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夜明け

 夜が明けるまでは、どれだけ走り回っても疲れなかった。


 けれど、日が昇ってくるにつれて徐々に私の呼吸は荒くなっていった。




「はぁ、はぁ……」




 月の光を浴びていれば私の体力は無尽蔵らしい。ましてや、満月の夜なら尚の事。




 しかし。


 朝を迎えると、私が一歩一歩踏み出すその先では、周りの草木がどんどん枯れていった。




 自分でも実際には初めて目にするその光景に、絶句する。


 足元の枯れ落ちた花びらを1枚拾い、話しかける。私にその生命力を吸われた生命に。




「ごめんね、私のせいで……」




 今の私を彼が見たらどう思うのかな。そう考えると怖くなり、途端に彼に会いたくなくなった。


 とにかく町から離れたい。その一心で再び私は走った。




「はぁ、はぁはぁ……」




 しかし、走ることで、呼吸が荒くなればなるほど、加速度的に周りが灰になっていく。


 その様を見たくなくて、つい目を塞いでしまう。前も見ず、足元も見ず走れば躓くのは当たり前だった。




「うっ……」




 気付けば森の奥まで辿り着いていたらしい。


 冬でもないのに枯れ木に周りを囲まれ、枯れ草の上に倒れ込んでいた。




「ごめんなさい、ごめんなさい……」




 泣きながら、何に対してなのかわからない謝罪をずっと呟いていた。


 こんなにも夜が早くきてほしいと思ったことはなかった。


 なぜ私はあそこを出てしまったのだろう。


 なぜあの牢屋を破壊してしまったのだろう。




 外に出ていいはずがない。


 自分の愚かさが恥ずかしくなった。


 こんなのまさしく呪いではないか。




でも。




ーー君は呪われてなんかいない。




 彼の言葉が過ぎる。




「会いたい……」




 彼に会いたい。




 贅沢なのはわかってる。


 身の程知らずなのはわかってる。


 でも彼に会いたい。こんな私でも受け止めてくれる彼に。




 それだけが今の私の心を支えていた。




 そうして私は、ずっと彼のことを思いながら、しかし夜が更けるまで動けないもどかしさに苦しみながら、涙を流して夜を待った。

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