4.「白帝見参」
僕ら三人は、ラブノウズを出発し、ホワイトカントリーへと、向かった。その間は、雪が激しく降る地帯で、今にも凍ってしまいそうな程に寒かったのを覚えている。僕ら三人は、無事、ホワイトカントリーに着いたのだったが、なぜだ。なぜだ。なぜだ。なぜなのだろう。僕は今氷で覆われて動けない。体の全身から冷たさを感じる。全く動けないのだ。これは、一体………………………………。
〜数時間程前の事〜
「なあ、寒くね。典賢。」
「寒すぎますね、凍えそうです。我王様。
獅志丸様、あなたの世界で温かいものはないんですか?」
「えっと、カイロとか?」
「いや、どんな温かい貝なんだよ。ってくだらねえ。それにな、それは作れないだろ。お、そうだ。調べてみるか。『スマホ』。」
獅志丸はカイロは貝ではないのだと説明したかったが、我王はスマホに夢中である。チラッと見てみると、関係のないものを調べている………。僕はそれを聞きたかったが、聞く暇さえなかった。
「お、いいのあった。これ、格好いいな。F−22っていうのか。これ作ろうぜ。」
「ちょっと待ってください。一旦見せてください。」
我王のスマホには、戦闘機が映っていたが、大破した写真も載っていた。
「あぁ、これは止めておきましょう。獅子丸様。他に、乗り物ってありますか。」
「車とか?」
「では、それで、『車』。」
「え?F-22じゃないのか。うおっと。危ねえな!」
我王は咄嗟に、スマホを投げた。
すると、我王の持っていた。スマホが車へと瞬時に変化した。
「これ、凄くないですか!」
と、典賢。
「なんか、思ってたのと違うけど、て、これ飛べねえじゃん。なんだかなぁ。まぁ、これでいいか。なんとかなるだろ。」
「で、どうやって動かすんだ?手で押すのか?」
「あはは、違うよ。中に乗って運転するんだよ。我王は運転できないよね。僕が運転するよ。免許は持ってるし。」
三人は中へと乗り込むと、その居心地の良さ、快適さ
、獅子丸から聞いた、便利さに驚き、獅子丸の世界に興味を抱いていた。喜んでいる二人を背に、獅志丸は車を走らせた。1時間程だろうか、その時だった。
「止まるのじゃ!!」
その嗄れた声と同時に、車がスリップした。
「おいおいおい!危ねえって。って、なんだぁ?どうも様子がおかしいな。みんな準備いいか?行くぞ!『スマホ』!」
我王が、車を突然スマホに変えたことにより、皆尻もちをついたが、しりもちをついた原因はその我王の突発的な行動だけではなかった。下を見てみると、地面が凍っていたのだ。
「お主ら、何者じゃ。」
質問をしたその声の主は、老人ではなく、純白で真っ白な白い虎だったのだ。
我王が答える。
「我は王なり、百獣の王なり。我王獅志丸だ!
はっ、ちょっと待てよ。白に黒の縦模様…その姿白帝か!」
「いや、知らん。誰じゃ。誰なんじゃ。聞いたことないわい。どういうことじゃ。なぜ二人おる。おっと、これまた、摩訶不思議な見とうことのない箱を持っておるの。わしは如何にも白帝じゃが、こやつが疑わしいのう。常人はここまで来れんはずなんじゃが、まあええ、こうしておくかの。」
白帝は、獅子丸に息を吹きかけた。
その白い息に目を奪われていると、獅志丸の体は凍っていた。
「はっ!え、え、え、冗談だよな。獅志丸?獅志丸?おいって!聞こえるか!なあ!返事しろよ!獅志丸!どういうことだよ!」
「…。」
獅志丸は喋れない。
「くっ、白帝ッッッッッッッッッッ!!」
獅志丸は怒りに任せ、スマホを白帝に向けた。
「『銃』。」
「ま、待ってくだs」
典賢が、止めにかかったが、我王の耳には届かない。
ドンっと、音が鳴ったと同時に、銃の弾が放たれる。
その時だった。弾が、空中で停止したかと思えば、白帝の前に厚い厚い氷の壁ができていた。おそらく、白帝の力なのだろうか………。
「おっほっほっ、これで、ええかのう。わしは争いは苦手でのう。わしは齢900歳じゃ。あまり、動きとうないの。もし、弟を助け、この壁を壊せたなら、そうじゃな、お主は王であったな。同盟を組んでも構わんぞ。まぁ、ありえんがのう。おっほっほっ。」
「あーなるほど、長生きでいらっしゃるんですね。そうきましたか。我王様、如何なさいます?」
「それに、弟って勘違いしてますよ。」
と、典賢が小声で言う。白帝には聞こえてないのか。白帝はこちらの容子を伺っている···我王は、白帝の勘違いにニヤけていた。
典賢は何か、何か策はないかと考えていたが、思いつかない…。こういった時に限って人は思いつかないものなのだろうか。
「いやぁ、典賢さあ、長生きって、そこじゃないだろ。長すぎだろ。樹齢かよ。それにだな。獅子丸とこの眼の前の壁どうするよ!」
二人は考え込んだが、名案が出てこない。すると、我王が何か閃いた。
「あ、そうだ!典賢、聞いて驚くなよ。はっはっはっ!実はさっきスマホでちょーっと調べておいたんだが、これでいくか。いや、これしかねえ!『チタン製篭手』。」
銃が、チタンで出来た篭手に変形する。
「あ、ちょっと待て、待て待て待て、何だよこれ鉄より重てぇ。腕上げるので精一杯だ。けどよ、俺ならいける!俺は自分を信じる!行くぞ!」
我王はその篭手を、すぐさま右手にはめると、壁ではなく、凍った獅子丸へと向けて、拳を構え、思い切り殴った。
その拍子に、獅志丸を包んでいた氷が割れたのだ。
「な、なんと、やりおったのう。お主何をしおった。」
先程まで、退屈そうにしていた白帝が目を見開き驚いている。
「はぁっはぁっ、僕生きてる………よね。」
獅志丸は、氷から開放され、息を吹き返した。
また、我王は日夜、鍛錬に励んでいた。その内容は、腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回。これを毎日だ。1日も欠かさなかった。我王の凄まじい筋力、それに加え、地球上で最硬度の物質チタンの篭手との相乗効果により、氷を打ち砕いた。我王は白帝を見据えると、拳を構えて、厚い氷の壁目掛けて、拳を握りしめ、全力で殴った。
だが、そう簡単には割れない。諦めの悪い我王は殴り続けた。
「1発、2発、3発!俺は、俺はっ!諦めねえ。絶対に諦めねえ!!」
我王は、氷の壁を殴り続けた。それから、どのくらい経っただろうか。いや、経っていないのだろうか。眼前にあった、厚い氷の壁は、粉々に破壊されていた。勿論我王によって。
「おっほっほっ。やりおったのう。合格じゃ、どれ、お主の国へ、行くとするかの。」
白帝は、欠伸をしながら、姿を人間へと変えた。
「えっ?虎じゃないのか!」
その場に居た、皆が驚いた。
「お主はできんのかの。『獣化』じゃわい。獣になったりせんのかの?」
「………俺はできねえよ。なんでかわかんねえけど、まあ、これでいいよな。はっはっはっ。まさか、同盟組めるとは思わなかったが、一件落着よ。っし帰るとするか。『車』。」
典賢が、発言した。
「僕が運転します。見様見真似ですが、車の運転は大方覚えました。向かう先は、ラブノウズではなく、レッドフェザーです!」
「ほお、わしも行くのかの。構わんがの。」
「よっしゃ!行くか!待ってろよ炎帝!!」
典賢は、車を走らせ、我王一行はレッドフェザーの位置する、南へと向かったのだった。
次回まで、どうぞよしなに!