ノ魂ハ我ガ手ノ内ノ中、心シロ』
そう告げると、その者は扉に吸い込まれると、透けていき瞬く間に姿を消す。それと同時に、扉がゆっくりと開く。俺はその先へと足を進め、心許ない明かりが灯る、下へと続く螺旋階段を降りる事暫し。下層部へ着いた所で、一気に照明がつき、眩しさのあまり目を一瞬細める。そして、ゆっくり瞼を開けていくと、図書館の敷地ぐらいの広さのある空間が現れた。地下というのに、高い天井の上に白壁ドーム型になっており圧迫感はない。
そんな空間の中央に新緑の葉を携えた大木がある。ここは、国の重要な書物が保管されている場所。基本一般の人間はまず入館できない。だが、俺は両親の件もあるので、特別に許可がおりている背景がある。
ここに来るまでに、門番のじーさんに加え、歴代王族に使役されている妖精との二段構えのセキュリティーだ。まあ俺は、ここに入学して、それなりにあのじーさんとは仲も良好であり、妖精も一回俺の波動を知る事により、入館が容易だ。実際にはもっと、手続きを踏むらしい。
(まあ、そうじゃなきゃ、こんな所に居る意味ねーけどな)
そんな事を思いに駆られ思わずほくそ笑むと共に、中央に鎮座する大木に向かう。すると幹に先に現れた、蔦の仮面の人物の像が埋め込まれていた。
『汝ハ何ヲ求メル』
いきなりその像が声を掛けてきた。
「なあ。お前ってすげー長生きなんだよな」
『余ハ古キ者』
「じゃあ聞きたい。波動を感じずに魔法とか発動できるのか?」
『否』
「…… それなら、波動使わずに魔法みたいな事出来る手法は?」
『汝等ノ念イニヨリ具現サレルモノ』
「成る程。因みにそれに関する書物が見たい」
『然リ』
すると、スルスルと数本の枝が伸び壁へとすぐさま到達する。その直後、今まで白壁だった場所がいきなり透けると書物がミッシリと並べられている本棚が目に入った。そんな中の一冊を、蔦で引き抜く光景が数カ所で目視出来て暫し。俺の前に数冊の年期の入った皮のカバーがしてある分厚い本が蔦に絡まりながら、運ばれて来た。
「これで全部か?」
『然リ』
すると、幹の一部が凹凸し始めると共に、机と椅子が一体化したデスクセットが現れた。俺はそこに本を抱えながら向かい腰を下ろす。そして、書物に目を通す。しっとりした紙質。そしてあまり人の手に触れていないせいか、微かに当時のインクの香りが鼻を掠める。そんな中、本を貪るように通覧している時だ。出入口から足音が聞こえてきた。ここで人と出くわす事など今までなく非常にレアであり、俺のような例外を除き、だいたいの身分は把握出来る。
(ったく。面倒くせーー)
思わず舌打ちし、完全無視を決めつけ振り向きもしない中、空間へとその者が入ってきた。すると、その人物の足音が大きくなると共に、大木の像あたりで、音が止まる。
「いつも、済まないね。ファルガルア」
『アリガタキコトバ』
「にしても、先客いるみたいだね」
『然リ』
その会話で、思わず一瞬手が止まる。が、再度書物に目を通し始める事束の間、俺の横に立つ気配を感じた。しかし、俺はそに視点を合わせる事無く、活字を追う。そんな俺の頭上から、クスリと笑う声が聞こえた。
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