人類最後の日
その日は朝から穏やかだった。
太陽はいつもと変わらず人々にやさしい光をそそぎ、風はさわやかに吹いていた。
木々の葉は新緑に輝き、鳥の声はまるで讃美歌のように美しく鳴り響いていた。
だれもが笑顔であいさつし、地球の恵みと輝かしい人類のあゆみは永遠に続くと信じるに値する一日であった。
だが、その思いは白昼夢だったと全人類を絶望させることが起きた。
宇宙人が攻めてきたのだ
彼らは何の前触れもなく地球上に現れ、不気味な叫び声をあげながらレーザー銃を乱射した。それに撃たれた人々は愛する者の名を叫ぶ暇も、自らの人生を振り返る走馬燈を見ることもなく一瞬にして消滅し影すら残らなかった。
人々は涙を流し逃げまどい、ある者は金を、ある者は友や子を差し出して命乞いをしたが宇宙人は一瞥しただけで全く容赦しなかった。
世界中の警察や軍隊が彼らに挑んだが、どんな武器も効かず壊滅した。
腕自慢の猛者たちがならばとばかりに肉弾戦に持ち込もうとしたが、指一本触れることなくレーザー銃の灰と化した。
こうして人類の栄華は一夜にして過去のものとなったのだ・・・。
「いらっしゃいませ」
「今日は寒いね。一本熱いのつけてくれる。」
「へい毎度。それじゃ甚兵衛でどうでしょ。」
……
「ああ、うまい。芯からあったまるね。さて、今日のお勧めは何だい。」
「今日は氷見の寒ブリと豊予の寒サバを仕入れてきてますんで、いかがでしょ。」
「そうだな。ついでにいつものマグロ尽くしも頼むよ。あれを食うのが俺の生きがいだからな。」
「もちろんですよお客さん。毎度ごひいきにしてもらってありがとございやす。」
……
「それにしてもこの寿司ってやつは食うたびにうまさが違うんだよなあ。おい親父、おれは今までいろんなものを食ってきたが、この寿司ほどうまいものは全宇宙探したってないぜ。」
「へえ、そうですか。ありがとございやす。」
「地球に来た時にたまたま寿司を食わなかったらお前ら寿司職人も絶滅してたんだって思うと震えが止まんねえよ。俺たちの手じゃ寿司は握れねえからな。」
そう言う男の手はレーザー銃そのものであり、銃口に寿司をつめるとうまそうに目を細めながら口に運んだ。