5.「炎帝降臨」
そこは、地獄のような暑さだった。
レッドフェザー誰も訪れない地に我王一行は辿り着いたのだ。
水は、蒸発しているのか川さえ流れていなかった。
こんな国に人がいるとは、到底思えない。ましてや、雪国、ホワイトカントリーには白い虎がいた。獅志丸は、この世界の国々と自分の世界の国々が似ても似つかないことを、至極不思議に思っていた。
車内は、大変暑かったため、インフィニティキューブは、チタン製の篭手になっていた。
そのため、我王一行は、歩いていた。
「いや、にしても暑くね?あれ、人いるじゃんか。」
我王が、不満を溢す。誰か見つけたようだ。
「あの、そこのお姉さん。炎帝って何処にいんの?」
「え?あたしに聞いてるの?知らないわ。誰よそれ。そんなことより、私と遊ばない?」
「遊ぶ?からかってるのか?かっるいお姉さんだこと、それにな、遊ぶって言ったてな、ここには、遊び道具も何もない、炎天下だぞ。俺の好きな遊戯チェスとか将棋もって、あ!!あるじゃんか!俺の手に!」
「何を言ってるの?あなた頭おっかしいの?」
女性がどういった意味で遊びを使ったかはわからないが、おそらく不純な意味ではないだろう。我王は篭手に視線を向けた。そして我王が言う。
「『将棋』。」
途端に篭手が将棋盤と駒に変わる。我王が話し始める。
「実はよ、俺はチェスが苦手でさ、ほら、チェスって相手の駒を取ったら、使えなくなっちまう。つまり、戦死と同じだろ?だけどよ、将棋ならどうだ?取った駒を仲間にできる。俺は仲間を作り、世界を統治してえんだ。はっはっはっ。」
「あなた何者?凄いわねどんな魔法なの。これ、ルールは?」
「ただの旅人さ。魔法使いとでも、言っとくか。はっはっはっ。」
そう言い放つと、我王が、ルールを手短に説明した。
「そういうことね、では、始めるわね。私はこうするわ。」
彼女は、歩を動かした。が、我王は何もしない。一体何を考えているのだろうか。待てど暮らせど何もしない。それから、5分程経ったが、我王は変わらず何もしない…。
「何してるんですか我王様。あなた様の番ですよ。」
「そうじゃ、お主の番じゃぞ、何をしておる。」
獅志丸は黙ったまま、我王の様子を見て、もしかすると、将棋好きはハッタリだったのではないか。と思ったが、同時に、熟考しているのかもしれないと踏んでいた。
また、典賢と白帝が一声掛けるが、我王は指一本動かさない。その時、途端に我王は口を開いた。
「はっはっはっ!ここで、駒を動かしたらどうなる?戦うことになる。違うか?俺は戦わずして勝つ。このゲームは俺の負けでいい。遊戯に負け、勝負に勝つ。さあ、どうする?」
「へぇ、面白いわね。うふふふふふふふふ。うふふふふふ。うふふふふふ。うふふふふふ。うふふふふふ。」
女性の様子がおかしい。一体全体どうしたのだろうか。
「あなた、旅人じゃないでしょ。それに、私だったらこうするわ。ふっふっふっ。『獣化』。」
その瞬間だった。女性の背中から翼が生えたかと思うと、真っ赤な炎を纏う鳥へと変化したのだ。その姿は、不死鳥フェニックスにも似ていた。
「はっはっはっ!驚いたな。その紅の翼に紅の容姿、炎帝か。俺はこうするぜ!『チタン製鎧』。」
我王は、将棋盤を手に取ると、鎧へと変化したインフィニティキューブを装着した。チタン製のため、やはり重いのだろうか。少しばかり、蹌踉めいていた。
「そのとおりよ。何その金の鎧。所詮、その輝きだけの鎧じゃ、何の役にも立たないわよ。魔法使いさん。でも、鎧よね。ちょっと待って、あなた本当に魔法使い?本当の事を言いなさいよ。何者?」
「はっはっはっ。俺は、百獣の王。我王獅志丸!!世界を統治するものだ!」
「へぇ、百獣の王ねぇ、そうは見えないけど、ふっふっふっ。冗談キツイわよ。これでどうかしら。」
炎帝が、翼を仰いだ。その一刹那。我王が、灼熱の炎に包まれた。爆炎だった。誰もが、焼死した。と、考えた。この時。典賢が名案を思いつく。
「白帝殿、あなたの力で、その氷の力で、なんとかできないのですか。」
典賢が言い、白帝が答える。
「まぁ、見ておれ、わしはなにもせんでのう。争いは苦手じゃ。」
火柱から、一筋の金色の光沢が見えた。
「はっはっはっ!」
それは我王の声だった。幻聴だろうか。彼は死んだはずだというのに。炎帝が思わず言葉を漏らす。
「え、どういうこと?死んだはずよね。」
「知ってるか。炎帝さんよ。チタンの耐熱性は、1660度だ!微塵も効かねえ!もう一度聞いておく。さぁ、どうする?」
「嘘でしょ。信じられない。私の炎で焼死しないなんて、ありえないわ!……………戦わずして勝つねぇ、面白いわね。私は、その魔法の鎧が気に入ったわ。あなた、世界を統治したいのよね。私と同盟組まない?」
「はっはっはっ!俺の勝ちだな。文明の利器に、叶うわけがない。勿論だ。でだ、俺は、蒼帝とも話がしたいんだが、イーストキャピタルまでの道のりが知りたいんだが。」
「ああ、そこなら雲の上にあるわ私は飛べるけど、猫あぁ、ごめんなさい。ネコ科は飛べないわよね。どうしたものかしら。」
我王が思いつく。
「来た来た来た!!ここで、F−22だろ!」
「あの、我王様。先程見ましたよね。危ないですって。それに、誰も運転できないですよ。」
「はっはっはっ。任せとけ。俺が運転する。『F−22』。」
我王の装着していた鎧が、戦闘機F−22へと変化した。皆が驚いた。
「ほお、長いこと生きとるが、こんなもん見たことないわい。凄いのう。」
「本当に大丈夫なんですよね。炎帝殿、獅志丸様をお運びして頂けないですか?」
と、典賢。
「構わないわよ、この子ね。一瞬だから。怖がらなくていいわよ。」
炎帝が、獅子丸を見て、微笑んだ。気に入っているようだ。
「あ、はい。わかりました。炎帝さんですか?」
獅子丸は、炎帝を下から上まで視線を動かすと、不思議そうに見ていた。
「そうよ。炎帝でいいわ。」
「はっはっはっ。よし!行くぞ!」
我王一行は、かの炎帝を味方につけ、蒼帝のいる、イーストキャピタルへと向かった。我王の運転が下手だったのかは、定かではないが、果たして、どうなる。行末、吉と出るか。凶と出るか。
その運命神のみぞ知る・・・。
レッドフェザーの国の色は赤です。そのため、炎帝は女性にしました。以上。
次回まで、どうぞよしなに。