11.「キメラ」
その水色の眼光でキメラは、冥帝、白と黒を睨みつける。険しい表情だった。話に応じないとわかりきっていたため、武力を行使するしかないと判断したのだ。髪色は違えど、同じ顔に同じ名前、そして、彼は既に世界を統治していた………。
どうやったかのか。誰もが疑問に思っだろう。我王でさえ、未知数なキメラの力には恐れるものがあったが、同時に、興味もわいていた。
彼がいれば、キメラがいれば、最強の助っ人キメラがいれば、世界を統治できるのだと信じていた。
だが、キメラの過去は知らない。同じ名前の自分でも、現在しかわからないのだ。キメラが、輝かしい過去を持っていたとしても、もしキメラがつらい過去を背負っていたとしても、我王にわかるのはキメラが溢す言葉の一つ一つの片鱗からでしか、彼を知れない。
そういえば…キメラはこの世界にやってきた時、たったの一人だった。それは獅志丸と同じ、唯一違うのは、苗字と名前とは別に名があること。
キメラ
何を意味している…?
(俺は体内に異なる遺伝子情報を持つ。)
その言葉が、頭の中で、反芻した。
俺は、キメラと同じなのか?俺は、キメラで、獅志丸が俺で、3人とも同じ名前………
だとしたら、俺も、世界を統治できるのか?
冥帝に勝てるのか?勝てないよな…。キメラなら勝てるのか。俺は、勝てないのかよ。なんでだよ。俺は、諦めなかったのにな。意味なかったのかよ。
キメラがもし、冥帝を撃破したら………
俺は…俺は………
………必要ないのか。
「我王よ。何をしている。下を向くな。冥帝を見ろ。」
「教えてくれキメラ、なぜ下を向かないほうがいいんだ?考えなければ答えは出ないだろ?」
「なあ、我王。そんなに考えたいか。なら、一生考えてろ。
夢はどうした。希望はどうした。自信はどうした。我王、目標はなんだ。言ってみろ。」
「俺は、世界を統治したい!」
「世界を統治してどうする。何が目的だ。言ってみろ。」
「俺は、俺は、世界を統治して、この世界に平和をもたらしてえんだ。争いは何も生まない。怒りに任せ、拳を振るっても、その怒りは止まない。殴られたやつは痛えし、殴ったほうも痛え。戦は死人を生む。死人は生き返らない。俺は、絶対に殺生はしない。
………ちょっと待て、キメラはするのか。」
「それでいい。その目的必ず果たせ。俺は…」
「殺したいだなんて、微塵も考えたことはない!」
キメラの頬には一筋の滴が···
「我王よ。俺は先程邪魔をするなと言ったな。まだ、戦えるか?
実力を知りたくてな。」
「もちろんだ!共闘か!いけるぞ!戦える。」
「我王よ。他者を傷つけずに勝つ方法はあるか?」
「ない…かもな。致し方なくないか?」
「俺ならば、こうするな。我王!水上へ迎え!今すぐにだ。今なら間に合う!」
何するつもりだ。まさか、自爆なんてしないよな…。
我王は、必死の思いで泳ぎ、空気を吸える位置まで、泳ぎきった。そこから、冥帝も、キメラも目視できなかった。
「おっと!!危ねえ!何だよこれ···。 」
シーロードもろとも、海が一瞬にして、凍ったのだ。
我王は間一髪、海上へと飛び、氷の大地へと着地した。
「これは、白帝の力だよな、白帝はここにはいないんだよな。誰がやったんだ…?」
「ファイアブレス」
我王から、数歩離れた、場所から水しぶきが勢いよく飛び、氷がこれまた、一瞬にして溶けてしまった。
その溶けた穴から人影が出てきた。我王はその目ではっきりと、見ていた。その人影は白髪だったのだ………。
次回まで、どうぞよしなに!