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いい歳とって恥をかくこと

作者: 天海波平

恥の多い人生を歩んできたと思える人を私はある意味で尊敬します。

 前に投稿したエッセイ「釣りと夕暮れ」で「いとおかし」と「いとあわれ」を混同していましたね。


・おかし…… 愛らしく可愛らしい、愛おしい

・あわれ…… しみじみとした情趣


どちらも感動しているという部分では重なるところもあるけど、「おかし」は楽しいとか明るく直感的な分野で使われるのに対して、「あわれ」はどこか物悲しさや寂しさを含んだ言葉でした。


 小中学で習った遠い記憶をほじくり出して、知ったかぶりしてエッセイを書いて「何だ? このおっさん意味分かっているのか?」と思われていると思うと……

 こう…… なんか……


 照れますね。


 いやぁ、普通は恥ずかしいとかの感情なのでしょうけど、これまでの普通に恥の多い人生を歩んできた事と、それと頭の血管プッツンして死にかかった事を考えると、こんな間違いや勘違いは生きるている実感や経験として楽しいですね。

 作品はしれっと直したつもりなんですが、まぁ生きてりゃこんな事普通にありますよ。


 いまの世の中は、人の失敗を重箱の隅を突くように非難する人もいますが、そのような人の気持ちも分からなくは無いです。

 普段の生活の中、仕事や学校でストレスが溜まり、自分が起こしたミスに自身がムシャクシャして、同じような失敗をした人に当たる気持ちも分からなくは無いというところはあります。


 だけどね、そんな事をしてたら歳をとって振り返ると、その行いを本当の意味で恥に感じる事があるものなんですよ。

 人としてね。

 それを恥と感じないなら、おそらく他者の気持ちを汲み取るということに鈍いんじゃ無いかなと思います。

 でも、私はそれを非難はしません。

 私もまた同じような事をしてきているからです。

 仕事上のミスを部下に怒りましたし、上司から怒られもしましたよ。

 会社の中だけで無く下請けに怒ったり、元請けに怒られたりもしました。

 それも理不尽な理由でね。

 それで起こる不満な気持ちを他の人にぶつけることもありました。

 社会人としてそれは普通にあるものだと思います。

 ですが、それに本当は慣れてはいけない。

 当たり前だと思うべきではない。

 人の気持ちに鈍いままじゃいけないとやはり思います。


 社会人というその言葉において、無職の私という存在は無価値で意味のないものでしょう。

 ですから今の私の言葉は社会人としては戯言です。

 社会の負け組であり弱者の部類に入る負け犬の遠吠えでしかありません。


 ですが、私は生ける人として理不尽な事柄に対してはキチンと向き合い「おかしいことは、おかしい」と言える事は出来ると思います。


 自分のこれまでを振り返ると、はたして大事と教えられた事が本当に大事なのかと思う事が増えました。


 大事と思えるもの、言い換えるならば価値観というものは人それぞれでしょう。

 ですが人間として生まれてきたならば、人間として持つべき共通の価値観というものがある筈です。

 

 その共通の人間としての価値観を持たない人も確かにいて、今は結構多くいるように感じます。

 持たないというより持てないと言った方が正確かもしれません。

 会社などの推奨する価値観に重きを置いて、人の持つべき価値観を蔑ろにしてしまっているように見受けられます。

 その結果として、法に触れるか触れないかのギリギリの所を渡り、そのストレスに潰されないために権威主義にすがりつき、自分にかかりそうな責任を他者になすりつける事が出来る人が優れた人だとされているように思えます。


 やむを得ない場合があるかもしれません、ですが人が本来持つべき価値観を手放す事はしないで欲しいですね。

 でなければどんなに社会的な地位や財産を持ったとしても、「人でなし」という(そし)りを受けることになりかねません。

 社会全体から恥知らずとさえ言われるでしょう。

 ですが残念なことに、今の時代は「ずる賢さ」も「賢さ」に含まれ、兎に角お金を手に入れれば、人を騙そうが何しようがそれが正義だというような恥知らずな風潮が強く感じられます。


 確かにね、お金は必要ですよ。

 ですが「経済」という言葉が「経世済民」からきているように、「世を治め民を救う」という概念がないお金のやり取りなんて自己満足で終わる自慰行為でしかないんです。

 会社とか組織の中でそんな考え方を持つ事は、利益に繋がらず害悪でしか無いという考えもわかりますよ。 

 けどね、社員を民となぞらえて考えてみて下さい。

 社員のことを全く考えず自分の地位と利益だけの考えが、最近で言えばビッグモーターの問題を引き起こしたといえるのではないでしょうか?


 今や会社の経営においても社員を大事にせず、労働“者”という人として扱うのではなく、労働“力”というエネルギー単位で扱っているようにさえ感じます。

 そこに人に対する敬意も尊厳も無いように思えます。

 実際、私が以前勤めていた会社の上司が「下請けは生かさず殺さずや!」と口走っていたことを耳にした事があります。

 それはお金を儲ける、会社に利潤をもたらす上ではある程度は正しいのでしょう。

 ですが、あまりに利己的で横暴に感じました。

 その上司は最終的に会社の内外からそっぽを向かれる形で退職しました。

 

 この上司の考えも彼が持つ特有の考えではなく、今の社会全体として蔓延している価値観の一つでしょう。

 私がその考えが過去三十年の日本経済の停滞を引き起こしている原因の一つにもつながっているのではないかと思います。

 建設業や医療関係など、あらゆる業種の下請けと言われる人たちは、元請けからしきりに「安くしろ、早くしろ、安全にしろ」と言われ、その責任さえ末端に押し付けられます。

 そんな仕事に誇りは持てず、きついばっかりで人は離れていきます。

 それでは経済が回るはずもありません。

 海外から労働者を雇うというのも、結局、日本の一部の企業の業績が上がるというだけで、日本社会全体から見たらいま以上に経済は停滞することになるでしょうね。

 

 話が逸れました。

 私が何を言いたいのかと言えば、恥をかき恥を知るということは、人が持つべき価値観を知る上でとても重要だということです。

 些細な失敗など恥でも何でもありません。

 その失敗を執拗に非難する事が恥なのです

 その事に気付かず、自分を優れた存在だと思い込んでいる人は「人でなし」になりかねません。

 

 恥と思える事柄に対して、それを恥だと思える自分を大事にして下さい。

 その感覚こそが本当に大事な持つべき価値観だと思います。

 

 「恥は若いうちにかけ」なんて言葉があるけど歳とってからでも良いんですよ人の迷惑にならなければ。

 笑って済ませられる恥なんて生きているときにかけるだけかいていたら良いんです。

 それが「自分らしさ」に繋がり、生きた証になるんですから。

 まぁ、進んでするもんじゃ無いですけどね。

 「恥なんてかきたくない!」て思う人もやっぱりいると思います。 

 でもね、それも受け止め方なんです。

 小さな間違いに対しても恥だと感じ、それを抱え込むと、自分の心の中にどんどん溜まっていき心に余裕の無い、萎縮した心の持ち主になるもんです。 

 心の豊かな人でも受け止め方を知らないと心の病気になってしまいます。 

 笑って受け流せるものは流していきましょうよ。

 それが出来ない方は夕陽や星空、神社などの木々や海岸など自分が気持ちいいと感じる場所でその鬱積した気分を溶かして消し去って下さい。

 

 でなければ歳をとって恥をかいたと思った時に身動きが取れなくなります。

 恥をかきたく無いからと人に当たるようになりさらに恥をかく事になりかねません。

 「俺に恥をかかせやがって!」なんて言葉は恥の上塗りになりますから…… まぁ、自分が言うかも知れませんが(笑)。


 ですけど、やはり私は「人でなし」にはなりたくはないですから、これからも「恥」を掻きつつもそれを笑い飛ばして生きていきたいものです。


恥を恥だと思える事が品性を持つ最初の条件なのでしょうかね?

そんな事さえ思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。コメント失礼します。 色々な場面でトカゲの尻尾切りって感じる瞬間は多々ありますね。 「立つ鳥、跡を濁さず」って感覚は、もはや言葉だけなのかもしれないと思うこともあります。 こ…
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